S.N.A.K.E 「III」'23 2008年結成のスペイン産キーボード入り5人組メロディアスHRバンドが地元TTFレーベルからデンマークのメロハー専科レーベル Lions Pride Music へとレーベル移籍して約5年ぶりに3rdアルバムをリリースしたのを即GET! 前作まではリード・ギター&リズムギターの2人のギタリストを擁するツインギター5人編成でありましたが短くないインターバルの間にギタリストがゴッソリ抜けて新たなギタリスト Dave Hydenを迎え入れ、更に専任鍵盤奏者 Paul Keysを迎え入れた新編成による第一弾作だ。 ドラマー J.C Morenoとシンガー Franco Troisiによって2008年にスペインのムルシア州のムニシピオ(基礎自治体)であるカルタヘナで結成され、2016年にJUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、DIO等に影響を受けたオーセンテッィクなメロディアスHMサウンドのデヴュー作『Rock Evolution』をリリース、勢いに乗って2018年には特に1987年に米国で大成功を収めた時期のWHITESNAKE『Serpens Albus』の影響が顕著で、他にもSCORPIONS、VAN HALEN、MOTLEY CRUE、RATT等の80年代メジャー・シーンを賑わしたヘア・メタル・バンド直系のゴージャスでバブリーなUSアリーナ・ロック志向のブライトなHMサウンドとHELLOWEEN、GAMMA RAY、BLIND GUARDIAN等でお馴染みなツーバスドコドコで疾走する80年代ジャーマンHM風サウンド等、様々な音楽性が混在する2ndアルバム『Only One Flag』をリリースと、ここまでは順調に活動を続けていたが、全世界を襲ったパンデミックの影響が彼等の活動にも影を落としてしまう… 正直、前作『Only One Flag』'18 はC級に片足突っ込んだB級メロディアスHRアルバムであったように思う。 一番の要因はダミ声寄りな濁り声で決して良い声と言えないもののメタリックなHM系サウンドにはマッチしているパワフルなガナリ声が似合う Franco Troisiのヴォーカル・スキルの問題で、元HELLOWEENでGAMMA RAYを率いる Kai Hansenよりちょっと歌が上手いかな、くらいの歌唱力(汗)な為かキャッチーでメロディアスな楽曲を歌いこなせておらず無駄なシャウトや金切り声を張り上げているのが致命的で、オマケに声の伸びやかさ具合と歌メロの創作能力が今一つであったからだ。 更にバンドの音楽性にバラつきがあり、縦ノリのUSAロックンンロール系サウンドは今イチな仕上がり具合だがユーロHM系サウンドになると途端に80年代テイストを感じさせギター・リフやベースの絡みが格好良くなるもののコーラスはイマイチな纏まり具合でハーモニーもキャッチーさもイマサン、と…バックのサウンドはかなり叙情的な上にメジャー所のユーロHMバンドに迫る魅力的な美旋律を奏でており、それだけに情熱的なのは良いけれどヴォーカルの声質的にアジャストしていない楽曲が非常に惜しい印象で、ヴォーカリストをチェンジするか歌唱スキルが上がるかしないとこのままマイナーB級スパニッシュHMバンド止まりで望むメジャー展開は叶わず終りそうだな、と当時危惧しておりました。 とは言えイタリア出身のシンガー Franco Troisiは中心人物だし、イタリアン・エピックHMバンドWOTANやドイツのベテランHMバンドSCANNERとも昵懇で既にギリシアでのツアーを敢行するなどユーロ圏のアンダーグラウンド・バンド達とコネクションを持っていてメジャーな展開を望むバンドの国外ツアーに欠かせぬメンバーと言う事からも彼が抜ける可能性は限りなく低いと分かっていましたけどね… 又、弾きまくりのリード・ギターに明らかに80年代WHITESNAKE(と言うかモロに John Sykes)を意識したフレーズやリックが透け見え、その派手な白蛇要素が楽曲の纏まりの悪さの最大の原因であったのは明白で、縦乗りアメリカン・ロックンロールとキャッチーなユーロ・メロディアスHM、そしてツーバスドコドコで疾走するジャーマン・スピードメタルと、別ジャンルのサウンドが未消化なままアルバムに混在している為とっ散らかった音楽性と非常にアマチュア臭い印象が強く、粗削りで野暮ったい点も含めてマイナー・インディ・バンド感丸出しながら、所々で耳を惹く旋律やプレイも聴かせ全体的に悪くない方向性のメロディアス・サウンドを奏でているし、逆に言うと多彩で幅広い音楽性の楽曲をこなす事が出来るバンドのプレイヤー・スキルは可能性を秘めているとも思え、様々な問題が改善されればワンチャン大化けもありうるかも…と、その時は勝手な想像を巡らしていた訳ですが、続く本作3rdアルバムではパンデミックによるインターバルと主要メンバーの脱退、そして専任鍵盤奏者の加入、と思いがけぬ外的要因も大きく関係したのか、S.N.A.K.Eは大きく生まれ変わった模様だ! ('(゚∀゚∩ 最大の要因はギタリスト交代で露骨なWHITESNAKEの影響が希薄になったのと、キャリアを積んだ事でか各メンバーの持ち込む音楽的影響がより昇華されて自然な形となってサウンドに現れ、混在する音楽性の纏まり具合と楽曲の方向性が統一され完成度が上がった事、そしてレーベルを移籍してバジェットを得た為かサウンドのクオリティが向上し、さらに Franco Troisiのヴォーカル・アプローチがよりソフトでキャッチーなメロディアス・ロックにアジャストした無駄に情熱に任せてシャウトせず力を抜いてスムースに歌い上げるジックリ唄を聴かせるスタイル(幾分か歌唱力は改善したが未だ絶賛する程ではない…)へ変化した事で聴きづらくメロディを歌い切れていないヘタウマな印象が消え、コーラス等も前作の駄目さ加減が嘘のように綺麗にハモって(笑)おり間違いなく本作のクオリティ改善に関係しているだろう。 楽曲品質の向上は2021年から2023年までジックリと創作と録音に時間を掛けられ、骨太でテクニカルな速弾きプレイでその多才ぶりを如何なく発揮していた Johnny Lorcaと Miguel Solerのツイン・ギターからシングル・ギター編成になり、よりバランス重視のプレイを披露する新ギタリスト Dave Hydenの弾き過ぎぬツボを抑えたプレイや印象的なフレーズ創り、メロディの組み立て、楽曲のコンポーズ能力と前任者を大きく上回るプレイヤーを得た事も大きく、さらになんと言ってもこれまでバッキングやSE的使われ方をしていたキーボード・サウンドが大きく楽曲展開やメロディ創作要素としてコンパクトな楽曲構成に存在している事で、元から80年代的音楽要素は内包していたが、煌びやかで華やか、そして柔和なタッチとユーロ圏バンド特有の叙情感を演出し易いキーボードという武器を手に入れて一層に幅広い音楽性を内包した80年代USメジャー・ロックを強く意識したキャッチーでブライトなメロディアスHRサウンドが構築しやすくなった結果が、本作の前作を上回る完成度と出来栄えに直結しているのは間違いない。 只、狙う方向性の為かちょっとヴォーカルが前に出過ぎなMIXの気がして些か総合的なアルバムの完成度を下げているように思うし、シンガー Franco Troisiの手放しで絶賛出来る程でもない歌声を押し出されましても…と、いうのが偽らざる本音でもあります(汗 前作のWHITESNAKEやHELLOWEEN等のアンダーグラウンドな香りも残る勢い任せのメタリックな80年代HM要素を好んでいた向きからすると、いきなりDOKKENやNIGHT RANGER等の80年代メジャー路線バンドを思わす、さらにはAUTOGRAPH等のバランス重視でラジオフレンドリーな産業ロック要素が強まったカラフルなサウンドへ殆ど別バンドかと言う程にバンドサウンドが大きく変化してしまった訳ですからガッカリな方もいらっしゃるのは理解出来ますケドね… 無論、未だに Franco Troisiのヴォーカル・スキルが足を引っ張っている部分も散見するものの、分厚いコーラスやフックある華やかでメロディアスなキーボードサウンドの壁がカヴァーしている為それ程目立たず、以前のC級に片足突っ込んでいるB級から、もうちょっと頑張れば極上のB級レベルへステップアップ出来そうなキャッチーな80年代型メロディアスHRサウンドを披露するまでに成長しているので、さらなる向上が見込める次なる新作を期待して待ちたいと思います(*´∀`*) ウーン、それにしても本作では新たに加わった鍵盤奏者 Paul Keysが表に裏に終始大活躍していてホント最高です♪ ブライトでキャッチーなフックあるサウンドを形作る重要なピースとしてバンドサウンドを鮮やかに彩っており、彼の演奏能力や作曲能力をどれだけ今後バンドが活用するかで洗練度の具合や成功までの道のりが決まるのではないでしょうか? アレ? なんかこの流れでデジャヴを覚えたのですが『ああ、コレってJUPITERの時にも書いたな』と思い出した次第で、スペインのマドリード出身で正統派スパニッシュHMバンドGOLIATHが改名して、派手でキャッチーなキーボード入り5人組スパニッシュHMバンドJUPITERへ音楽性を大幅にメジャー路線へ変化させた時に似てますよね。 80年代の昔からメジャー路線を狙うスペイン産バンドは皆、同じ流れになるのか不思議ではありますが、やはりより大きな音楽市場が存在する米国の方をどうしても向いてしまいがちなんでしょうか… 尚、CD最後のボーナストラックに米国人歌姫 Belinda Carlisleの1987年のヒット曲『Heaven Is A Place On Earth』のカヴァーを Franco Troisiが艶やかな美声のフィメール・ヴォーカリストとのデュエットで披露しており、このチョイスからもバンドが大きく音楽性を変化させよりメジャーな展開を望んでいるのが透け見えるようです。 地味ながらミックスとマスタリングは同郷メロハー・バンド91 SUITEの Ivan Gonzalezが担当している点も見逃せません。 そうそう、歌詞は英語詞ですので巻き舌ヴーカルを危惧する方はご安心を。 とまれ次なる新作が期待出来そうなスパニッシュ・メロディアスHRバンドがまた一つ誕生したので、ご興味あるようでしたらご自身の耳でチェックしてみて下さい。 Track listing: 01. Hungry For Love 02. Midnight Girl 03. Heartbeat 04. Wildstreet 05. The Answer 06. Strangers In Paradise 07. Born To Rock 08. Coast Of Gold 09. End Of The Road 10. Heaven Is A Place On Earth S.N.A.K.E Line-up Franco Troisi (Lead Vocals) J.C. Moreno (Drums) Dave Hyden (Guitars) Paul Keys (Keyboards) Jorge Maestre (Bass) with: Jona Tee (Backing Vocals :H.E.A.T.) Frankie Galindo (Backing Vocals) Miguel Soler (Backing Vocals) #
by malilion
| 2023-12-01 12:08
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CYAN 「Pictures From The Other Side :CD + DVD Limited Release」'23 00年代以降の英国シンフォ・シーンを代表するメロディアス・シンフォニックのトップ・アクトMAGENTA、そのMAGENTAを率いるイギリス人マルチ・プレイヤー Robert ReedがMAGENTA結成前の90年代初頭に活動していたポンプ・バンドCYANの2ndアルバムが、2021年のデヴュー作のリメイク・アルバム同様に一部の楽曲を書き直し、アレンジも新たに最新のテクノロジーを用いて再構築を行い、さらに全てバンド編成にて新録した殆ど完全新作の別物と言えるセルフ・リメイク・アルバムが自主制作盤が限定リリースされたのを即GETしたのでご紹介。 今は亡きオランダのSI Musicのカタログナンバー54番として1994年にリリースされていたオリジナルの2ndアルバムは、デヴュー作より幾分かマシになったものの相変わらずチープなイラストのジャケな、ヴォーカルとギター・ソロパートにゲストプレイヤーを複数人招いた他は Robert Reedが全ての演奏パートをこなすソロ・ポンプ・プロジェクト作(この時点ではヴォーカリスト Nigel Voyleとの双頭プロジェクトに成りそうだった…)でありました。 デヴュー作は全て Robert Reedが独力で制作した為、お世辞にも褒められたものでない劣悪なヴォーカル・パートのせいでアルバムのクオリティを著しく低下させていたのを本人も痛感していたのか、続く2ndで無名ながら専任ヴォーカリストを迎え入れ問題は一応の解決を見たものの、相変わらずドラム・パートは打ち込みの軽く固いサンプルなのが残念ながら、前作で垣間見せたGENESISやYES、Mike Oldfieldの影響が伺えるストリングス・オーケストラを意識したアレンジを交えた終始鳴り響くシンセ・プレイに後のMAGENTAを彷彿とさせる美しくシンフォニックなプレイやリリカルなピアノの独奏パート、そしてラストのカルミナ・ブラーナも組み込んだ14分超えの壮大な大作など既に後の活躍を予感させる輝きを放っており、美しいフィメール・バッキングヴォーカルも交えて奏でられる叙情感香るウェットでメロディアスな楽曲の出来映え(シンセ・サンプルの軽やかなフルート・パートが美しい!)もまずまずと言え、ゲスト・ギタリスト Andy Edwardsのエモーショナルな泣きのソロ・パートのお陰もあってか確実にデヴュー作以上のクオリティに仕上がっていて、続く新作に期待を抱いたものです。 無論、今の耳で聴くと一人多重録音と自主制作いう創作環境も手伝って古臭いサウンドと安っぽいサンプリングに苦笑しますし、まるで急き立てられるかの様に矢継ぎ早に旋律を紡ぎ、楽曲展開も少々取って付けたような不自然さが些か感じられ、全体的に粗削りで落ち着きが無い印象ではありはしますが、まだまだ無名状態であった Robert Reedの抑え見れぬ創作意欲と成功を夢見てのヒリつくような渇望が垣間見え、今さらながらに大変興味深いですね。 因みに1988年にMARILLIONから Fishが脱退した時、次なるフロントマン選考オーディションをGALAHADのシンガー Stuart Nicholson (!)と Nigel Voyleも受けたらしいが、結果は皆さんご存じの通りで結局 Nigel Voyleはその後、199年リリースの3rdアルバム『The Creeping Vine』に歌声を残してシーンから姿を消し、CYANの活動も潰えてしまう… GENESISチックな劇的な展開のある楽曲にマッチする Peter Gabriel風のシアトリカルな歌唱スタイルを本オリジナル作で Nigel Voyleは披露していましたが、やはり些かパワー不足だったのと癖が少なく様々な楽曲に対応可能な声質と灰汁の無いスマートな歌声だった反面で強烈な個性に欠ける点が、MARILLIONは元よりCYANでも成功出来なかった要因なのかもしれません…(´д⊂) さて、決して満足な仕上がりでなかっただろうCYANの作品に Robert Reedは未だ並々ならぬ想いを残しているのは前作1stリメイク・リリース時にもお伝えしましたが、本作も同様に現在の彼が持てるスキルと人脈と資金を存分に注ぎ込んで再構築に挑んでいるのが見て取れ、オリジナル作が宿していた情熱をそのままに2023年に相応しく殆ど書き直し(タイトルも変更されている)に近い楽曲の手直しや新パート追加、さらに再アレンジを施して当時のGENESISやYES、Mike Oldfield等の影響が透け見えるサウンドを改めるべく、前作に引き続き自身のソロ・シンフォ・プロジェクトTIGER MOTH TALESやCAMELのキーボード奏者としても活躍する英国出身の盲目の天才マルチ・ミュージシャン Peter Jonesをリード・ヴォーカルに、英国シンフォ・バンドTHE TANGENTや自身が率いるプログ・バンドMASCHINEでの活躍が知られ、近年 Francis Dunneryが再結成した Francis Dunnery's IT BITESでもギタリストを務める Luke Machinをリード・ギタリストに、ベースにはMAGENTAでも活動を共にしGODSTICKSにも在籍する Dan Nelsonを、THE FYREWORKや初期MAGENTAでも活動を共にした Tim Robinsonをドラムスに、Robert Reedのソロ作に何度か参加している英国人フィメール・シンガー Angharad Brinn嬢と今回初めてゲスト参加したイリアン・パイプ奏者の Troy Donockleyを迎え制作されており、チープだったアートワークもアルバムで綴られる物語を想像させるファンタジックな素晴らしいイラストへ一新され、アマチュア臭かったオリジナル作を遥かに凌駕する完成度とこれまで研鑽を積んで来たキャリアに裏打ちされた余裕と揺るぎない自信が全編に渡って漲っており、スケールとクオリティを大幅にアップグレードさせた一大絵巻が腕利きプレイヤー達によって奏でられる傑作シンフォニック・ロックへと生まれ変わりドラマチックに鳴り響いているのに異論を唱える者は居ないだろう。 やはりなんと言ってもヴォーカル・パートのレベルアップが著しく、Nigel Voyleには悪いけれども Peter Jonesのエモーショナルで伸びやか、情感タップリに力強く歌い上げる抜群のヴォーカルを聴くだけでも全く違う曲に思えてしまうし、バックのサウンドもバランスを考慮しアンサンブルを想定した完全にバンド編成サウンドへと改められており、打ち込みによる無機質でグルーヴの無いリズム・パートから名うてのプレイヤー達によって構築されるスムースでグルーヴィ、タイトでスイングするボトム・サウンドへ再録されている為に全く違う作品に聴こえ、これだけオリジナルの面影が霞む叙情的で美麗な一級品のシンフォ・ロックサウンド作を再構築するなら全くの新作として創作しても良かったハズなのに、若かりし頃に思い描く通りの創作を果たせなかった作品への想いと後悔が未だに Robert Reedの裡で燻っていたのか、だたからこそ今になってまるでデヴューしたてのシンフォ・バンドの如く尽きぬ情熱が奔流の如くあふれ出したかの様な瑞々しく鮮烈なサウンドへと結実しているように思えます。 適所に配された艶やかな美声のフィメール・バッキングヴォーカル、小気味よく軽やかなピアノ、薄っすら爪弾かれる美しいハープと軽快なイリアン・パイプ、そしてなんとも言えぬ温かなサウンドを紡ぎ続ける Peter Jonesの操るホイッスルと情熱的でムーディなサキスフォンの弾む音色が華やかに楽曲を彩り、Luke Machinの心打つ独特なロングトーン・ギターや物悲しく懊悩するようなチョーキングはまるでギターが咽び泣いているかの様で実に重厚なシンフォロック・サウンドに良く映え、迎えられた各ミュージシャン達の多大な貢献によってオリジナル作で感じられなかった英国バンドらしい上品な叙情感とほんのり漂う哀愁の香りが濃密に立ち込めるかの様で本当に堪りません♪ ('(゚∀゚∩ 音を無駄に重ねて厚塗りしたサウンドを鳴らしていたオリジナル作の作風を改め、代わってセンチメンタルでメロゥな美旋律をシンプルに奏で、ナチュラルな楽器の音色をシットリと響かせる優美で気品漂うパートが楽曲の随所で楽しめる心地よいサウンドへ変化したのが良く分かり、そういった面でも Robert Reedのミュージシャンとしての力量以上にアルバム全体を俯瞰してプロデュースする能力がMAGENTAを経て各種プロジェクトへの参加やセッション活動を通じてキャリアを積んだ事で段違いに向上したのが如実に伝ってきますね。 オリジナル作では終始鳴り響き楽曲を主導していたシンセ・サウンドがググッと控え目になった代わりに巧みなリズム隊のプレイと、深みあるエモーショナルなヴォーカル、そしてセンチメンタルなメロディを綴るギター・サウンドが大きくフィーチャーされており、どちらかと言うと主役の鍵盤は小洒落たアレンジの音色や裏方的なパートを小気味良く弾いている事が多いものの、ここぞの時はお得意のカラフル且つダイナミックで壮大なオーケストレーションをたっぷりフィーチャーした、気品漂う優美なメロディとウェットで艶やかな情緒が香るドラマティックなシンセサウンドの壁を構築して一気に前面に踊り出て流麗なピアノの調べも交えて瞬く間に Robert Reedカラーへ鮮やかに楽曲を染め上げていく瞬間などは、得も言われぬ感動が奔流のように背筋を駆け抜け、MAGENTAファンのみならず全シンフォ・ファンにとっても間違いなく痛快にして心躍る至福の一時なのは間違いない (*´∀`*) 尚、同梱されているDVDには本編『Pictures From The Other Side』の5.1 サラウンド・ミックスを収録し、さらにプロモ・ヴィデオと『The Quiet Room Session (Live Acoustic Performance)』6曲も収録しており、前リメイク作『For King and Country』の楽曲を Robert Reed (Grand Piano)、Luke Machin (Electric Guitar)、Peter Jones (Vocals & Saxophone)の3人のみで録音したアコースティック・スタジオ・ライヴ音源を収録しており、アルバムとは全く異なる優美な趣と穏やかな雰囲気のサウンドが楽しめるファンならマストなアイテムだ。 又、同時リリースされた『Pictures From Another Side Remix And Live - Limited Edition』'23 には、リメイク作『Pictures From The Other Side』のボーナス・ディスクとも言える音源が収録されており、Pictures From The Other Side (Orchestral Mix)、Solitary Angel (Orchestral Mix)、Tomorrow's Here Today (Original Arrangment)、Broken Man (Celtic Mix)のアルバムとは全く違う Angharad Brinn嬢の艶やかな美声が大きくフィーチャーされた優雅でクラシカルな仕上がり具合の艶やかな音色は一聴の価値があるリミックス音源が4曲と、同梱DVD収録の『The Quiet Room Session』と同じ編成でのアコースティック・スタジオ・ライヴ音源(本編同梱DVD収録音源と同一音源)となっており、前リメイク作を購入してその英国シンフォ・サウンドを気に入られた方や Robert Reedをはじめ参加している各ミュージシャンのファン、そしてCYANファンな方は是非とも入手しておくべきマニアックなレアアイテムと言えましょう。 唯一残念なのは廃盤になって久しいSIオリジナル盤音源の再発を期待していた方には申し訳ないけれども、殆ど別物と言える壮大にして華麗なサウンドにリメイクされた Robert Reed入魂の本作を今は是非楽しんで欲しいですね。 どちらも自主盤の限定リリースですのでお求めの方は早目に入手しておきましょう、ニッチなジャンルのプログレ系はなかなか再発されませんから…(涙 Disc 1 -CD Tracks Listing: 01. Broken Man 02. Pictures From The Other Side 03. Solitary Angel 04. Follow The Flow 05. Tomorrow's Here Today 06. Nosferatu Disc 2 -DVD Tracks Listing: 01.Full album in Dolby Digital and dts 5.1 surround 02.Promo Videos 03.I Defy The Sun - The Quiet Room session (Live Acoustic Performance) 04.Don't Turn Away - The Quiet Room session (Live Acoustic Performance) 05.Call Me - The Quiet Room session (Live Acoustic Performance) 06.Man Amongst Men/The Sorceror - The Quiet Room session (Live Acoustic Performance) 07.Snowbound - The Quiet Room session (Live Acoustic Performance) 08.For King And Country - The Quiet Room session (Live Acoustic Performance) CYAN Musicians: Robert Reed (Keyboards、Guitars、Backing Vocals) Luke Machin (Lead Guitars) Peter Jones (Lead Vocals、Saxophone、Whistles) Dan Nelson (Bass) with: Tim Robinson (Drums) Angharad Brinn (Backing Vocals) Troy Donockley (Uilleann Pipes) Produced and Mixed By Robert Reed #
by malilion
| 2023-11-30 22:03
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RIO 「Borderland +4」'23 1984年に7"EPを一枚リリースしていた英国NWOBHMバンド BOMBAYが改名し、ARGENTの Jim Rodfordの息子 Steve Rodford (Drums、Bass、Keyboards)と Jon Neill (Vocal、Guitars)とが新たに結成したスタジオ・プロジェクトであるブリティッシュ・ハードポップ・デュオが1985年にリリースしたデヴュー作が未発表曲を含むボーナストラック4曲を追加収録し、元KING KOBRAのギターリストとしてお馴染みな JK Northrupによる2023年度リマスターを施され、オリジナルLP盤はMFNレーベルからのリリースであったが今回はMelodicRock Classicsからリイシューされたのを即GET! TERRAPLANE、SHY、TOBRUK、EMERSON等と共にNWOBHMのポップ・サイドを代表する80年代英国AOR&ハードポップ好きなら外せない名盤中の名盤と言われる一作で、以前英国のリイシュー専門レーベル Krescendo Recordsから初CD化されたり近年当時の古いマスタリングのままな国内盤CDも再発されていましたがオリジナル通りの9曲収録だった為、今回の2023年度リマスター&ボートラが追加された最新盤はハードポップ・ファンならば見逃せぬ一枚であります。 因みにアナウンスでは初のオフィシャルCD化と言う事らしいので、国内再発盤は別ににして以前リリースされていた Krescendo RecordsとRetrospect Recordsからの再発CDはグレーな扱いだったんだな、と再確認出来ました… まぁ、 そもそもKrescendo Records盤は収録曲欠けてたりと胡散臭さ炸裂してましたしねぇ…そりゃそうだよね、と(汗 実際、彼等のデヴュー作は米国以外からリリースされたAOR&ハードポップ・アルバムの中でも最高傑作の一つであると広く認められており、本作のキャッチーでメロディアス、そして煌びやかでムーディーなキーボードが楽曲を彩るアダルトで洗練されたサウンドとコンパクトな楽曲を耳にした方ならばその意見に異を唱える事は無いだろう。 そんな素晴らしい作品が何故に今まで大々的に周知されずリイシューされて来なかったかと言うと、英国MFNレーベルは通常NWOBHMバンド作を数多くリリースしてきレーベルで、当時こんなに軽いサウンドのポップ・バンド作がリリースされると誰も予想しておらず、そういったレーベルの毛色の違いも彼等の素晴らしい作品と無関係な所で活動やプロモーション等の足を引っ張っていたのではないかと予想します。 さて、内容の方はと言うと未だ角方面から絶賛され続けているのも頷ける出来映えで、伸びやかで軽やかな印象のハイトーン・ヴォーカルと清涼感あるコーラス、リヴァーブの効いたビッグなドラムと当時最先端だった満載のシンセ・ドラム、派手なアーミングとメタリックに響き渡るキャッチーなリード・ギター、曲の冒頭や曲間で雰囲気を盛り上げ常に煌びやかな美旋律を紡ぐ柔和なキーボード、そしてスムースでタイトなベースと、コンパクトでアレンジとコンポースが行き届いたラジオフレンドリーな楽曲には、職人芸が光るAOR、デジタリーでお洒落なUKポップス、抜けの良い爽快なUSメロディアス・ロック、人工甘味料的キャッチーさなグラム・ロックと、80年代初頭にメジャー・シーンを賑わした様々な音楽性が織り込まれ、さらに洗練させたフックに満ちたメロディアスなポップ・サウンドで隙無く構成されており、ほぼ捨て曲が無い本作は現代の基準からしても新鮮に聴こえる素晴らしい作品なのに疑いは無い。 ここまでガッチリと造り込まれ、シングルヒット狙いな楽曲で構成されたアルバムながら、如何にも英国バンドらしい適度にウェットなメロディと底抜けにドキャッチーに成り切らぬ哀愁を伴った叙情感と甘過ぎぬ爽やかなサウンドの上品さが実に英国アーティストの作品らしく、長い年月を経て今やちょっとしたカルト・クラシック・ポップ作としてメロディアス・ロック愛好家の間で未だに愛され続けているのも納得な極上のメロディアス・ハード・ポップ作だ。 これだけ諸手を上げ絶賛して置いてなんだが『セルフ・プロデュースで自宅で録音し、仕上げとミックスはロンドンのスタジオで行った』と Steve Rodfordが今回のリイシューに際して語っているようにプロダクションの質はお世辞にも最高と言い難いが、無駄無い楽曲と的確な演奏のクオリティの高さが全てを補っており、流石に今の耳で38年前のオリジナル音源を聴くと辛い箇所がまま有るものの今回のリマスター作業でそういった問題的が幾分か改善されファンにとって嬉しい事だろう。 ただ、折角のリマスターなのに一部でチリチリとノイズが聴き取れ、もしかしたらマスター・テープの保存状態が宜しくなく劣化していたのか少々ソコだけは残念であります…クリアなサウンドだけにノイズが耳についちゃうんだよなぁ…(´д⊂) まさか板起こしなんて事はないだろうし、さすがにリマスターのプロダクション・ミスなんて事もない…よね? それとも単純に音圧を持ち上げ過ぎてしまった弊害なんでしょうか? 敢えて苦言を述べるとすればボトムは打ち込みも多用されており全体的にやや音が軽すぎる事くらいだろうが、本作にヘヴィでメタリックな00年代以降のダークでブルータルな重厚サウンドやロックバンドらしい生っぽさを求める向きは居ないだろうから特に大きな問題にはならないハズだ。 こんなに素晴らしい出来のデヴュー作をリリースしたにも関わらず、本デュオは1986年に2ndアルバム『Sex Crimes』を英国Music For Nations レーベルからリリースし、その後シングルを一枚リリースして消滅してしまう… 時代はバブリーでゴージャスなヘア・メタル&産業ロックが趨勢を極めんとしていた中で、シーンの流行を鑑みてキーボード控えめでよりヘヴィさを増したワイルドなギター・オリエンティド&ビック・コーラスを効かせたアローナ・ロック風サウンドで攻めの姿勢を見せたが、デジタリー風味ある英国ハードポップ・サウンドとコンパクトな楽曲に魅了されたファンからは望まれた路線ではなかったのか、バンドでなくデュオ・スタジオ・プロジェクトだったのが足を引っ張ったのか、はたまたHMメインのレーベル的にキャッチーなRIOの売り方をミスったのか、2ndアルバムは市場に訴求せず姿を消してしまったのが悔やまれます。 個人的には Jon Neillの爽やかな歌声はヘヴィなビック・サウンドの荒々しく勢いあるメタル系作には似合わないと思うので、その辺りの路線変更ミスも響いたのかな、とも思いますが… 引き続き2ndアルバムがオフィシャル・リイシューされるのを待ちましょう。 今回のリイシューの目玉と言えるボーナス・トラックには、シングルB面の分厚くキャッチーなバッキングコーラスがBON JOVIっぽいアルバム未収録曲『Casualty』、『I Don't Wanna Be The Fool』のシングルMIX、そしてオリジナル・バンドMIXの『State Of Emergency』と『I Don't Wanna Be The Fool』の4曲が追加されており、Steve Rodford的にはバンドスタイルで演奏した打ち込み感が弱くよりバンドらしい生っぽく広がりのある楽器の響きが活きた音源のプレイと出来栄えにかなり自信を持っていた模様で今回こうして初めて公開出来て喜んでいる模様で、オリジナル盤をお持ちの方も今回追加されたボーナストラックを堪能する為だけに買い直しても決して損はしないだろう。 とまれ80年代メロディアス・ロック愛好家は必聴の名作ですのでレーベル・ソールドアウトする前に速やかに購入しておきましょう、お見逃しなく!! Track List: 01. I Don't Wanna Be The Fool (Original Mix) 02. Straight To The Heart 03. Tommy Can't Help It 04. Better This Time 05. State Of Emergency 06. Shy Girl 07. She's A Virgin 08. Close To You 09. Borderland Bonus Tracks: 10. I Don't Wanna Be The Fool (Stephan Galphas Single Mix、Pitch Down) 11. Casualty (Previously Unreleased Track) 12. State Of Emergency (Original Band Production Mix) 13. I Don't Wanna Be The Fool (Original Band Production Mix) RIO Musiciens: Jon Neill (All Vocals、Guitars) Steve Rodford (Drums、Bass、Keyboards) Produced By Steve Rodford #
by malilion
| 2023-11-28 14:55
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QUASAR 「Memories Of Times Yet To Be - 2023 Remix」'23 以前ここでもLANDMARQやSTRANGERS ON A TRAIN等の Clive Nolan関係のポンプ・プロジェクトやバンドでお馴染みの舌っ足らずでコケティッシュなハスキー・ヴォイスが魅力的なフィメール・シンガー Tracy Hitchings嬢がかって在籍していた事で知られるQUASARが2012年に新女性ヴォーカリスト Keren Gaiser嬢を迎え再結成を果たし、アーカイヴ音源やバンド初期のLIVE音源、そして最新編成のLIVE音源等をリリースしていたのをお伝えしたと思う。 その当時アナウンスされていた待望の復活第一弾で3rdアルバム『Memories Of Times Yet To Be』が2016年にデジタル配信のみでリリースされていたが、来年リリース予定の新作に先駆けて2nd『The Loreli』のリミックス&ボーナストラック追加リイシュー盤と同時に3rdもリミックスされR製とは言え初めてフィジカル盤がリリースされたのをGETしたのでご紹介。 80年代初頭にMARILLION、IQ、PALLAS、TWELFTH NIGHT、PENDRAGON、SOLSTICE等やNWOBHM勢等と共に有象無象が入り乱れた中で英国次世代ロックムーヴメント・バンドの1バンドとして注目された、MIDIギターを操る日本人ギタリストも在籍していた事もあるGENESIS影響下のキーボードを主体とした柔和なポンプ・サウンドを聴かせていた英国バンドQUASARは、結成当初からメンバーの出入りが激しく(総勢20名以上!)一枚として同じメンバーで制作されたアルバムが無く、3rdリリースに先駆けて2012年にリリースされたLIVE作『Live 2011』構成メンツはツイン・キーボード、男女ツイン・ヴォーカルの5人編成で新たな可能性を強力に感じさせる編成の作品であったが、3rd制作時にはギタリストを Greg Studleyから Clancy Ferrillへチェンジし、ヴォーカル(最初、唯一のリード・ヴォーカリスであった)も兼ねるキーボーディスト Robert Robinsonが抜け(涙)キーボードはリーダーのベーシスト Keith Turnerが兼ねる専任鍵盤奏者不在の4人組編成で制作されていた。 今回2ndアルバム『The Loreli』が2023年リミックスを施され、さらに1987年のプロモ・カセット『Forgotten Dreams (The Lorelのデモ音源)』の全5曲を追加収録しており、デヴュー作のシンガー Paul Vigrassの後、Susan Robinson嬢を挟んで僅か数か月の在籍で正式音源を残す事なくバンドを去ったシンガー Nick Willoamsのなかなか良い声質でパワフルなヴォーカルが収められた貴重音源が追加されているので、オリジナルの2ndのCDをお持ちの方もかれこれ34年も前のマスタリングで自主制作盤であった訳だからこれを機に買い直すに値するリミックス&リイシュー盤と言えるだろう。 流石に録音機材の進歩やデジタル機材の進化は著しく、リミックスを施された音源は34年前の音源と比べて音のクリアーさやボトムの芯の強さが増し、前に出すぎていたキーボード・サウンドが少々引っ込むバランス調整が成され、各楽器の音の輪郭や分離も良好になって今の耳でも聴けるレベルへ磨き直されているので、オリジナル盤をお持ちの方も是非一度聴き比べてみて欲しい。 ただ、所々でノイズのようなものが聴こえるのでマスター・テープの劣化か、もしくは板起こし音源を含んでいるのかもしれないのが少々残念だケド(´A`) 『Forgotten Dreams』を聴くと分かるがほぼアレンジも曲構成も既に完成しており、ヴォーカル・パートを Tracy Hitchings嬢が歌い直しただけなのが2ndアルバム『The Loreli』と分かり、もし Nick Willoamsが脱退せずポンプムーヴメント全盛期に間に合う形で2ndアルバムをリリース出来ていたのなら、若しくは Susan Robinson嬢在籍中に楽曲が完成して1985年までに2ndをリリース出来ていたならQUASARの活動や評価がその後どうなっていたのか…今となっては Tracy Hitchings嬢の知名度の方が高く『Tracy がかって在籍していたB級マイナー・ポンプバンド』という扱いな知る人ぞ知るな存在として語られるのが実に不憫で… とは言え、QUASARを抜けたメンツが新たにLANDMARQを結成し、その後ポンプを経てシンフォ・バンドとして長らく活動する事を考えるとQUASARのメンバーが常に流動的であったからこそLANDMARQが生まれたとも言えるので、どちらのバンドのファンでもある私としては複雑な心境だ…ウーン(´~`) さて、初めて公式スタジオ音源にその歌声を残す事になった Keren Gaiser嬢をフィーチャーした、今回CD-R盤とは言え初のフィジカル盤リリースとなった3rdアルバム『Memories Of Times Yet To Be』'16 の方はと言うと、『Live 2011』'12 で聴けた典型的プログレ歌姫スタイルなソプラノ・ヴォイスで癖が少ない反面無表情に成り勝ちなフィメール・ヴォーカルスタイルから、バンドに長期在籍した事で歌唱力に自信が芽生えたからなのか、一転してGENESISチックで Peter Gabrielっぽい妖し気で外連味を含む癖の強いシアトリカルな歌唱スタイルや、RENAISSANCEの Annie Haslam風な清らかで透明感ある伸びやかなソプラノ・ヴォイス、HR風なパワフルで太い低めの迫力ある歌声、そして Tracy Hitchings嬢を思わすセクシーで可愛げのあるフェミニンなヴォーカルと実に幅広い表現と様々な歌唱スタイルを披露して楽曲をグイグイと牽引しており、現在制作中の新作でもその素晴らしい歌声を楽しませてくれるだろう歴代最長の在籍期間(3rdリリース時で6年、来年で14年!)を保っているだけはある歌姫なのだな、と再確認させてくれた。 LIVEではキーボードもプレイしてサウンドの厚みを再現しているし、今となっては Keith Turner的にも Keren Gaiser嬢は居なくてはならぬメイン・メンバーに違いない。 当初は〝The Eyes Of The Innocents”なるタイトルになるハズだった3rdアルバムのサウンドの方は古式ゆかしいポンプ・タッチを色濃く残しながら、重厚で荘厳なドシンフォ・スタイルへ急接近する事もなく、幾分かHMっぽいテイストも感じさせつつ、エモーショナルな Keren Gaiser嬢の歌声をメインに据え、華やかで軽目なシンセ・サウンドとメタリックでハードなギターも適度にフィーチャーしたGENESIS、YESの影響を巧みに取り入れオリジナリティへ昇華させた英国風味香るメロディアスな80年代ポンプ・スタイルのシンフォ・サウンドとなっており、専任鍵盤奏者が居ない為か意図してなのかキーボードの使われ方がSE的と言うか場面を盛り上げる風なイメージと自主盤故に貧弱なリズム隊の軽めなサウンドが今となっては絶妙なノスタルジックさと得も言われぬチープさを漂わせ、決して万人にお薦めはしかねるが80年代当時のポンプ・ムーヴメントを楽しんでいた方などには堪らない感触の今は絶えて久しいスタイルの音楽と言えるだろう。 てか、専任ドラマーがちゃんと在籍しているのにデモ音源の一部を流用しているのか明らかに打ち込みと思しきドラム・サンプルなんかが聴こえ、実際はリーダー Keith Turnerが制作したデモ音源に各プレイヤーが後から指示された箇所の演奏を置き換えただけ、みたいな流用部分が多い作品と言うのが実情なのではないだろうか? まぁ、自主盤だしバジェットの関係もあって恵まれた録音環境ではなかったのは十分想像つきますし、なにせ2016年当時にポンプ風味バリバリのドマイナーな古臭いシンフォ・サウンドですからね…これがプログHMやモダン・シンフォならもっと聴衆へアピール出来ただろうし、インディ・レーベルの目に止まってワンチャン制作費を工面してもらえたかもしれませんが… 反面、2016年にもなってこんな古臭いポンプ風味あるシンフォ・サウンドなアルバムをリリース出来るのも自主制作故の独自性でありますから、今となっては他では滅多に耳する事が叶わぬ叙情的な80年代風英国ノスタルジック・サウンドを楽しませてくれる貴重なバンドとも言えよう。 でも、出来たらR盤でのリイシューは勘弁して欲しかったなぁ、折角のリミックス&ボートラ追加なのにブックレットもカラーコピー紙だしさぁ…(´д⊂) 2ndの方はジャケット・デザインに変更はなく、バンドロゴが新しいものに置き換わっているのとコントラストと色味が少し強めになっており、3rdの方は完全にジャケット・アートが変更されている。 来年リリース予定の新作は是非とも正式なデュプリ盤である事を祈りつつ、素晴らしい出来栄えのアルバムが届けられる事を首を長くして今暫く待ちましょう(*´ω`*) Track List: 01. Eyes Of The Innocents 02. In the Grand Scheme Of Things 03. The Space In Between 04. White Feathers 05. Enigma At The Louvre QUASAR Line-Up: Keren Gaiser (Vocals) Clancy Ferrill (Guitars) Paul Johnson (Drums) Keith Turner (Bass、Keyboards、12 String Guitar) #
by malilion
| 2023-11-27 10:44
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SOUTHERN EMPIRE 「Another World」'23 メタル色も強いシンフォニック・ロックを展開してきた元UNITOPIAの鍵盤奏者で現UNITOPIAメンバーでもある Sean Timms率いるSOUTHERN EMPIREが、2023年にUNITOPIAがまさかの再結成し同年に5枚目のアルバムをリリースした上に年明け早々にシンガー兼ギタリストの Danny Loprestoが脱退した為『もうSOUTHERN EMPIREは解散か?』と危惧していた所に久々となる新譜がリリースされたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。 2000年代オーストラリア・ネオプログレを代表するUNITOPIAの立ち上げコアメンバーで鍵盤奏者の Sean Timmsとヴォーカリスト Mark Trueackが2012年に4thアルバム『Covered Mirror Vol. 1 - Smooth As Silk』を発表後にバンドは分裂して Mark Trueack率いるUNITED PROGRESSIVE FRATERNITYと Sean Timms率いるSOUTHERN EMPIREが誕生、そして2016年にデヴュー・アルバムをリリース、その後も順調に活動を続けここでもご紹介した素晴らしい出来栄えの2nd『Civilisation」』’18 も発表と順風満帆に思えた彼等だったが突如全世界を襲ったパンデミックの影響は深刻だった模様で、その間音楽活動を自由に行えなかったのが切っ掛けなのか、まさかのUNITOPIAが再結成、しかもドラマーに Chester Thompson (ex:Frank Zappa & THE MOTHERS OF INVENTION、ex:WEATHER REPORT、ex:GENESIS、etc...)、ベーシストに Alphonso Johnson (ex:WEATHER REPORT、ex:SANTANA、ex:Phil Collins、etc...)という超々凄腕リズムセクションを招いた強力な新編成で2023年に新譜『Seven Chambers』リリース、そして先に述べた様に時を同じくしてSOUTHERN EMPIREはシンガーを失うなどファンからすると無視出来ぬ不安の兆しがあった訳だが、何はともあれこうして無事新作を5年ぶりに届けてくれた事をまずは素直に喜びたい。 さて新たに迎え入れられた注目のシンガーだが、近年オーストラリアのTVショー『The Voice』へ出演して注目を集め、続いて彼自身の名義でのソロアルバム発表、そして2010年頃から活動し既にアルバム数枚をリリースしている自身のプログレッシヴ・ロック・プロジェクトバンド PROJECTED TWIN、及びEARTH MEET WORLDを率いる Shaun Holtonを新ヴォーカリストとして本作は制作されており、SOUTHERN EMPIREの特徴であるHMサウンドを通過した21世紀型シンフォ・バンドならではの洗練されたシャープでコンパクトな演奏と、古き良きプログレッシヴ・ロックサウンドへの敬愛を詰め込んだ色彩豊かで叙情感あるドラマティックな音楽性から何一つ失われていないのは明白で、一層に研ぎ澄まされレベルアップしたメロディアスなフックあるヴォーカルと美麗で爽快なコーラスワーク、鋼の如きテンションとハッタリ抜群のド派手なキメの連発、そして捻りの効いた高速ユニゾン・バトルやテクニカルなインタープレイがスリリングに飛び交う、益々モダンになって更に迫力とキャッチーさに拍車をかけた超プロフェッショナルなハード・シンフォサウンドをバックに伸びやかでエモーショナルな歌声を聴かせ、彼のエネルギッシュで伸びやかな熱唱がバンドに迸る勢いと新たな息吹、そしてフレッシュな感覚をもたらしており、前任シンガー Danny Loprestoの抜けた影響を危惧するファンを間違いなく安心させ、そして歓喜させる事だろう。 Danny Loprestoはミドル・レンジがメインで、ちょっと高域で掠れるけれどストレートで朗らか、そしてパワフルで伸びやか、そして情感豊かな歌声が実に魅力的だったが、後を担う事になった Shaun Holtonはより若々しい感触で透明感ある伸びやかな歌声が特徴で、前作よりもキャッチーでフックあるバッキング・ヴォーカルや巧みなハーモニー・ヴォーカルがアルバムの全面に押し出されている印象の為か、よりポピュラー・ミュージック&ポップロックに接近したイメージのカラフルなヴォーカル・パートに見事にハマった歌唱を披露しており、エモーショナルな感触や情感の巧みさではまだ前任者に及ばぬかもしれないが、その見事な歌いっぷりには些かの不安も抱かせないのは流石だ。 因みにシンガーが交代しただけで他のメンツは前作と同様なバカテク集団なままですのでファンの方はご安心を。 デヴュー当時は、YES、KANSAS、SPOCK'S BEARD、Neal Morse、MOON SAFARI、U.K.、IT BITES等からの影響が伺えるポピュラリティーに富んだキャッチーなメロディ・ラインと、DREAM THEATER、CIRCUS MAXIMUS等からのソリッドなプログレッシヴ・メタルの影響が大雑把に伺え、加えてフュージョンっぽいタッチやJAZZやAORを思わすムーディーさ、更にオーストラリア産バンドならではの音使いやエキゾチックなフレーズ、そしてリズミックなプレイ、メロディアス・ロックやAOR等の小気味よい演奏スタイルや洒落た音楽要素も上手くMIXし、それらを一層モダンにシャープに洗練させ磨き上げた21世紀型モダンUSシンフォ系サウンドだった訳だが、久しぶりに届けられた本作は一聴して即前作以上にヘヴィ・タッチでアタック感の強いサウンドなのにまず驚かされるが、様々な音楽要素を伺わすハイセンスなサウンドが複雑に交差し絶妙なアレンジを効かせて展開する楽曲の上で、US系バンドを思わす抜けが良くキャッチーなメロディと怒涛の勢いで押しまくる鉄壁のアンサンブルが炸裂する、正にファンが待ち望んでいた期待以上に痛快な仕上がり具合の紛れもない傑作だ! 研ぎ澄まされた技術と前進する情熱、そして高い理想という三つの糸を巧みに組み合わせ洗練されたメロディを紡ぐ匠の技はさらに完成度と凄みを増し、疾走感あふれる演奏パート、不意を突く切り返しやファンキーでグルヴィーな緩急に富むリズム展開、ギターとキーボードの絶妙なコンビネーションと美麗なハーモニー、確かなテクニックに裏打ちされた高度な演奏の応酬が生み出す圧倒的な緊張感と爽快感、軽やかに歌い上げる瑞々しくしなやかなヴォーカルと分厚いハーモニー・ヴォーカルが渾然一体となって目まぐるしく万華鏡の如く千変万化し、クラシカルで荘厳な壮大さ、叙情香るセンチメンタルな美旋律、そして豊富なアイデアとロック・スピリット溢れるダイナミズムを随所に効かせつつ、ソリッドなHR風パートと技巧的なプログレ風パートの静と動のエレガントな対比が優美なコントラスを次々と描き出す楽曲群はどこを切り取っても劇的な上に宝石の様に眩く輝いていてケチのつけようが無く、文字通り最先端へ進化を加速させるモダン・シンフォ・サウンドを体現していると言えよう。 鍵盤奏者主導のバンドに有り勝ちなオーケストレーションを駆使しキーボード・サウンドの洪水を引き起こし、華やかなシンセと小気味よいピアノばかり耳につく軟弱な典型的印象は皆無で、まずリズム隊のアグレッシヴでパワフルな塊のようなズ太いボトムが強調されたHMにも通じる硬質な感触が大きく、ギタリスト Cam Bloklandのリードヴォーカル曲や Cam Bloklandと Shaun Holtonのデュエット曲で2人の歌声が生み出すコントラストなど情報過多で一辺倒に成り勝ちなシンフォ系楽曲に印象の差異やバラエティ豊富さを感じさせたり、フルート、サックス、ヴァイオリン等のゲスト奏者が奏でる格調高く上品で艶やかな音色も加わるだけでなく、ファンキーでグルーヴィーな雰囲気とドライヴ感ある巧みでメロディアスなベースやダークなトーンでエッジあるリフで攻めるパートなどメタリックで硬質なタッチのギター・サウンドがしっかりとバンドサウンドを引き締めており、シンフォニック・ロックのみならずユーロ・メロディアスHRやUSプログHMファンな方々でも間違いなく楽しめる事請け合いの充実作であります。 と、ここまで手放しで絶賛しておいて残念な事が一つありまして、前作でも述べましたがこれだけ素晴らしい作品をリリースして来ているSOUTHERN EMPIRE、未だに国内盤のリリースが見送られ続けているのが何故なのか納得いきません。 これだけテクニカルでシンフォニック、その上キャッチーでメロディアスなサウンドなのにユーロ圏のバンドのような重厚さは程々でスタイリッシュに纏め上げられ、それでいてポップな歌モノな印象も残るモダン・ロックサウンド、尚且つ米国産バンドのようなドライさや軽薄さは皆無に仕上げられているのは生半可なセンスやアレンジ力、そしてコンポーズ能力では不可能なのが明白なのに、SPOCK'S BEARDやTRANSATLANTIC、MOON SAFARI等が国内盤リリースされているのなら、同じ客層に絶対に訴求するのに何故リリースが見送られ続けるのか…(ツд`) 近い将来、きっと国内盤がリリースされるであろう本当に才能のあるバンドであり、演奏の強みを音楽で強調する術を心得ている期待の新鋭バンドとして、是非皆さんも今は外盤を購入して彼等を応援してあげて欲しいですね。 また、前作に引き続き多国籍なメンバーが名を連ねるTHE SAMURAI OF PROGからヴァイオリン&フルートを操る Steve Unruhがゲストに招かれアルバムに華を添え、華麗にして艶やかなプレイを披露しているのも朗報であります。 既述のバンド名にビビッと来た方や、UNITOPIAファンは無論の事、USプログHMファンやユーロ・メロディアスHR好きな方なんかにも是非お薦めしたい一枚ですので、ご興味あるようでしたら一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。 Track List: 01. Reaching Out 02. Face The Dawn 03. Hold On To Me 04. When You Return 05. Moving Through Tomorrow 06. White Shadows 07. Butterfly SOUTHERN EMPIRE Line-Up: Shaun Holton (Lead & Backing Vocals) Cam Blokland (Electric & Acoustic Guitars、Lead & Backing Vocals) Jez Martin (Fretted & Fretless Bass) Brody Green (Drums、Hand Percussion、Ridiculously High Backing Vocals ...again!) Sean Timms (Keyboards、Programming、Lap Steel Guitar、Backing Vocals) With: Danny Lopresto (Backing Vocals、Guitar) Steve Unruh (Violin & Flute :THE SAMURAI OF PROG) Adam Page (Tenor Saxophone) Marek Arnold (Soprano Saxophone) Lisa Wetton (Percussion、Narration on Track 4) Amanda Timms (Flute) #
by malilion
| 2023-11-26 19:17
| 音楽
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