爽やかポンプから荘厳シンフォへ生まれ変わったオランダ産シンフォバンドTIMELOCK。

c0072376_01535526.jpgTIMELOCK 「Buildings」'08

なんだかんだでMARATHONやFOR ABSENT FRIENDSを聞き直していて止まらなくなり、オランダのポンプバンドを片っ端から引っ張り出しておりました(w

一般的にはマイナーながら実にポップでキャッチーなメロディを奏でる、上記2バンドよりさらにメロディアスでクリアーな爽快サウンドが個人的に大変気に入っていたオランダ産の5人組ポンプバンド(同名別バンドが存在するのでご注意を)をご紹介。

92年に『Louise Brooks』でSIミュージックレーベルからアルバムデビュー(カタログナンバーは20)を飾った当時、TIMELOCKもMARATHONと同じくカナダのプログレ・ポップバンドSAGAからインスパイアされたポンプバンドの一つでしかありませんでした。

ただ、デビュー当初からその他の同時期にデビューした凡百のポンプバンドより数段上のレベルのプロフェッショナルなサウンドを奏でていました。

そう思わせた一番の要因は、リーダーの Julian Driessen(Key)と相棒の Rinus Hollenberg(G、Key、Drum programming、Vo)からなる元YWIS組が作曲する楽曲が、ややもするとアマチュア臭い楽曲やサウンドが多いポンプ勢の中で群を抜いてレベルが高く、そのスタイリッシュでモダンなサウンドはポンプうんぬん抜きにして非常にメロディアスでキャッチーなロックサウンドだったのは無論ですが、何より素晴らしかったのはフロントマンの Ruud Stokerのクリアーなどこまでもよく伸びるハイトーン・ヴォーカルによるポップでキャッチーな歌メロによる所が大きかったのは間違いありません。

カンダのプログHMバンドTILESのヴォーカル Paul Rarickによく似た声質で、80年代中期USA産プログ・ハード・バンドで多く聴かれた甘い声質でハイトーンも楽々カバーするタイプなその歌声は絶品で、抜群の歌唱力は他のポンプ勢に比べ強力なアドバンテージでありました(*´ω` *)

またバンドサウンドもSAGAの完全なるフォロワー・サウンドではなく、ギタリストの Rinus Hollenbergのプレイには明らかにRUSHの Alex Lifsonの影響が強く伺え、他にも Steve Hackettや Robert Fripp等の影響が断片的に垣間見えるプレイが実に興味深く、リーダーの Julian Driessenのキーボード・プレイはバンドがギター主導で楽曲を展開させていく為か終始控え目なものの、その実しっかりと抜けのいい爽快感抜群なバンドサウンドを盛り立てる演奏で全体を引き締める、実に手堅い創りでした。

続く2nd『The Dawn』を94年に同じくSIミュージックレーベル(カタログナンバーは65)からリリースするが、ここで打ち込みドラムからドラムスに Rob Louwersを迎え入れてリズム隊を固め、よりポンプ的な壮大なサウンドのアルバムを披露する。

デビュー作の造り込まれた感が薄れ、よりロック的なナチュラルな感触の奥行きのあるサウンドのアルバムであったが、全体的にデビュー作より楽曲のキレが鈍って聞こえるのが個人的には少々いただけなかったですね……

まぁ、ポンプ的なアプローチをすればどうしたって展開の複雑な長尺曲が多くなるし、楽曲構成的にもインストパートが増えるので、爽快感抜群なデビュー作のようなコンパクトサウンドに仕上がらなかったのは当然ですが('~')

ただ、激しくスリリングなキーボードとギターのソロパートやバトル、そして高速ユニゾンプレイがフィーチャーされたり、テクニカルなインタープレイだったり複雑に展開する緻密な楽曲構成の聞き所等が盛り沢山なので、1stは普通のハードポップ過ぎると思っていたグレ好きな諸兄には、やっとポンプらしいサウンドになったと喜ばれた方も多かったかもしれない(汗

Ruud Stokerのクリアーなヴォーカルやバンドのポップなコーラスは変わらずキャッチーで、Rinus Hollenbergのメランコリックなメロディを奏でるギター・プレイと繊細なトーンも相変わらず素晴らしく、楽曲構成が複雑になった事でデビュー時のSAGA風味よりRUSH風味の方が強まったのが2nd、と個人的には思っております。

その8年後、長いインターバルの後に3rdアルバム『Circle of Deception 』'02 をリリースする。

既にSIミュージックもポンプ勢もシーンから姿を消し、プログレ系の世界では次のムーブメントであるシンフォサウンドが盛り上がりを見せつつありました。

この空白期間の影響で、ドラマーの Rob Louwersの名は既に無く、またバンド創設よりサウンドのイニシアチブを握っていたギタリスト Rinus Hollenbergの姿もそこにはありませんでした(つд`)

新たに Martin Hendriksなるギタリストが迎えられ、よりヘヴィーなギターサウンドを前面に押し出すつつ、シンフォサウンドに接近したアルバムをリリースした訳だが、Rinus Hollenbergの抜けた穴は予想以上に大きく、せっかく待望の新譜を届けてくれたにも関わらず、その楽曲のアレンジや構成レベルは今まで一番低く、歌メロもイマイチなどうにも散漫な印象の退屈なアルバムとなってしまう…orz

今までどちらかと言えばギターを盛り立てる全体的に引き立て役なプレイ中心だった Julian Driessenが初めて前面に出て華麗なキーボードプレイをこれでもかと派手に(今回はギターが裏方的なバッキングプレイが主体)聴かせ頑張っているものの、どうにもピリっとしないのがまた…

シンフォサウンドへ接近した証か、キーボード主導の12分オーバーの五部構成からなる組曲を収録しているが、唯一その楽曲だけは以前のようなキレとメロディに輝きがあり、前半の中途半端にヘヴィでシンセシンセしたマッタリ気の抜けた楽曲は一体なんだったのかと首をひねってしまいます('A`)

またお手本であったSAGA風味もRUSH風味もそのサウンドから既に薫る事はなく、何者でもないTIMELOCKサウンドなるオリジナリティというものが確立された事だけは朗報と言えましょう。

ソレが面白く興味を惹かれるサウンドかどうかは、全くの別問題ですけど…

そして再び6年の後、現在までの所最新作である4thアルバム『Buildings』'08 をリリース。

再びの空白期間の影響で、Martin Hendriksの姿は無く、新たなギタリストとして Ronald Demiltが迎えられ、前作はセッションドラマーを起用してアルバムが製作されたが、本作では再びドラマー Mike Boekhoutをメンバーに迎えて製作されている。

サウンドの方は完全にシンフォサウンドへ移行していて、前作の中途半端なヘヴィさは姿を消し、Julian Driessenのキーボード主導で楽曲がテクニカルに展開する形態がメインとなっており、そのウェット感ある壮大なサウンドは完全に初期とは違うバンドサウンドとして確立されているのが分かる。

また前作ではイマイチこなれていなかったギターサウンドも本作ではバッキングをメインにしつつしっかりとエモーショナルで印象的なプレイを聴かせてくれ、前作のダメダメな出来が嘘のようなスタイリッシュでモダンなサウンドが構築され、前作で落胆したファンを再び裏切る事のない出来になっているのが何より嬉しいですね(*´ω` *)

ただ、サウンド全体のスケール感が増した為なのかマッタリ感がかなり強い穏やかなサウンドがメインになってしまい、初期サウンドで聴けた好ましいサウンドのキレやコンパクトさや、Ruud Stokerは変わらず良い声を聴かせくれているのですが、ポップでキャッチーな歌メロという要素は著しく影を潜めてしまった為、個人的には余り好意的に聴けないアルバムなのが悲しい……

海外では、TILES、ENCHANT、USA産プログロックのファンにお薦め、と紹介されているが、それは初期のサウンドを指してで今現在の彼等のサウンドの方向性とはかなり外れたバンド名と言えるだろう。

もし彼等のサウンドに興味を持たれた方がいるなら、まずは初期の2枚のアルバムを聞いてみて気に入ったなら他のアルバムも聞いてみるといいのではないでしょうか?

もう10年近く何の音沙汰もないけど、一応バンドは存続している模様なので、そろそろ新譜を届けて欲しいものであります…


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by malilion | 2018-03-03 01:47 | 音楽 | Trackback
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