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南米チリの忘れられた名プログHMバンドMATRAZの最終作をご紹介。

南米チリの忘れられた名プログHMバンドMATRAZの最終作をご紹介。_c0072376_03072059.jpgMATRAZ 「Gritare」'04

別のアルバムを探していてヒョッコリ転がり出てきたので今日はコレを聞いておりました。

南米チリのSantiagoで96年に結成されたテクニカル・シンフォ&プログHMバンドの2ndにして最終作をご紹介。

Marcelo Stuardo(Ds)、Diego Aburto(Key)、Jorge Diaz(G)により1996年結成され、アルバムデビュー前の97年に「El Reflejo」と「Tierra Herida」なる(それぞれ1曲入り)デモテープを二本リリースした後、Inti Oyarzun(B&Vo)が加わり4人となってバンド体勢が整った99年に「Tiempo」でインディのMylodon Recordsからデビューする。

デビュー作を一聴してすぐ分かるのが、彼等はDREAM THEATERのフォロワーに属するサウンドを披露しているという事だ。

ただ有象無象のフォロワー達と違うのは、ヴォーカルがスペイン語の為に独特な巻き舌発音の歌メロになる点と、フュージョンやジャズが混ざった非HM的でユニークなテイストが楽曲の中で大きなウェイトを占めていて、テクニカルでスピーディーなのは勿論の事、お約束の一筋縄でいかぬ強引な変拍子や楽曲展開で攻めまくるだけでなく、一気に力を抜いた美しく透明感ある洗練されたメロディや、ヘヴィさやダイナミックさを捨ててリズム隊が恰もメロディ楽器であるかのように楽曲をリードしたり、華麗なピアノやシンセの涼やかな音色を織り交ぜた所謂シンフォニックな流れるようなサウンドが際立つ、静と動の対比を活かした多彩でスタイリッシュな楽曲が耳を惹く全四曲の大作志向なハイクオリティな快作であった点だろう。

メロディアスさを損なわぬ奇妙で複雑なアレンジをしてシンフォニック・ジャズメタルとも呼ばれる1stの時点で、このバンドは単なるプログレッシヴHMバンド以上の“何か”を提示しようとしているのは誰の目にも明らかであったと言えましょう。

因みにこの1st『Tiempo』は1999年にカセットで500本のみ自主リリースされ、好評を聞きつけたMylodon RecordsよりすぐCD化されリイシューされている。

そしてデビュー作から5年、続く2ndであり最終作である本作は、フロントマンだった Inti Oyarzunに変わり新たなベーシスト Jorje Garcia(B)が加入し、さらに女性ヴォーカルの Loreto Chaparro嬢を迎えた5人組となった新編成によって製作された。

まず耳に付くのが Loreto Chaparro嬢のパワフルで上から下まで幅広くカヴァーする美しい歌声だろう。

声質は良かったもののパワーという点では問題もあった Inti Oyarzunのヴォーカルパートの強化に加え、従来のテクニカルさはそのままに、よりヘヴィ且つエッジの立ったハードなHM色を強めたプログHM要素が濃厚になり、疾走感溢れるバンド・アンサンブルにも一段と磨きが掛かってよりサウンドのスリリングさと重厚さが増したのは見事の一言(*´ω` *)

インストゥルメンタル・パッセージや作曲面で依然として夢劇場の影響は窺えるものの、非常に複雑なプログレッシヴHMの一部のパートでは1stアルバムより実験的な試みに挑むなど、HMとJAZZという2つの矛盾したジャンルのハーモニーを熟練と情熱で美しく融合させて見せた1stで聞けたシンフォニック・ジャズメタルは更にシャレオツでモダンなサウンドへ進化し、前作を上回る独創性の高さを証明して見せたのは驚きだろう。

ジャズの流動性を内包した音楽は落ち着いていて、そして刺激的で爽快で、何より知的な2ndの中でも特筆すべきはキーボーディストの Diego Aburtoのプレイヤースキルとアレンジ力で、流暢で華麗なピアノの美しくロマンチックな音色がバンドサウンドのオリジナリティを高めるのに多大な役割を果たし、このアルバムを本当に輝かしい作品にしていると言えましょう。

高いレベルで纏まっているものの、あと一歩ユーロ系プログHMのような艶やかさに至らぬのはお手本がUSグレHMだからなのか定かではありませんが、新人インディバンドが2ndにしてここまでのレベルへサウンドを昇華せしめた事を見ても、彼等は決して凡百のフォロワーでないのは確かだ。

けれど、そんなプログレッシヴHMの傑作をリリースしたにも関わらずMATRAZ活動中に Jorge Diaz(G)とJorje Garcia(B)は、CLAUDIO CORDEROなるスリーピースのデス・プログHMバンドを05年に結成し、立ち上げメンバーのバンド掛け持ちが原因だったのか以降MATRAZの活動は停滞してしまう。

2ndアルバム・リリース後の彼等の活動状況については不明だが、彼等はシンフォ系のプログHM路線を追求するのを止めたようで、結局3rdアルバムをリリースする事なく14年に解散してしまった…orz

因みにCLAUDIO CORDEROは現在も活動中だが、Jorge Diaz(G)とJorje Garcia(B)の2人は既にバンドを脱退している。

名手 Diego Aburto(Key)のその後の活動は分からない…出来る事ならどこかのインディ・プログHMバンドで今も活躍していて欲しいものです…

P.S. 久しぶりに2ndをリリースしたのと同時に、2004年度リマスターを施した1999年デヴュー作『Tiempo』もリイシューされていた模様だ。


by malilion | 2017-12-20 02:57 | 音楽 | Trackback
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