バンド名が誤解を与えた悲劇(?)のバンド。メロディアス・ロックバンドFOR ABSENT FRIENDS。

c0072376_16051912.jpgFOR ABSENT FRIENDS 「Square One」'06

MARATHONを聴いていて思い出したので同郷オランダの5人組ポップロック・バンドFOR ABSENT FRIENDSの最終作をご紹介。

GENESISの『Nursery Cryme』'71 収録のアコースティックバラードからバンド名を拝借しているが、彼等の奏でるサウンドはポンプバンドお約束な典型的コテコテGENESISフォロワーではないのが面白い点と言えましょう。

無論、MARILLIONのファンクラブの集いでカヴァーバンドとして彼等は演奏をしていた訳だから、MARILLIONが絶大な影響を受けたGENESISの影響も当然の如く受けているからこそのバンド名なんでしょうけどね(汗

1987年にオランダのロッテルダムで結成され、88年に自主盤シングル『Let Me In』でデビュー、続く3曲入り自主EP『Illusions』を90年にリリースし、次いで91年にポンプ総本山レーベルSIミュージックから『Both Worlds』(カタログナンバーは10番)でアルバムデビューを果たす。

94年リリースの2ndアルバム『Running In Circles』は、なんと日本盤もリリース(!)されるという快挙を成し遂げているが、その後はバンドの音楽性の変化の為か日本盤は一切リリースされる事はなかった…(つд`)

彼等はこれまでに6枚のスタジオアルバムと1枚の二枚組BEST、及び5枚のシングルをリリースしている。

音楽性の変化もあるし、そもそも Edwin Roes(G)も Peter de Jong(Key)も派手でテクニカルなプレイに走る訳ではない、プログレ&ポンプ臭の薄い強烈な個性のない木訥なサウンドなのが災いしてか、ここ日本や欧米のポンプ&シンフォ系のファンには今一つの人気(そもそもポンプとさえ認められてない節がある)のバンドでしたが、唯一例外はフランスで、なんと本国以上に彼等の人気が高かった(ANGEに迫る人気だったとか…マジ!?)事が知られております。

カテゴライズとしてポンプとして語られる彼等だが、Alex Toonenの線は細いものの灰汁の無い良く伸びる歌声がポンプGENESISフォロワーお約束のガブリエル臭いヴォーカルでない点からも窺える、むしろPENDRAGONやJADIS、そしてMARILLION等のバンドが持つ最もメロディアスな要素を集めた、コンパクトでストレートなメインストリーム寄りのサウンドを奏でるポップロック・バンドと言った方が正しくもあり、実際ポンプ色の強いサウンドはHR的要素も加味した2nd『Running In Circles』'94までで、95年リリースの半LIVE半アコースティック曲構成の『FAF Out Of HAL』から一気に音楽性がポピュラー・ミュージックへと傾倒していった、ポンプサウンドは実は活動初期のみなのに以降もバンド名故にポンプバンドとして語られる、というチグハグさが今から考えると彼等の人気を阻害していた一因かもしれません…

HR要素とポンプ要素のより洗練されたブレンドを『Running In Circles』で果たしたバンドは、以降ますますポップでメロディアスさに磨きをかけ、よりコンパクトでモダンなサウンドへ突き進む訳だが、初期に彼等がカヴァーでプレイしてきたIQ、MARILLION、ASIA、SAGAといったバンドの持つメロディアスな要素を以降もちゃんと受け継いでいったのと同様にプログレ的要素も捨て去らなければ、きっとポンプファンベースでも長らく支持されたんでしょうにねぇ…orz

続く96年リリース『Tintinnabulation』でも Edwin Roesが刻むダイナミックでエモーショナルなエッジあるギター、Alex Toonenが歌い上げるナイーヴなヴォーカル、Peter de Jongの奏でるコンパクトで無駄ない華麗なキーボード、そして力強くキャッチーなメロディとベーシスト Rene Bacchusがバッキングヴォーカルでカバーするポップなコーラスに焦点を当て、ますますバンドはアンサンブルの洗練度を上げていく。

そのサウンドは大仰な展開等のポンプ要素は僅かに残るのみで、全ての楽曲は非常にメロディアスな上にブライトで殆どポップと言っても差し支えないモダンポップロック作(リリースもSIレーベルからでなくなる…)であった。

またアルバムタイトルが示す通り、ポップでメロディアスな楽曲だけでなく、仄かにフュージョンテイストを漂わすサウンドだったり、ノスタルジックでメランコリックなサウンド等々、実にバラエティに富んだ穏やかな楽曲が詰め込まれたバランス良い一枚に仕上がっていて、バンドの作曲能力の高まりの程が如実に示されていると言えよう。

ただ、ポップバンドとしてそのバランスの取れた上品なサウンドを聴くと、その他大勢のポップバンドのサウンドと比べてフックも抑揚もイマイチな、刺激が乏しく扇動力や即効性の低いサウンドだったというのは否めないけれど……

バンド自体がそのウィークポイントを理解していたかは定かではないが、続く5thアルバムでサウンドの変化はさらに加速する。

このまま普通のポップバンドになるかと思われた矢先、98年に Alex Toonenがバンドを脱退し、代わって Hans van Lintなる新フロントマンを迎え、新生FOR ABSENT FRIENDS第一弾作『The Big Room』を01年にリリースする。

幾分か線の細い歌声なものの甘いメロディ主体のバンドサウンドにフィットしていた Alex Toonenの穏やかな歌声を捨てて新たに獲得しただけあって Hans van Lintの歌声は前任者と似た声質ながらもよりフレッシュでパワフル、そしてよりディープで感傷的な歌声を披露し、フロントマンの交代劇を心配するファンを安堵させた。

この最大の転機を“攻め時”と考えたのか、バランス重視だったサウンドがよりパワフルなサウンドへ移行し、また Hans van Lintの振り幅の広い表現力(ある意味ガブリエル的)ある歌唱スキルと力強くクリアーな歌声を活かす為か、ニューウェーブにも片足突っ込んだような90年代初期ブリティッシュ・テイストがそこかしこから強烈に発散されるモダン・ロックサウンドへスタイリッシュに様変わりするとは当時随分驚かされたものです(*´ω` *)

バンドロゴがモダンなデザインに変わった事を見ても明らかなように、事ここに至って初期から持っていたポンプ的な大仰さや音楽要素は完全に姿を消し、コンパクトでモダンなロックサウンドを披露する完全に別バンドになってしまった……

センチメンタルでメロゥなサウンドはそのままに、よりハードなロック寄りにサウンドが偏った為 Edwin Roes(G)のギターが活躍する場面が一気に増え、その分 Peter de Jong(Key)の表現出来る領域が減ったのは当然の帰結であったが、メロディアスでリリカルなソロパートや印象的なイントロ、効果的なバッキングに楽曲のスケールを増すSE的なサウンド等々でアルバム全体に華を添えるプレイをみせ、以前にも増して細やかな活躍をする Peter de Jongの演奏からは、次に起こる転機を誰もこの時は予想し得なかっただろう。

音楽の方向性故か、バンドサウンドに対する理想像のズレ故か、長らくバンドサウンドに華を添えてきたオリジナルメンバー Peter de Jongが02年にバンドを脱退し、代わって Ron Mozerなる新キーボーディストを迎え最終作『Square One』は製作され、06年にリリースされた。

さて、本作の内容だが、バンドサウンドを支えてきた両輪の片方を失った影響は思いの外に大きかったのか、バンド内の発言力のバランスが変化した為か、ハードでノイジーなギター中心で展開していくシンプルでヘヴィな楽曲というパターンが殆どで、これまでのようにキーボーディストの活躍の場は与えられず殆どバッキング的な扱いに終始している。

むしろ楽曲がさらにシンプルでストレートになった為か、流暢なギター・プレイと相まってリズム隊の活躍の方が目立っているくらいで、確かにこの方向性へ進んでいたら Peter de Jongも遠からず鍵盤をブン投げて脱退していただろうと納得するサウンドだ(汗

ただ Ron Mozerが持ち込んだキーボードプレイのスタイルが、所謂ポンプらしい柔和なキーボードサウンドによるキラキラするシンセシンセしたサウンドがメインのプレイで、ここに来てバンドサウンドが完全にポンプの影を払拭しているのにキーボードだけポンプっぽいテイストを露骨に感じさせるギャップが面白いと言えば面白い点かもしれない。

巷で流行するグランジのサウンドを横目に Edwin Roesなりにハードでメタリックなサウンド要素を加えバンドサウンドの進化を試みたのだろうが、如何せん元より穏やかなプレイが中心だった彼にHM的なヘヴィサウンドを表現出来るはずもなく、いくらノイジーなギターを掻き鳴らそうともスリリングさは今一つなどこか居心地の悪さを終始感じさせるサウンドになってしまったのは残念な結果と言えるだろう……

まぁ、このグランジ風味なポンプサウンドっていう変わり種が聴衆に受け入れられていたならばその後の展開も変わったのかもしれないが、彼等の内包していないサウンド要素である夢劇場のようなドヘヴィなテクニカル・プログレサウンドでしか当時は生き残れなかったのは皆さんご承知でしょうから、彼等が提示した方向性は選択ミスであったんですよね。

せめてポップでメロディアスな要素だけは変わらず堅持してくれれば良かったのですが、どうしたって新たに模索したヘヴィでドライなサウンドの方向性とは相性が悪く、結局のところヘヴィさも中途半端な上にメロディアスさもイマイチというどっちつかずな今まで彼等の売りであったサウンドをスポイルするだけの結果となってしまったのが致命的だったと今ならハッキリ言えます。

その後、Ron Mozerに代わって同郷ポンプ・バンドTIMELOCKの元キーボーディスト Julian Driessen(ex:The Last Detail、Dreamcarnation)を迎えて活動を続行するも、程なくしてバンドは解散してしまう……

ポンプではないけれど完成度の高い『The Big Room』の方向性のまま、シンプルなポップサウンドへ進む方向なら今しばらく彼等はメインストリームで活躍出来ていたかもしれないのが悔やまれますが、変化を恐れず常に自身のサウンドを発展させてきたFOR ABSENT FRIENDSは本当の意味での“プログレ”するバンドであったと言えるのかもしれません。

本作はフランスインディの大手MUSEAレーベルのディストリビュートだったので、比較的今でも容易に入手可能と思われますので、ご興味のある方は中古盤屋等をのぞいて見るといいかもしれない。
まぁ、音源自体はDLすりゃすぐ手に入るんですけどね。

個人的には『The Big Room』が彼等の目指したサウンドの最終到達点にして最高傑作だと思うので、FOR ABSENT FRIENDSのサウンドを聴いてみたいという方はまずこの辺りを試してみるのをお薦めします。


[PR]
by malilion | 2018-03-02 15:58 | 音楽 | Trackback
トラックバックURL : https://malilion.exblog.jp/tb/29345277
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
<< 爽やかポンプから荘厳シンフ... この時期TV放送が多いので、思... >>