ネオ・プログレ系+80年代USプログハード系サウンド=ワンマン・シンフォ・プロジェクトNOT OTHERWISE SPECIFIEDが新譜をリリース!

c0072376_16533334.jpgNOT OTHERWISE SPECIFIED 「Deadweight」'19

08年から活動を開始し、11年5月にデビューアルバムをリリースしてからこれまでにアルバム一枚とシングル一枚(GENESISの『Dance On A Volcano』のカバー)をリリースしている Craig Kerley率いるUSA産シンフォ・バンドの自主制作3rdがリリースされたのでご紹介。

ヴォーカル、ギター、キーボード、ベースをプレイするマルチ・ミュージシャン Craig Kerleyを中心に多数のゲストを迎え制作するワンマンバンド体制に変化はなく、デビュー作から前作までギタリスト Jason Rowlandがヘルプで参加していたがその名は本作には見当たらず、複数のベーシスト、複数のドラマー、そして新たなギタリストをゲストに迎え本作は制作されている。

所謂ネオ・プログレ系サウンドとKANSAS等の80年代USプログハード系サウンドをMIXし、今風にモダンにアップデートしたサウンドを提示する Craig Kerleyではあるが、『他に分類されない』『他に特定されない』という意味の『NOS(not otherwise specified)』という大仰で孤高感タップリな中二病臭いバンド名とは裏腹に、DREAM THEATER、GENESIS、PINK FLOYD、SPOCK'S BEARD等のバンドの影響がそこかしこで見え隠れしており、やはり1人バンドだとどうしてもその手の露骨に影響を受けたバンド群のサウンドカラーが透け見える弊害は拭い切れていない。

とは言え、1人シンフォ・プロジェクトにしてはかなりバンドっぽいサウンドなのは確かで、大仰なネオプログレ風キーボードが活躍するのを始め、プログレやポンプ定番のヘタウマ・ヴォーカルではないしっかりハイトーンもカヴァーする歌唱力は自主制作盤としては、もう少し頑張れば極上のB級シンフォ・サウンドへ手が掛かる程のハイクオリティな出来なのは間違いないだろう。

ただ、USA産にしてはかなりメロディに哀愁が漂う所謂ユーロ系シンフォ指向サウンド(デビュー作当時を思えばかなりメタリックさは減退している)だが、やはりどうしても1人多重宅録な弊害かサウンドのスケールがこじんまりしているのと、サウンド全般がドライで硬く、ナチュラルな響きや、薫り立つような艶やかさは少ないのが難点と言えば難点か。

テクニカルなプレイをしっかりフィーチャーしつつ、5、6分台にコンパクトに纏め上げられた楽曲や、短いながらもSE等をイントロに使って壮大なスケール感を演出しようとしている努力は分かるし、全体的にユーロ系指向なサウンドっぽいのに、USA産特有なエネルギッシュな鍵盤弾き倒しプレイや、ヘヴィでエモーショナルなギタープレイを織り交ぜたサウンド、そして Craig Kerleyの熱唱を聞くまでも無く、どうにもパワフルでハードなサウンドの側面が勝っているのと“圧し”が強い為に“引き”が生み出す叙情感やドラマチックな楽曲展開等が弱く、アルバム全体を通して聞くとまだまだ今一つな仕上がりに思え、そういった点は少々残念だ。

Craig Kerleyのミドルレンジ主体な歌声は声質を含めて悪くないパフォーマンスだし、楽器のプレイも全て平均点以上なので、是非とも固定メンツを迎えてちゃんとしたバンド体制で次なるアルバムは制作して欲しいものであります。



# by malilion | 2019-03-20 16:47 | 音楽 | Trackback

オランダが誇るメロハー界の救世主TERRA NOVAの7thアルバムをご紹介。

c0072376_10104508.jpgTERRA NOVA 「Raise Your Voice」'18

Fred Hendrix(Vo)とRon Hendrix(Key)の兄弟率いるオランダ産メロハー・バンドの至宝、TERRA NOVAの約3年ぶりとなる通算7枚目のニュー・アルバムが去年末にリリースされたのを、ちょい遅れ今頃GET!

前作が巷では不評だった模様ですが、個人的にはAOR要素多目な味付けの楽曲に不満はなく、トラック目一杯に音を詰め込んだ軽快でスピーディでキャッチーなガッツリ造り込まれた系メロハー好きな諸兄達の失望を買っただけだったと思っとります。

で、続く本作はどうなのかと言うと、大まかに言って前作のAOR風味増し増しから初期のキンキン・メロハーっぽい作風へ一聴して戻っているように聞こえ、これはこれでデビュー当時から彼等を応援している日本人好みな哀愁の美旋律と爽快なコーラスが炸裂するキャッチーでハード・ポップなサウンド好きな方達を満足させる方向性と言えるでしょう。

ただ、以前と全く同じ、と言うわけではないようで、個人的にはちょっとそこに違和感のようなものを感じるんですよね…

前作の悪くない出来のアルバムのサウンドを聞いて、何故Frontiers Recordsが彼等と契約を見送ったのか疑問だったのですが、前作に引き続きMelodic Rock Recordsからリリースされた本作を聞いて、その理由が少し見えてきたように思えます。

のっけからSCORPIONSっぽいシンプルなリフで始まる『Raise Your Voice』にちょっと驚かされるが、その後はいつもの定番な分厚い爽快コーラスとメロディアスでキャッチーな歌メロが炸裂し、ファンならずとも一安心と言ったところ。

ただ、アルバムを聞き進めるうちに感じる、なんと言うかワイルドさ増し増しなギターのトーンのせいなのか、歌メロのせいなのか、バッキングコーラスの導入のされかた故か、楽曲全体がシンプルでストレートなイメージで、以前のようなユーロ・メロハー特有のウェットで一癖も二癖もある素晴らしい楽曲展開と際だった美しいメロディの交差が生み出すマジックのような感動が感じられない、全体がドライなサウンドに纏め上げられているのに気づき、そこが少々残念ではあります。

上手く言い表せないけれど、Frontiers Records所属時までの楽曲が上質なワインのように熟成された豊かなメロディを感じられたとしたら、今回の楽曲は熟成不足な感が否めないかな、と……

それ以外にも、FOREIGNERっぽいメロディの楽曲や、VAN HALENっぽい豪快さを感じさせる楽曲、そしてDEEP PURPLEっぽい雰囲気のある楽曲等々、80年代っぽい雰囲気が本作のそこここから感じ取れ(ちょっと古いサンプルなシンセのせい?)て、キンキンのハイトーンが炸裂する緻密に造り込まれた00年代爽快メロハー・スタイルから、どこかナチュラルなサウンドの響きを感じさせるシンプルでストレートなアメリカンHR要素多目なスタイルへ楽曲の色づけが成されている風に思えるのが違和感の原因なのかもしれない。

強引に言うと、Frontiers Records所属時までユーロ・メロハーな00年代風の方向性なウェット・サウンドだったのが、Melodic Rock Records所属になってからアメリカンな80年代風の方向性なドライ・サウンドへ移行したイメージ、と言えば伝わりますでしょうか?

勿論、そんな単純にサウンドがコロっと変わった訳ではなく、以前からUSロック風味もありましたしAOR風味も感じられた彼等のサウンドですが、本作におけるユーロテイストの減退、そして代わりに手に入れた歯切れ良さとストレートな楽曲のパワフルな躍動感は絶対に意図的だと思うのです。

総じて日本人受けするメロハー・サウンドなのは間違いないのですが、ちょっとした楽曲の色づけや方向性の違いが個人的に少々以前との差を感じて違和感を覚える、と言うだけで、コレはコレで全く問題なく受け入れられる爽快キャッチーサウンドなので良いんですけどね…

これまでのユーロ・メロハーサウンドに加え、JOURNEY、VAN HALEN、STYX、そしてCHICAGOなんかの要素までがチラチラ見え隠れするUS市場向けな本作のサウンドは、以前の造り込まれたメロハー・サウンドがお好みの方には少々ナチュラルでストレートな響きが先行して聞こえてご不満かもしれませんが、コレはコレで決して不味い出来ではないと思いますので、是非に前作で彼等に失望した方も今一度チェックしてみて損はないと思いますよ?

因みに日本盤と外盤ではボーナストラックが違うので、音源マニアの方は輸入盤も見逃すこと無くチェックしましょう。


# by malilion | 2019-03-12 10:03 | 音楽 | Trackback

淡く優美な叙情派イタリアン・シンフォサウンドの職人、ERIS PLUVIAが新譜リリース!

c0072376_22215184.jpgERIS PLUVIA 「Tales From Another Time」'19

寡作で地味な存在ながら至高の叙情派イタリアン・シンフォ作をコツコツとリリースし続ける彼等の、3年ぶりとなる5th(公式には4thだろうけど…)がリリースされたので即GET!

サックス入り編成5人組でデビューしたものの一般的なユーロ・プログレ作でも定番イタリアン・シンフォ作でもなくアコースティカルで穏やかな、プログレお約束なキーボードが活躍しないサウンドが災いしたのか間もなく解散し、再結成作でフロントマンとドラムスに新メンバーを迎えたりとアルバム毎にメンツが流動的な彼等だったが、久しぶりの本作はメンツの変動は無く Alessandro Cavatori[Serri](G)と Marco Foralla(B、Key、Ds)のオリジナルメンツの2人を中核に、前作から参加の Roberta Piras(Flute)嬢と Roberto Minniti(Vo)という2人の新メンバーが本作でも名演を聞かせてくれている。

楽曲パートの殆どを Marco Forallaが一人で全てこなす体制に変化はなく、前作からダークでヘヴィなメタリック・ギターとシンフォなキーボードが活躍し、ヴォーカルの歌モノ・パートが存在する所謂一般的なユーロ・シンフォ・ロックな作風へ移行した訳だが、本作ではメタリックさが幾分弱まり初期のようなアコースティカルで穏やかな音色を紡ぐギターと淡く冷ややかなフルートが軽やかなメロディを奏で、イタ公らしからぬアッサリ目なユーロ・シンフォ風味のシンセやオルガンがバッキングで密やかな音を刻んで楽曲を飾り立てたり、GENESISチックな華やかなキーボードの音色やファンタジックなシンセサウンドが楽曲を穏やかに包み込んで所謂一般的なユーロシンフォものに近い荘厳で壮大なスケールの大きさを演出したりと、CAMELとPINK FLOYDをMIXさせてダークな情感をまぶしたような、暗闇の中で仄かな炎が揺らめく風なアンビエントな寂寞感も漂う一種独特な音世界を織り成しつつ、ジェントリーなヴォーカルが力む事なく語りかけるような歌声を聞かせる作風へさらに変化した模様だ。

初期風なアコースティカル要素と、一般的シンフォ要素をMIXしたのが前作のサウンドだったように思うが、そこへさらにゲストの女性ヴォーカルの可憐な歌声も交えて華やかも感じさせつつ、淡い霧がかかったような深いエコーと柔らかなシンセの音色で幻想風味を漂わすダークな妖しさが増したサウンドは全体的にイタリア的と言えるかもしれないが、サウンドの耳触りがダーク系イタ公雰囲気シンフォものと全く異なっていて、鄙びたノスタルジックな味わいを演出するアコースティカルな楽器の織り成す音色が彼等ならではの特徴と言えるかもしれない。

個人的には、一般的シンフォ要素が増えれば増える程に彼等の特色である土着的な香り漂うアコースティカルなサウンドの持ち味が軽減されて好ましくないように思えるのだが、本作では上手い具合にユーロシンフォ要素に初期の作風を組み込んで、さらに一歩進んだ優しげな陽だまりの隅でひっそりとダークな闇が渦巻くような、なんとも言えぬ陰鬱な毒が潜んだような東欧シンフォものっぽい妙に気になる物憂げさも醸し出すサウンドへ進化しているのが好ましく思いましたね(*´ω` *)

声質のせいなのか、英詩を歌っているからなのか、 Roberto Minnitiのヴォーカルからはイタリア臭はそれ程せず、なんだか妙に80年代UKポンプバンドで良く聞けたヘッポコヴォーカルっぽく(失礼!)聞こえるのも、モダンでありながら妙に懐かしさを感じさせるバンドサウンドとのギャップになって面白い効果を生み出しているようにも感じるのは私だけでしょうか?

PINK FLOYDっぽいロングトーンのエモーショナルなギターや、サントラ風な演出効果を生んでいる雨音や雷鳴等の各種効果音、そしてストリングスの艶やかで深みある音色など、聞き込む程に以前には聞く事の出来無かった新しい要素が浮かび上がっては消えていき最後までどこへ行くのか行き先が見えず焦らされ続けるような、実に興味深い方向へサウンドを進化させた事が分かります。

ただ、上手く言葉にして彼等のサウンドを表現出来ぬ味わい深く独特なそのサウンドは、正直一般的なシンフォ・ファンやプログレ・ファンに訴求するのは難しいように思えるのも事実でして、出来る事ならば精力的な活動を絶やさず続けて欲しいものであります。

それにしても前作といい今回の安っぽいスラッシュメタルみたいなチープなイラストのジャケはどういう事なんスかね…いくらインディでももうちょいなんとかなるやろ…('A`)

もうちょいセンスあるモダンなジャケでないと、彼等の独特なサウンドを現しているように思えないし、ぶっちゃけこの劣悪なジャケで敬遠する人も多いと思うんですが…(汗




# by malilion | 2019-03-10 22:15 | 音楽 | Trackback

英国モダン・シンフォJADISが未発音源集の第二弾をリリース!

c0072376_20362365.jpgJADIS 「Medium Rare II」'19

頑固一徹、流行に惑わされず己の道を突き進む Gary Chandler(Guitars、Lead & Backing Vocals、Keyboards、Arrangements、Production & Mixing)率いる英国メロディック・シンフォニック・バンドJADISの18年LIVE音源や、Reworked、Remixed、未発音源やカヴァー曲等を収録したレア音源集の第二弾が、『Medium Rare』'01 以来18年ぶりにリリースされたので即GET!

完全にコレクター向けアイテムながら、Gary Chandlerの爽快感あふれるクリアーでキラキラとした美旋律を紡ぐギターの圧倒的な存在感と、持ち味であるシンプルでストレートでありながら他のUKポンプ勢とは一線を画していたキャッチーでブリリアントなポップサウンドや英国叙情香るドラマティックなシンフォニック・ロックな楽曲等、フュージョンチックなモダン・サウンドに乗った軽快でスタイリッシュなサウンドセンスをタップリ堪能出来るレア音源集だ。

最新LIVE音源を聞けば旧曲も今のJADISサウンドにアップデイトされているのが分かり、それに加えて現在のベーシスト Andy Marlowのプレイだけでなく、半数はオリジナル・ベーシストの John Jowittのプレイした音源で、脱退したとは言え未だにバンドと良好な関係であるのが窺えるのが嬉しい。

既発音源のリミックスや手直し、さらにバラバラなLIVE音源をひとまとめにしたものだが一貫してモダンでハイセンス、そして高い技量が窺えるコンパクト・サウンドで、爽やかに歌い上げる歌モノ・ハードポップ・バンド的な実にポピュラリティの高いサウンドだと再認識させてくれる。

うーん、ホントに Gary Chandlerはギターと歌が抜群に上手いですねぇ♪(*´ω` *)

ともあれ、ファンは即買いなのですが、一般UKシンフォ・ロック好きな方にはちょっと敷居が高いかもしれないけれど、彼等の入門盤として本作のサウンドをチェックして、バックカタログを辿るのもよろしいのではないでしょうか?

Track List

01.There's a light
Recorded during the band's brief yet successful Return to Gigging in 2018.

02.Truth from the lies
A New Unreleased Track
オリジナル・キーボーディストである Martin Orfordが復帰(何度目!?)した16年の最新作『No Fear Of Looking Down』リリース直後に作られた未発新曲。

03.No Sacrifice
Edited & Remixed with Replayed Drums & Keyboards.

04.What kind of reason
Remixed & Edited version of the piece from Fanatic.

05.Standing still
Remixed version of the piece from Photoplay.

06.Photoplay
A completely Revamped, Reworked and extended version of this instrumental from Photoplay, which now has Drums & Bass added.

07.Daylight fades
Recorded Live in 2018.

08.Hear us - End section
Recorded Live in 2018.

09.Animated
A New & Unreleased Instrumental Track.

10.Your own special way
A cover of The GENESIS song from Wind & Wuthering.
(GENESISのカヴァーで未発スタジオ音源)

11.Comfortably numb
A cover of the PINK FLOYD classic recorded live in 2001. This is Remastered from Alive Outside CD.
(PINK FLOYDのカヴァーで既発音源ながら今回新たにリマスターを施されている)


# by malilion | 2019-03-09 20:30 | 音楽 | Trackback

ストレートなアメリカンHR作、STEELCITYのデビュー作をご紹介。

c0072376_18363550.jpgSTEELCITY 「Fortress」'18

イタリアのVIANAの新フロントマンと言う事で紹介した Bryan Cole(Vocals)がもう一つ兼業しているバンド、Mike Floros(Guitars、Backing Vocals)率いるUSA産オハイオの4人組アメリカンHRバンドのデビューアルバムもついでにご紹介。

プロデュースはメロディアスHR系愛聴リスナーならご存じな Johnny Lima、所属レーベルがKivel Recordsと言う事で、アルバムの音を耳にする前からある程度サウンドが読めてくるのではないだろうか?

しょっぱなのブライトでメロディアスな歌メロにサビの分厚いハイトーンコーラス、コンパクトで爽快なストレートにアメリカンHRな楽曲、そしてテクニカルなリードギターをピロピロ弾きまくるという、ちょっと初期STRYPER風なサウンドがUSメロハー好きな方にもきっと受けがイイに違い無いサウンドで期待値がメチャ上がったのですが、フロントマンの Bryan Coleがここぞとばかりに耳を劈くハイトーンを熱唱するスタイルを見るまでも無く、明らかに80年代風アメリカンHRをベースにしたバンドサウンドにとんでもない個性や特徴がある訳ではないが、気持ち良く最後までアルバムが聞ける彼等のサウンドはメロハーと言うよりもカラっと爽快で妙な小細工無しの豪快ストレートなUS産80年代リヴァイバルHRサウンドと言った方が近いかもしれない。

実際、分厚いコーラス多目なキャッチーな楽曲よりも、乾いた埃っぽい南部の香りするアメリカンHR風な楽曲だったり、アーシーなギターが大活躍する渋めな楽曲、さらにお約束の女性バッキングコーラス多目な鄙びた場末の酒場でローカルバンドが演奏してるかのようなゆるぅーい楽曲等々、基本的に目新しくも無い80年代に持て囃されたアリーナHRサウンドがアルバムの大半を占めていて、唯一彼等の個性とし光るのが Mike Florosの弾きまくりなリードギターの存在と言う事になるが、それにしたってテクニカルなプレイの競技会や見本市みたいになっていた80年代当時の華やかで超絶技をひけらかしていたギタリスト達と比べて地味なプレイでしかないのが何とも…('A`)

駄作ではないが凡作には違い無い、という印象しかないのが偽らざる感想ですかねぇ…

こんな事言っておいてなんですが、無愛想なアルバムジャケ(80年代風狙うならパツキンの巨乳オネイチャン登場させればイイのに…)に、これまた無味乾燥なバンド名と、ちょっとスタート時点で損している気がするし、一発シングルヒットが出ればスルスルと苦も無くメジャーシーンへ進出していけるんじゃないかと思えるような、そんなストレートなアメリカンHRサウンドは妙な嫌味や癖が無く、万人向けなロックサウンドとも言えるかもしれない。

因みにアルバム最後の楽曲『Back On The Streets』は Vinnie Vincent INVASIONのカヴァ-となっており、この選曲を見ても Mike Florosがどういった音楽的バックボーンを持っていて、バンドが目指すサウンドの方向性はどこなのか、というのが窺えると言えるだろう。

今現在は Bryan Coleの絶品な歌唱スキルのお陰でC級へ落ちていないB級ミドルクラスなアメリカンHRサウンドなのは確かだが、楽曲の質の向上や Mike Florosの意識が楽曲至上主義へ変化すれば、普通に良作メロハーや良作アメリカンHRをリリースして来そうなポテンシャルは秘めていそうなので、次なるアルバムでどういった方向へサウンドを発展させるのか興味深く見守っていたい。

ストレートでキャッチーな典型的アメリカンHR好きな方や、GIANT、SURVIVOR、PRIDE OF LIONS、Peterik&Scherer等と同様に抜群に上手いヴォーカリストの歌いっぷりを楽しみたい方にお薦めなバンドではありますので、ご興味ある方はチェックしてみてもよろしいのではないでしょうか?



# by malilion | 2019-03-05 18:28 | 音楽 | Trackback

次世代北欧メロハーの星! ARIONの2ndアルバムをご紹介。

c0072376_20103966.jpgARION 「Life Is Not Beautiful」'18

フィンランド産メロディックHMバンドの前作から4年ぶりとなる2ndアルバムがリリースされたのを、半年遅れてでGET!

正直、ここ日本では北欧メロディックHM系バンドは80年代の昔からマイナーどころからデビュー間もない新人インディ・バンドまで、ともかく『哀愁のメロディと透明感あるキャッチーささえあればOK!』という感じで『なんでコレが国内盤リリース!?』と我が目を疑うC級バンドまで青田買い状態でリリースされて来た歴史(ジャーマン系も同じ流れだなぁ…)があるのをメロハー好きな諸兄なら良くご存じな事でしょう。

ですので『有望株な北欧メロディアスHMバンドの新人がデビュー!』と、言われても北欧系メロハーHMに食傷気味な国内リスナーや昔からの耳の肥えたファンならば、なかなかSTRATOVARIUSやSONATA ARCTICA級のヒットを放つ新人の登場は難しいと予想するし、ぶっちゃけデビュー作はヴォーカリストの力量が悪くはないが特別良くもない、という没個性的な優しい歌声だった事もあって、その他大勢のマイナー北欧メロハー・バンドの新人の凡作の一つ程度にしか思っておらず記憶の彼方へ消えかけていた彼等なのですが、本作2ndで“大化け”したとの噂を小耳に挟んで(遅っ!)慌てて今頃購入した次第であります(汗

STRATOVARIUSの Matias Kupiainen(G)の実弟、Topias Kupiainen(Ds)が在籍している事でデビュー当時は注目を集め、その兄のプロデュースの元、歌詞の面で元SONATA ARCTICA、現CAIN'S OFFERINGの Jani Liimatainenの協力を得て楽曲制作を進め、新人としては恵まれ過ぎな環境で3曲入りデビューEP『NEW DAWN』'13 をリリース、それと前後してフィンランドでのバンドコンテストEurovision予選にエントリーし、この時のパフォーマンスを観たSpinefarm Recordsの創始者で、現在はRanka Kustannusレーベルを率いる Riku Paakkonenの目に止まり契約、そのままデビューアルバム『Last of Us』'14も制作と、鳴り物入りでデビューしたのも束の間、まさかの即来日決定でLOUD&METAL ATTACKへ出演と、2011年にフィンランドはヘルシンキにて Topias Kupiainen(Ds)と Arttu Vauhkonen(Key)を中心に結成され、順次 Gege Velinov(B)、Iivo Kaipainen(G)が加入し、ARIONとバンド名を決め、最後に Viljami Holopainen(Vo)が加わり編成が固まって以来、本当に新人(デビュー時にメンバー全員がティーンエイジャーだった!)としては破格の待遇と順調な活動を続けて来た彼等だが、15年の夏にフロントマン Viljami Holopainenが脱退と初めてのメンバーチェンジが勃発。

しかし、ここでも幸運に恵まれた彼等はフロントマン選びが難航する事なく、CONSTANTINEなるテクニカルHMバンドでフロントマンを務め既に三枚のアルバムをリリースしたキャリアを持つ Lassi Vaaranen(Vo:CONSTANTINEと兼業)を新たなフロントマンへ迎え入れ、バンドはLIVE活動しつつ新作へ向けての制作をスタートさせる。

前任者の幾分垢抜けぬ北欧マイナーHM風な歌声と至らぬ歌唱スキルと違い、既にキャリアを積んでいるだけあってアグレッシブでエモーショナルな堂々とした歌いっぷりの Lassi Vaaranenの歌声が起爆剤となったのか、デビュー時と同路線なエピック・スタイルのシンフォニックなメロディック・パワーHMにさらに多様な音楽要素を加えて進化させ、スケールの大きな楽曲と抜群のキャッチーさを誇る新曲をズラリと揃えた、アルバム二枚目の新人とは思えぬ圧巻の仕上がりな新作を約4年ぶりにリリースとなった。

既にアルバムをチェックされた方や北欧系マニアな方はご存じかと思いますが、まるでポップグループの如く幾度もシングル先行でデジタル配信オンリーの音源を発表するなど、アルバムオリエンテッドな作風を尊ぶメタルヘッド野郎のセオリーに囚われる事なく、ニュージェネレーションらしく時流も意識しつつ柔軟にあらゆる要素を取り込んで己の糧にし、怖い物知らずなヤングライオンの如くどこまでも貪欲に突き進む姿勢が本作で一層に浮き彫りになっていて、フロントマンの交代劇を大いなる飛躍へのチャンスに変え“次なるビックシング”だと期待させるに足る新人バンドへ生まれ変わったのは間違いありません!('(゚∀゚∩

特に今回は、新譜に先駆けてデジタル配信したシングル『At The Break Of Dawn』がAMARANTHEの Elize Ryd嬢をゲストヴォーカルに迎えた爽快でキャッチーなスピードチューンが既にダウンロードランキングで高セールスを記録と、新人バンド達が喉から手が出るほど欲しいシングルヒット曲を早くも掌中に収めたにも関わらず、さらに批判を恐れる事無くデジタル風味増し増しな『At The Break Of Dawn』のリミックスバージョンもリリースという大胆不敵な挑みっぷりは、失うモノが無い新人バンドならでは。やっぱ新人は活きが良くっちゃネ!

この目覚ましい躍進は、Matias Kupiainenをはじめ Riku Paakkonen等という優秀なブレーンがバックアップしているが大きいのだろうが、その期待に応える事が出来る高いポテンシャルを彼等が元来持っていたのと、既に名声を確立している有名所を招くという強かな(コネがないインディバンドは恨めしいだろうなぁ…)戦略を受け入れる柔軟な姿勢も彼等の成功を導いているのは間違いないでしょう。

北欧メロハーらしいキャッチーなメロディ・ラインに、北欧専売特許のキラキラしたキーボード・アレンジ、そしてハードエッジを効かせつつメロディ第一な美旋律を奏でるギター・ワークスと、メロハー好きなポイントはバッチリ押さえ、さらにシンフォニックHM系の影響も伺わすアレンジやエピカルな楽曲に相応しい壮大なスケール感を感じさせ、北欧メロハーお約束の疾走感あるチューンも健在で、それらのサウンドが総じてモダンなテイストを盛り込んだ音楽性と耳障り良いキャッチーな楽曲に無理なく収まっており、前作に引き続き裏方で Matias Kupiainenの手腕が遺憾なく発揮されているのは間違いなく、デビュー作以降のLIVEでの経験が活かされたのか Topias Kupiainen(Ds)と Iivo Kaipainen(G)による新人離れしたソングライティングのセンスとコンポーズ能力には所謂臭メロなるマイナーな北欧インディHM臭が皆無で、近年デビューした同系新人バンド群の中で間違いなくトップ・クラスのクオリティを誇る洗練されたサウンドに仕上がっている(*´ω` *)

バンドの中心人物の1人がドラマーという事もあってリズムアプローチが単調でなく、パワメタ系にしては手を変え品を変えと色々創意工夫をしている点や、もう1人の中心人物であるキーボーディストの活躍の場も大々的にフィーチャーされ、楽曲の表現を彩るキーボードの音色や煌びやかなシンセサウンドに所謂普通のシンフォ系やパワメタ系では聞けぬモダンな音色が持ち込まれている点もARIONのサウンドを独特なものにしている要因ではないかと個人的には思っとります。

とは言え総じてサウンドの完成度は高いものの独創性という点で言えばまだまだでSONATA ARCTICAやSTRATOVARIUS等の先輩バンド達からの影響や借り物的サウンドは隠しようもなく、他の誰でもない確固たるバンドサウンドを確立するには至っていないが、それでもアルバム二枚目にしてこのハイレベルなサウンドをクリエイトしている時点で彼等が非凡な存在である事は間違いないでしょう。

同郷の先輩バンドSTRATOVARIUS、NIGHTWISH、SONATA ARCTICAなどの荘厳でシンフォニック、そしてスピーディーなHMがお好きな方は勿論、今や中堅になりつつあるBATTLE BEAST、BEAST IN BLACK等がお好きな方にもお薦めな、新世代北欧メロハー・バンド最右翼候補な彼等の新作、是非にチェックしてみて下さい。



# by malilion | 2019-03-04 20:06 | 音楽 | Trackback

イタリア人ギタリスト Stefano Viana率いるVIANAが、華麗に生まれ変わってメロハーの良作をリリース!

c0072376_11502295.jpgVIANA 「Forever Free」'19

イタリア人ギタリスト Stefano Viana率いるVIANAが、アメリカ人シンガー&ギタリスト&プロデュース業の Bryan Cole(GIANT、STEEL CITY、ソロ)を新たに迎え制作した、2年ぶりとなる待望の2ndアルバムがリリースされたのを、ちょい遅れてGET!

いやー、このバンド名を最初見た時、メロハー・バンドとは違う印象を持ったんですよねぇ…ヴィアナって名前を聞いて、ブラジルのサグラドを思い浮かべるのはプログレ好きだけですよね。ハイ、関係ない話スミマセン(汗

幾度も挫折しつつアルバム制作を決して諦めなかった苦労人 Stefano Vianaの念願であったデビュー作は、イタリアン・メロハー界の重鎮 Alessandro Del Vecchio全面協力の元、イタリアのトップ・ミュージシャン達により制作されたプロジェクト作であったが、本作では前作に引き続き参加となった美貌のベーシスト Anna Portalupi嬢(B:HARDLINE)とキーボーディスト Pasquale India、そしてギタリスト Francesco Marrasのイタリア人ミュージシャン達に加え、新たに Terry Brock(Vo:STRANGEWAYS、THE SIGN、ex:GIANT、etc...)の協力も得て制作されており、前作でも感じられたUSメロディアス・ロック色がより強調された爽快メロハー・サウンドとなっている。

逆に前作で感じられたウェットな叙情感や欧州的メロハー・テイストは弱まっており、これはどう考えてもSURVIVORの二代目フロントマン Jimi Jamisonっぽい雰囲気も漂わす歌唱に Mark Free(ex:KING COBRA、ex:SIGNAL、UNRULEY CHILD)のようなクリアなハイトーンがMIXされた歌唱スタイルな Bryan Coleのヴォーカルを念頭に置いて制作されたが故のサウンド変化で、粋の良いUS風のキャッチーなメロディアス・ロックと欧州風なウェット感あるメロディアスHRの良いトコ取りを目指した風な方向性は悪くなかったもののデビュー作の完成度を著しくスポイルしアルバムをB級メロハーに貶めていた濁り声シンガー Alessandro Del Vecchioが今回はヴォーカルを担当していない点(ミックスとマスタリングは今回も担当)も大きいからだろう。

まぁ、デビュー作はその Alessandro Del Vecchioの人脈フル活用で創り上げたようなものなので、何度もアルバム制作をしてリリースに至らなかった Stefano Vianaにしてみれば彼無しには完成まで漕ぎ着けなかったとの思いは強かっただろうし、プロデュースのみならず楽曲制作にも関わって無名のイタリア人ギタリストのデビュー作をあそこまでのレベルへ持って行った功績もあって Alessandro Del Vecchioのイマサンな歌声(ワイルドなHR系ならマッチしそうなんだけど…)をフィーチャーするのも致し方なかったかも知れないけど…

また、今作は前作と違って Stefano Vianaと Bryan Coleがアルバムを共同プロデュースしている点と、ベテラン・ヴォーカリストである Terry Brockをバッキングヴォーカルに迎え、その熟練した技術と経験(ヴォーカルパートのプロデュースは Terry Brock!)が活かされた為か、Bryan Coleの元々持っていたポテンシャル以上にボーカルアレンジメントやコーラスワークはデビュー作とは比べものにならぬパワフルさとキレ、そして美しく爽快なハーモニーの質が急激に上がっている大きな要因なのは間違いなく、2ndを恐ろしい程のハイレベルなメロハー作へ引き上げる事に成功している。

さらに、イタリアのインディレーベルからイギリスのEscape Musicからのリリースへ移籍と、着実な飛躍を遂げている点も見逃せないだろう。

前作は欧州風メロディアスHRをベースにUSメロディアスHR、さらにAOR要素等を巧みに取り込んだ興味深いサウンドであったものの、やはり Alessandro Del Vecchioのヴォーカル能力がその手のキャッチーでフック満載な売れ線メロハ-を歌うには十分でなかった為か Stefano Vianaのテクニカルで流暢なギターが所々で耳を惹くもののアルバムを繰り返し聞かせるレベルに達していなかった訳だが、クリアーで爽快感ある Bryan Coleのシャープな歌声を得た事によって、STARSHIP、WINGER、GIANT、BAD ENGLISH、SURVIVOR等に通じる80年代風の産業ロック&クラシックUSメロディアスHRサウンドな、如何にもアメリカンでカラッとした空気を感じさせるシンプルでストレートな美旋律が印象的な楽曲は、質、サウンド共に数段向上しており、誰が聴いても前作を遥かに超えるメロディアス作だと Stefano Vianaが自信満々に強く主張しているかのような快作で、メロハー愛好家は是非ともチェックせねばならぬ一枚と言えるでしょう。

ここまで手放しで褒めておいてなんですが、楽曲の方向性が産業ロック系に寄ったバランス重視型になった事もあって Stefano Vianaはクレバーにソツなくその方向性にマッチした実にツボを押さえた楽曲に映えるギタープレイをしているのですが、デビュー作で時折垣間見えた派手な弾きまくりというよなパートはすっかり姿を消してしまったのがちょっと残念ではあります。

ま、この方向性に進んだ方が間違いなく認知度は上がるし、活動範囲も拡がるだろうから大人な判断で賢明だと思いますけどね。

因みにスペシャルゲストで John Roth(G:WINGER、STARSHIP)が招かれ、鮮やかなソロプレイを数曲で披露している他、GIANTに関わりある Bryan Coleと Terry Brockがデュエットも披露しているのでメロハー愛好家は本作を見逃せませんね(*´ω` *)

歌詞からアレンジメントに至るまで、楽曲は美しいメロディーとブライトなハーモニーに徹頭徹尾満たされ、それでいてしっかりロック的なリズムとグルーヴのパワーも感じられる、それらが絶妙に調和したキャッチーでクラシックなAOR&USメロディアスHRの教科書的な本作は、隠し味的に若干ユーロテイストとウェットな叙情がメロディに仄かに感じられ個人的に大好物なサウンドなので、是非ともこの方向性のままメンツを変えず精力的な活動を続けて欲しいものであります。



# by malilion | 2019-02-28 11:34 | 音楽 | Trackback

イタリアン・メロハー PERFECT VIEWが待望の3rdをリリース!

c0072376_18541886.jpgPERFECT VIEW 「Timeless」'18

Francesco Cataldo(Guitars)率いるイタリアのキーボード入り5人組メロディアスHRバンドが4年ぶりとなる3rdアルバムをリリースしたのを、ちょい遅れてGET!

オリジナルのデンマークLions Pride Music盤が早々にソールドアウ(追加プレス無しって、あんまりだ!)で絶望していた去年末でしたが、こうして無事国内盤がリリースされ一安心であります。

もっとも、その国内盤もコノザマくらって延々レコードが届かないというフラストレーション溜まる状況に憤慨してたんスけどね…(#^ω^)ビキビキ

さて久々の新作だが、フロントマンとキーボーディストの交代劇が前作リリース後に勃発した模様で、本作までのリリースにこれだけ時間が掛かった理由となっている。

また、本作収録後にオリジナルメンツでもあったドラマー Luke Ferraresiも脱退して新ドラマー Davide Lugliを迎えた為に、現在オリジナルメンツはリーダーの Francesco Cataldoのみとなってしまった模様だ。

まぁ、メンツは変われど中心人物 Francesco Cataldoの目指す、JOURNEY+TOTOのサウンドをベースに哀愁の北欧フレ-バー(イタ公なんでちょいPURPLE臭もご愛敬)をふりかけたようなキャチーで透明感ある美旋律の数々が、程良くハードで程良くポップないい塩梅の何ともツボを突いてくるバランス感覚でまとめ上げられたデビュー作からの方向性に些かの変化もなく、やっと目指す方向性に相応しいメロハー路線にバッチリなクリアなハイトーンのパワフルなヴォーカリスト Marco Ciancioを迎えられた本作の出来を聞くに、個人的には初代フロントマンの歌声やその歌唱力には2ndで疑問を呈していただけにこのメンバーチェンジは大歓迎であります(*´ω` *)

大雑把に言って80年代リスペクトなサウンドである1st路線に戻ったと言えるのですが、キーボーディストが Pier Mazziniから Marco Tedeschiへチェンジしたせいか、これまで余り聞かれ無かったプログレ風なキーボードプレイやサウンドがバンドサウンドに大きく加味され、前作までAOR的なサウンドの役割を多大に担っていたキーボードパートに新鮮な変化が見られたのは予想しなかった嬉しい変化でした。

じっくり時間をかけて制作された事もあって以前にも増してクオリティの高い楽曲目白押しな本作ですが、前作でややヘヴィな側面が強調され過ぎたのを反省したのか1st同様に程々にエッジのあるリフやギターサウンドをメインにした、歌を中心に据えた親しみやすく耳に残りやすい美旋律は実に心地よく、適度にテクニカルなプレイやプログレッシヴ的ソロキーボードパートやバッキング等は隠し味程度に、Marco Ciancioのエモーショナルな歌声を最大限に活かす艶やかさある叙情サウンドは彼等の1stアルバムを気に入った方ならず、欧州メロハー系をお好みな諸兄なら即購入して間違い無しな一枚となっております。

アルバム毎にメンツが変わったり、イタリアでは苦戦を強いられているメロハー系バンドでの活動等、なかなかに先行きは安心出来ませぬが、是非とも安定したメンツでこのまま同一路線を突き進み、フック満載で叙情感タップリなメロハー・サウンドを届けて欲しいものであります。

あ、そうそう。国内盤発売はされましたが弱小レーベルからのリリースとなっておりますので、プレス数もそう多くないでしょうから即廃盤の憂き目に遭う前に興味ある方は早々にご購入される方がよろしいですよ。



# by malilion | 2019-02-23 18:49 | 音楽 | Trackback

北欧メロハーの期待の新星! WAKE THE NATIONSが本格始動作をリリース!

c0072376_17305123.jpgWAKE THE NATIONS 「Heartrock」'19

フィンランド産キーボード入り5ピースバンドによる2ndアルバムがリリースされたのをちょい遅れてGET!

このバンドでまず目を惹くトピックは、同じくフィンランドのB級マイナー・メロハー・バンドHUMAN TEMPLEのメンバー等が新たに立ち上げたメロハー・バンドだと言う事だろう。

HUMAN TEMPLEの今の所の最終作である12年作3rdでは、ギタリストとキーボーディストが頑張って美旋律を奏でているものの中心人物(バンド運営費的にもボス)であるフロントマン Janne Hurmeのヘッポコなヴォーカルのお陰で散々な出来だった訳だが、そのギタリストだった Risto Tuominen(Guitars、keyboards & Backing Vocals)がHUMAN TEMPLEにマッチせず(というか、ブチ壊されるのを避けた?)発表する機会のなかった楽曲を、HUMAN TEMPLEが活動休止となったのでソロアルバムを制作してリリースするというアイディアから出発し、HUMAN TEMPLEの Jori“Jorge”Tojander(Synthesizer)と、HUMAN TEMPLE参加前に Risto Tuominenがメンバーとして在籍しEPもリリースしていたグランジ風味なHRバンドVILLA SUCKAのメンバー Janne“Gekko”Granfors(Bass:同じくHUMAN TEMPLEのメンバー)、Krister Stenbom(Vocals)、Tuomas Pelli(Drums)等の手助けを借りて12年から制作を開始し、遂にWAKE THE NATIONSのデビュー作『Sign of Heart』が15年にリリースされる事になったのが始まりとなっている。

ギタリスト Risto Tuominenのソロ作から発展した事もあってこのデビュー作、HUMAN TEMPLEの Janne Hurmeや Krister Stenbomを含む総勢6名という複数のヴォーカリスト(エクアドル出身やクロアチア出身の欧米HM界では殆ど無名なヴォーカリスト達や Risto Tuominen自身も歌声を披露)を招いて制作されており、楽曲の出来もバラつきがあるし、お世辞にも極上のプロダクションとは言えぬ纏まりが今一つな出来だったものの、HUMAN TEMPLEでも聞けた叙情感あるウェットな美旋律が心地よい、イマイチ垢抜け切れぬ、だけどそこがマイナー作好きには嬉しいC級に片足突っ込んだB級メロディアス作でありました。

フィンランド国内でデビュー作は好評だったもののフロントマン不在な為、アルバムリリース・パーティーで一度限りの演奏を披露したのみでLIVE活動が出来なかったのを Risto Tuominenが考慮し、Krister Stenbomを正式にフロントマンに据えてデビュー作の制作に関わったメンツと本格的にWAKE THE NATIONSをバンドとして活動させ、やっと本作が届けられた次第であります。

待たされただけあって本作は、北欧メロハーらしい適度にメタリックなエッジを保ちつつウェットな叙情を湛えたキャッチーでメロディアスなナンバーがズラリと並び、フック満載で煌びやかだった80年代風メロディアスHRを元ネタに一ヒネリ加え、モダンなAOR風味も程良くまぶされた、定番だけど新鮮さも感じるメインストリーム寄りでバランス重視な楽曲の数々は、メロハー・ファンならずともHR愛聴者やH.E.A.T.やECLIPSEファンなら迷わず手を出しても問題ない良作だと断言出来る一作だ。

グランジ風味なHRバンドのフロントマンであった Krister Stenbomの歌声は中域メインなマイルドなヴォーカルスタイルがメインで、グランジ系定番の荒れた歌声やガナリ、グロウル等は一切聞かせずメロハー系に即した伸びやかで力強い歌声を披露しており、絶品の歌唱力とは言わないがその辺りを危惧している方には全く問題ない事をまずお伝えしておきます。

アルバムでは分厚いバッキングコーラスやハーモニーが重ねられていて Krister Stenbomの歌声や歌唱力が判然しないと思われる方は、動画サイトにLIVEでのまだまだイモ臭い(笑)ステージの様子がアップされているのでそちらを一度見て、彼の生の声を確認しつつ自分の好みとバンドサウンドが合うかどうかチェックしてみるのもいいかもしれない。

HUMAN TEMPLEの3rdで聞けたギターとキーボードが頑張って美旋律を奏でていたサウンドを覚えている方なら、本作で如何に Risto Tuominenがリフにメロディにと硬軟幅広くツボを押さえたギターを伸び伸びとプレイし、Jori“Jorge”Tojanderが華麗にして繊細な鍵盤捌きと楽曲をワンランクアップさせる洒落たアレンジやシンセの煌びやかな音色で水を得た魚の如く大活躍しているのかを聞いて、不遇だったHUMAN TEMPLE時代を思い起こして涙せずにはおれないでしょう(w

また、バンドメンツを固めてじっくり制作に時間を掛けたのも飛躍的に楽曲レベルがあがった要因でしょうが、何よりソングライティングに Soren Kronqvist(Joe-Lynn Turner、ONE DESIRE)や Thomas Vikstrom(THERION、TALK OF THE TOWN)を迎え、ミキシングとマスタリングはご存じ北欧ワーカホリックメタルマン Erik Martensson (ECLIPSE、W.E.T.etc...)によって行われ、プロダクションは Ilkka Wirtanen(RECKLESS LOVE、THE NIGHTS)が行うなど、楽曲制作やプロダクションを名うての北欧ミュージシャン等が全面的にバックアップしているのも間違いなく大きな要因と言えるだろう。

A級メロハー作とも言えないし、超個性的なサウンドのアルバムとも言わないが、H.E.A.T.やECLIPSE等の00年代北欧メロハー・バンドファンだけでなく、80年代を象徴するTOTO、JOURNEY、SURVIVOR等のUSアリーナロック・バンドのファンにもお薦めで、北欧HMの元祖EUROPEの香りや、モダンなAOR風味、そして欧州と英米のメロディアスHRのいいトコ取りをしたようなバランス良いキャッチーで爽快なサウンドは、メロハー・ファンなら確実にGETしておかねば後々で後悔するだろうマストアイテムだ(*´ω` *)


# by malilion | 2019-02-19 17:23 | 音楽 | Trackback

北欧プログ界の大物THE FLOWER KINGSの盟主 Roine Stoltが久しぶりのソロ作をリリース!

c0072376_17195185.jpgROINE STOLT'S THE FLOWER KING 「Manifesto Of An Alchemist」'18

90年代、突如として北欧から巻き起こったプログレ・リヴァイバルの一勢大力でありTHE FLOWER KINGSのリーダーであった元KAIPAのスウェーデン人ギタリスト Roine Stolt(Guitars、Vocals)は、その後長らく活動する事になる北欧プログレ・バンドTHE FLOWER KINGSを結成する前に数枚ソロアルバムをリリースしていた訳だが、そんな彼の05年『Wall Street Voodoo』以来13年ぶりとなる8thソロがリリースされたのを、ちょい遅れてGET!

そもそもプログレッシヴ・ロック・シーンに Roine Stoltがカムバックした記念碑的アルバムである94年リリースのソロ作『The Flower King』がその後にバンドTHE FLOWER KINGSへ発展した経緯を知っているファンならば、今回の『King』の後に『S』が付いてないソロアルバムのこだわりの名称を見てニヤリとするはず。

Roine Stolt自身は Tomas Bodin(Keyboards)をはじめTHE FLOWER KINGSのメンツ達と新たなバンドTHE SEA WITHINを立ち上げ去年デビュー・アルバムをリリースしたので、停滞気味なTRANSATLANTICや13年にアルバムをリリースして以来音沙汰無いTHE FLOWER KINGSの活動(アーカイヴ的未発音源リリースや過去音源のリマスタBOXセットの発売はあったが…)はもう無いのか…と寂しく思っていたファンにとって、この久々のソロ作は何より嬉しいプレゼントだろう。

注目の参加メンツは、THE FLOWER KINGSでもお馴染みな Jonas Reingold(Bass)、Hasse Froberg(Vocals)、Michael Stolt(Bass,Vocals)、Nad Sylvan(Vocals)に加え、Paul Gilbertのアルバム等で叩いたり、Alex Machacekらと共にUKZに参加して話題になったドイツ人売れっ子セッションドラマーでTHE SEA WITHINのメンバーでもある Marco Minnemann(Drums)、Steve Hackettとの活動で有名なサックス奏者 Rob Townsend等が名を連ねている。

全曲 Roine Stoltの作詞作曲なのは勿論、近年ではその座を譲っていたリードヴォーカルパートもソロ作だから当然とばかりに殆ど自身で歌い、その他のパートも気心の知れたメンツをバックに伸び伸びとソロプレイを繰り広げるという、わざわざTHE FLOWER KINGとクレジットするだけあって初期THE FLOWER KINGSを彷彿させるロイネ節が随所で全開な、GENESISをはじめUKプログレッシヴ・ロックの巨人達のトレードマーク的要素を抽出し独自解釈で再構築した、緻密に作り込まれたスリリングでメロディアスなテクニカルなギターと重厚で壮大なシンフォニック・アレンジが聞く者を魅了するエモーショナルでファンタジックな原点回帰的サウンドを展開していて、アルバムタイトル通り『錬金術師(=プログレ・ミュージシャン)の宣言』を高らかに鳴り響かせるその様には、初期からの彼のファンや90年代北欧シンフォ・ファンもニッコリな内容と言えるだろう。

これだけ色々な要素を詰め込んで、それでもポップで鮮烈な歌メロとキャッチーな美旋律が耳に残るのは、やっぱり北欧ミュージシャンの作品ならではなんでしょうねぇ♪(*´ω` *)

無論、ソロ作なのでバンド作との明確な違いもあり、長らく活動を共にする盟友 Tomas Bodin(Keyboards)が本作には参加していないのでTHE FLOWER KINGSとはサウンドの感触が違って全体的にダークで淡いメロディなのが印象的なのと、ソロ作らしく実験的な試みが見られる楽曲もあって、楽曲アイデアが閃いた瞬間のフィーリングを重視して制作されたという、JAZZをはじめ、ポップスや古典的なロックソングも含む折衷的で多様なプログレ要素がクロスオーバーされた幅広い音楽性と自由奔放なプレイが光る、現代的モダンなサウンドアプローチとヴィンテージ・プログレな風味を巧みに融合させオリジナリティへ昇華させた、これまでの長く豊かな活動経験を感じさせる本作のサウンドは流石の一作だ。

また、ソロ作故のリラックスした穏やかな雰囲気や味わい深く美しいブルーズテイストが色濃いギターサウンドは、英米問わず凄腕ミュージシャン達と壮絶なテクニカル・プレイを繰り広げている彼の参加するバンド作ではなかなか聞く事の出来ぬ一面と言え、目立たないけれど本作で注目すべき点とも言えるのではないでしょうか?

THE FLOWER KINGSをベースに、各国のプログレ&シンフォバンドへのゲスト参加や、KAIPA、TRANSATLANTIC、AGENTS OF MERCY、TANGENT、近年は Jon Anderson(ex:YES)とのプロジェクトANDERSON/STOLTやTHE SEA WITHINなどの活動をはじめ未だ精力的な活動を続ける Roine Stoltの動向からプログレ&シンフォ・ファンは依然目が離せない!



# by malilion | 2019-02-10 17:12 | 音楽 | Trackback

北欧メロハーの新星 PALACEの2ndをご紹介。

c0072376_20400879.jpgPALACE 「Binary Music」'18

北欧スウェーデン産メロハーのニューカマーが、16年リリースのデビュー・アルバム『Master of the Universe』に続き、2年ぶりに2ndアルバムをリリースしたのをちょい遅れてGETしたのでご紹介。

1st当時は、カナダが誇るメロハー・バンドHAREM SCAREMのフロントマン Harry Hessを中心とするFrontiers主導のメロハー・プロジェクトバンドFIRST SIGNALにギタリスト兼ベーシストとして参加したのを皮切りに、CRY OF DAWNやKRYPTONITE(The PoodlesのJakob Samuelをフィーチャー)にギタリスト兼ベーシストとして参加、Toby Hitchcockのソングライター兼ギタープレイヤーとしての参加と様々なプロジェクトで名を売り、満を持してマルチ・プレイヤーにして類稀なる才能を秘めたソングライター Michael Palace(Vocals、Guitars、Bass、Keyboards、Produced)がBIG TIME時代の盟友 RicK Digorio(Guitars)と共にタッグを組み、同郷HRバンドADRENALINE RUSHのリズム隊を迎えて結成された北欧メロディアスHRバンドが、Frontiers Recordsのレーベルオーナー Daniel Floresの肝いりでデビュー、と鳴り物入りな新人で注目を集めた訳だが、その1stは個人的にはA級までいかない極上のB級メロハーにもう一歩、な出来なものの、北欧特有の憂いを帯びた美旋律と伸びやかなハイトーン・ヴォーカルに分厚い爽快なコーラス、北欧お約束のキラキラ感満載の大仰なキーボードに透明感溢れフック連発のキャッチーな楽曲、そして繊細さも兼ね備えたハードエッジで徹底的にメロディアスな80年代リスペクトなHRサウンドと、デビュー作と思えぬ完成度に有望な新人バンドがデビューしたものだと嬉しくなったものでした。

で、続く本作なのですが、マルチミュージシャンが率いるバンド特有の問題がやはり発生した模様で、デビュー作に関わったメンツは既に誰もおらず、今回はプロデュースとドラムだけ元MIND'S EYEの Daniel Floresがプレイし、ゲストギタリストでCODE REDの Oscar Bromvallが一曲 "Julia"でのソロパートをプレイした他、楽曲もプレイも1st同様に殆ど Michael Palaceが独力で創り上げたアルバムとなっている。

内容の方はと言うと、北欧らしい叙情性を含みながら産業ロック、AOR、ニューウェーブ、北欧HM等の要素をバランス良く取り入れたサウンドの方向性に大まかな変化はなく、さらにメロディックに構築されたコンパクトでキャッチーな楽曲の高品質なクオリティ、幾重にも重ねられたブ厚い爽快なコーラス・ワーク、テクニカル且つスリリングなプレイで魅せるギター・ソロなど、メロハーに不可欠の要素が詰まった楽曲の数々が前作を遥かに凌駕する仕上がりなのを一聴して即確信する程で、さらにHarmonica、Alto Saxophone(これはご愛敬なプレイスキルだけど…)など前作でプレイしていなかった楽器も Michael Palaceがプレイし、QUEENっぽいタッチのメランコリックなメロディな楽曲も収録するなど前作にはなかった新要素もあって、なかなかに楽しませてくれます。

また、デビュー作では無理なハイトーンを多用していて、その上ずり気味な歌声が少々耳に触ったが、本作ではミドルレンジ中心なAOR風な楽曲にマッチしたアダルトな歌唱スタイルを多用している事もあってヴォーカルのヘナチョコさ具合は気にならなくなっている。

まぁ、ギタリスト兼任でのヴォーカルと捉えれば十分以上な問題ない上手さなのだが、フロントマンましてやマルチプレイヤーを名乗って産業ロック寄りなサウンドをプレイするとなると、どうしても一段落ちるヴォーカルの力量が気になってしまうので…(汗

ヒットポテンシャルの高いキャッチーでコンパクト、そしてハードでキレのいいメロハー・サウンドに比重を置いたサウンドだったデビュー作から、幾分落ち着いた産業ロック&AOR要素と整合性重視なポピュラーミュージックのポップス要素が強まったと言える本作のサウンドですが、個人的には定番北欧メロハー要素満載過ぎて幾分没個性に感じられた1stよりも、2ndリリースまでにCODE RED、Robin Jidhed(北欧メロハーの元祖的バンドALIENの初代フロントマン Jim Jidhedの息子)をフィーチャーしたバンドCREYE、Erika、Hank Erix、FIND ME(Featuring Robbie LeBlanc)など多方面で多くのミュージシャンやバンドとコラボした成果か、本作の方が楽曲の幅も広く完成度も高いサウンドのアルバムなのは間違いないだろう。

デビュー作で必要以上にプッシュしていた溌剌爽快要素は確かに減退しているけれど、総合的に完成度とポップさとキャッチーさは増しているので、後はHR要素が多目がいいか、産業ロック要素が多目がいいか、というリスナー側の好みで評価が変わるってとこじゃないですかね?

少々不安なのは、今後もこのメロハー要素が薄まる方向性へ進むなら、ワンマン・バンドのマルチプレイヤー一人での活動はなかなか厳しいんじゃないかと思いますけどね…一人故に完成度は上がるでしょうが、一人だからこそ楽曲のネタが尽きるのも早いだろうし、独力では作曲スピードも限られてくるでしょうし、そうそう名曲を一人の手だけで量産出来るハズもないんですから…

出来る事なら信頼出来る力強い相棒か、ちゃんとしたバンドを組んで精力的に活動をして欲しいと思う、有望な新人ミュージシャン Michael Palaceなのでした…

北欧メロハー好きは勿論、80年代のAORやSTORM、JOURNEY、NIGHT RANGER等の煌びやかなキーボードサウンドが売りのオールドスタイルなUSメロディック・ロックを好む方にも十分訴求する高品質なメロディアス作なので、華やかな80年代USサウンドへの憧憬を隠さず現代風にモダンに再構築した本作のサウンドを是非チェックしてみて下さい。




# by malilion | 2019-02-06 20:32 | 音楽 | Trackback

THE NEAL MORSE BANDが、前作『THE PILGRIM'S PROGRESS(天路歴程)』の第二幕作をリリース!

c0072376_14023016.jpgTHE NEAL MORSE BAND 「The Great Adventure ~Special Edition~」'19

元SPOCK'S BEARD、TRANSATLANTICの Neal Morse率いるバンド名義での3rdアルバムが3年ぶりにリリースされたので、お馴染みの限定盤(2枚組CD&DVD付キ3枚組!)を即GET!

ソロやバンドのこまめなツアーや英米問わぬシンフォ系バンドへのゲスト参加と、SPOCK'S BEARD脱退後の方が精力的に活動してるんじゃないかと思える八面六臂の活躍を続ける Neal Morseだが、やはりCCM系がメイン活動となっている故か前作『The Similitude Of A Dream 』'16 に続く同一コンセプト作の第二幕作が届けられた。

SPOCK'S BEARDから突如脱退して宗教活動に傾倒した彼らしく、英国の伝道師John Bunyan(1628年~1688)による宗教寓意物語『THE PILGRIM'S PROGRESS(天路歴程)』と言う、『破壊の都』から救済の場所である『天の都』に辿り着くまでの旅の記録の物語は、到底前作だけでは語り尽くせなかったのか、再び組曲形式の二枚組アルバムというタップリなヴォリュームで壮大なストーリーが綴られている。

メンツは前作と変わりなく、Neal Morse(G、key、Vo)、Mike Portnoy(Ds、Vo:ex-DREAM THEATER)、Randy George(B:AJALON)、Bill Hubauer(Key、Vo)、Eric Gillette(G、Vo)の5人による製作で、楽曲の方向性も前作と同系統の古典寄りなサウンドながらロック、ジャズ、クラシック等の要素をテクニカルなプレイで無理なく織り込みつつ、しっかりと今風のモダンなアップデートが成されているナチュラルなフィーリングを重視した80年代的USプログレハード・サウンドな、売りの分厚く複雑に交差する美しいコーラス(いつになく他メンバーがリードヴォーカルを披露している)は勿論、USAバンドらしからぬ叙情感タップリな美旋律、そしてキャッチーな歌メロも健在の、往年のアメリカン・プログレハード好きならば文句無く楽しめる非常に独創的でドラマチックな意欲作だ。

前作の続編と言う事で宗教色に文句を言うような輩は当然本作に手を出さぬだろうが、コンセプトが宗教色ドップリな事もあって生のストリングスを大胆に導入した如何にもCCM系音楽的な荘厳でドラマチックなシンフォニック・サウンドで隙無く本作はガッチリ構成されており、続編と言う事を意識してか前作『The Similitude Of A Dream 』で聞かれたメロディもさりげなく顔を出したりする遊び心もありつつ、YES、DREAM THEATER、STYX、SPOCK'S BEARD、TRANSATLANTICを思い出させる要素を前作以上に巧みに組み合わせ、仄かにUK臭が香るダークなメロディが実に感傷的な、『大冒険』なるアルバムタイトルに相応しいダイナミックでメロディックなサウンドを迫力満点に展開していく。

また、個人的に嬉しい変化だったのが、前作で幾分か影を潜めたメタリックなサウンド要素が本作では再びクローズアップされ、とりわけリズム隊が前作以上に頑張っていて楽曲に強烈な起伏とメリハリ、そしてパワフルさを生み、それ以上に Eric Gilletteのギタープレイが大々的にフィーチャーされ、スリリングなソロパートやフィーリングタップリな叙情的なメロディ、そして攻めの邪悪なリフや物語を紡ぐような繊細なバッキングやアコースティックギターの涼やかな調べ等々、本作においては主役級の大活躍を見せており、人生において経験する葛藤や苦難、そして理想的なクリスチャンの姿へと近づいていくその過程を寓意した『THE PILGRIM'S PROGRESS』に創作インスピレーションを受けたのに相応しい、しっとり優雅な気品とウェットな情感がサウンドに漂っているだけでなく、多くの障害を克服し力強く前進しようとする人間の魂の高潔さ、そして神聖な導きに従おうとする魂の救済を描き出しているかのように感じられました(*´ω` *)

本作は二重コンセプト・アルバムで『The Similitude Of A Dream 』の続編いうコンセプトと、『Similitude』の主人公の息子、Josephを中心とした物語というコンセプトで構成されており、彼は父親の後を追うことを決心し、その過程で多くの困難に直面し、それでも進んでいく…と、いう前作の音楽とコンセプトテーマがシームレスに織り込まれた、音楽的にも叙情的にも豊かになった組曲形式のサウンドで、メインテーマである『不滅の愛』が切々と綴られていく、Neal Morseの世界観、宗教観を目一杯に味わうことができる快作と言えるだろう。

SPOCK'S BEARD、TRANSATLANTIC、そしてUSAプロハード・ファンは勿論、CCM系と毛嫌いせずに Neal Morseが描き出すテクニカルでシンフォニックなピュアサウンドは、音楽ファンならが一度チェックしてみても損はありませんぜ。

ボーナスDVDには、レコーディングのメイキング映像を収録しているので、マニアはこのスペシャル盤を迷わず購入しましょう。



# by malilion | 2019-02-01 13:56 | 音楽 | Trackback

フランスのシンフォ・プログHMバンドADAGIOの5作目を今頃!

c0072376_17495514.jpgADAGIO 「Life」'17

フランス出身のネオクラ系ギタリスト Stephan Forte率いる6人組シンフォニック・プログレッシヴHMバンドによる8年ぶりとなる通算5作目を今頃にご紹介。

正直、とっくに解散してると思ってました……(汗

フランスのHMは情報が殆ど届かないので…勉強不足でした…orz

ネオクラ系ギタリストがリーダーなバンドの常なのか、このバンドもフロントマンが安定せずアルバム毎にヴォーカリストが代わっている印象で、初代フロントマン David Readmanを4年でチェンジしたのを皮切りに、二代目に Gus Monsantoを迎えるものの同じく4年で脱退(後に元STRATOVARIUS Timo Tolkki率いるREVOLUTION RENAISSANCEへ参加)、三代目に Christian Palin(RANDOM EYES、ESSENCE OF SORROW、etc...)を迎えるが2年程で早々に脱退し、後任の四代目には北欧HMでお馴染みな大物ヴォーカリスト Mats Leven(TREAT、CANDLEMASS、YINGWIE MALMSTEEN、AT VANCE、THERION、etc...)を迎えるものの1年少しで脱退し、五代目に Michael Amott率いるSPIRITUAL BEGGARSへ加入した Apollo Papathanasio(MAJESTIC、TIME REQUIEM、FIREWIND)のヘルプ要員としてFIREWINDのLIVEへ招集されていたアメリカ人ヴォーカリスト Kelly“Sundown”Carpenterが迎えられて(07年来日時にサポート・シンガーを務めていたが、そのまま08年に正式加入した模様)本作は制作されている。

いずれも実力派揃いのフロントマンの後任とあってその力量が注目されるが、Kelly“Sundown”Carpenterは Mats Levenに似た濁り声が基本の上も下も幅広くカバーする抜群の歌唱力を本作で披露しており、少し荒れた歌声で熱唱する所などちょっと Mike Vescera(OBSESSION、LOUDNESS、YINGWIE MALMSTEEN、etc...)っぽいイメージと言えば伝わるだろうか?

他にもこのバンド、ドラムスやキーボーディストも今までに幾度かチェンジしていて、オリジナルメンツはリーダーの Stephan Forteとベーシストの Franck Hermannyしかおらず、さらに最新作である本作から新たにヴァイオリン奏者 Mayline Gautie嬢を迎えた6人体制になって初めてのアルバムとなっているのです。

オールドスタイルな北欧様式クラシカルHM的ダーク・メロディを基本に、モダンでドライサウンドの欧州的鈍色ヘヴィサウンドを組み込みつつ、緻密に構築されたアンサンブルと高度なテクニカルプレイ、そしてシンフォニックで重厚な音の壁が渾然一体となって劇的な物語を描きだしていく基本路線は本作でも変わっていない。

なんと言っても本作からヴァイオリン奏者がメンバーに名を連ねているので、今までキーボードオンリーだったシンフォニックなサウンド創りに厚みと艶が生まれているのは大きなプラス要素と言えるだろう。

ただ、デビュー当時から感じていた弱点も未だに克服出来ておらず、これだけ長い間をあけミッチリと作曲に時間をかけた故にか、テクニカルなプレイ中心で楽曲構成が複雑であったり、唄メロがイマイチ耳に残りにくいキャッチーなシンフォHMでない事もあって著しくポピュラリティが低く、相変わらず曲単位として決め手に欠けるといったマイナス印象は変わりないのが残念でならない。

要所要所での切れ味鋭いスリリングなメロディや圧巻の楽曲展開、ふっと現れるメランコリックで繊細なメロディ、そしてクラシカルでロマンチックな美旋律や、荘厳なシンフォ・アレンジ等々、耳を惹くパートが散りばめられているだけに、全体的にダークで難解、そして無愛想なイメージがリスナーを遠ざけているように思えるんですよねぇ…うーん、勿体ない…

もう少し楽曲をシンプルにするか、キーボードとギターの音数を減らして、せっかく加入したヴァイオリニストにもっと活躍の場を与えて、サウンドに艶やかさや甘味を与えた方が一般受けすると思うんですが、まぁ、そうするとバンドのアイデンティティにも関わってくるんで、早々簡単に方向性を変化させられないのかもしれないけど…

月並みだけど、次作こそもうちょい一般受けしそうな路線へ変更してメンツの変動なく新譜を届けて欲しいですね。




# by malilion | 2019-01-31 17:42 | 音楽 | Trackback

John ElefanteのKANSAS好きにお薦め! 元ANGELICAの Jerome Mazzがソロアルバムをリリース!

c0072376_21005483.jpgJEROME MAZZA 「Outlaw Son」'18

元KANSASのフロントマン Steve Walshの最新にして最終(これで引退なんて嘘だと言って欲しい…)ソロアルバム『Black Butterfly』'17 に参加し、数曲でその John Elefanteによく似た甘いハイトーン・ヴォイスを披露したCCM系USヴォーカリスト Jerome Mazzaの初ロック・ソロアルバムをちょい遅れて紹介!

Steve Walshのソロ作への参加、そしてPINNACLE POINTで素晴らしいメロハー作をリリースした Jerome Mazzaをメロハー・レーベル Escape Musicが放っておく訳もなく、こうしてソロ作リリースへの運びとなったのは我々メロハー愛好家にとって実に目出度い事であります(*´ω` *)

PINNACLE POINTでは Torben Enevoldsen(Guitars&Keyboards)を相棒にアルバム制作に臨んだ Jerome Mazzaですが、本ソロでは Steve Walshのソロ作でも尽力した北欧AORオタスケマン Tommy Denander(Guitars&Keyboards)と Steve Overland(Backing Vocals)の二人の助けを借り、本人も語るようにKANSASの影響大なキャッチーでハードタッチ、そして叙情感あるAOR風味バッチリなUSAメロディック・ロックで、お得意の爽快感抜群なハイトーンヴォーカルと分厚く美しいコーラスを存分に堪能させてくれ、ANGELICAでの彼を知るHMファンには懐かしくも嬉しい一枚と言えるでしょう。

一時HM業界から身を引きCMソング等の仕事をしてきた事もあってAORオタスケマン Tommy Denanderとの相性は抜群で、PINNACLE POINTより幾分テクニカルさやシンフォニックさは抑え目で、キャッチーさとポップさ、そして楽曲の整合性に重点を置いた、TOTO等の産業ロックテイストが多目な本作のモダンロック・サウンドは、モロに後期KANSASっぽく聞こえる所も多々あって個人的に近年希に見る堪らない好盤であります('(゚∀゚∩

まぁ、クレジットを見る限りEscape Music主導で Tommy Denanderと Steve Overlandの二人に楽曲を用意させて久しぶりにHM界へ復帰した Jerome Mazzaに、売れ線で彼のイメージにピッタリなハードタッチなCCM系楽曲を歌わせた企画モノ、ってトコが本作の正体なんでしょうが、届けられたアルバムの出来が良いんだから Jerome Mazzaが作曲に関わっていようといまいと些細な問題じゃないですか。ねぇ?

Jerome Mazzaが語る所によるとPINNACLE POINTの2ndの制作も殆ど終わっていて19年中にはリリースされるとの事なので、Jerome Mazzaファンとメロハー・ファンは、PINNACLE POINTの新作を首を長くして待っている事にしましょう。

John ElefanteのKANSAS好きや80年代後期USAメロディアスロック、そして90年代AORハード等がお好きな方なら一度チェックしてみても決して損はしない、そんな一枚であります。

しかし、本人もSteve Walshの後釜でKANSASへ加入したかったのね…残念だったでしょうねぇ…




# by malilion | 2019-01-29 20:57 | 音楽 | Trackback

三度再始動を果たした英国AORハードAIRRACEの3rdを今頃購入!

c0072376_07220405.jpgAIRRACE 「Untold Stories」'18

11年に27年ぶりとなる再結成作の2ndをリリースしてAOR愛好家を歓喜させたものの、その後の活動は洋として知れず再び歴史の闇に消えたものと思っていた彼等が、メンツを一新して三度再始動を果たし7年ぶりにリリースした3rdアルバムを半年遅れで(今頃!)購入!

前作の27年ぶりに比べれば7年は短い(?)と捉える事も出来るけれど、正直とっくに解散したと思ってたました…(汗

まぁ、その予想は遠からずって感じで、中心人物にして唯一のオリジナルメンバーは Laurie Mansworth(G、Vo)を残すのみで、新たに女性キーボーディスト Linda嬢を含む新編成の5人組バンドへ生まれ変わっていた訳ですから。

新メンツでまず目を惹くのは、Michael Schenker率いるMSGの後期に在籍し、その他セッション参加やオタスケマン的に英米問わず様々なバンドのアルバムにそのプレイを残している、古くはAIRRACEと同期バンドLIONHEARTに在籍し、再結成したLIONHEARTに現在も在籍する Rocky Newton(B)と、Laurie Mansworthの実の息子 Dhani Mansworth(Ds)の二人でしょうか。

また注目のフロントマンの交代ですが、後にMAMA'S BOYSのフロントマンになる Keith Murrell(Vo)がAIRRACEのバンドの顔であり彼の如何にもAORにマッチするクリアーなハイトーン・ヴォーカルに代わって本作で歌声を聞かせるのは Adam Payneなる無名のヴォーカリストで、幾分かハスキーな濁り声なものの高域も無理なくカバーするパワフルな歌声を聞かせ、Keith Murrell不在を悲観する従来のファンも安心な Laurie Mansworthが見込んだ実力者と言えましょう。

アルバム聞き進む度に『この声、どっかで聞いた事ある声だなぁ』と思ってたんですが、自分にはマイナーな存在ながらメロディアスな良作をリリースしてきたUSAメロディアス・ロックバンドHYBRID ICEの初期フロントマン Galen Toye Folkeっぽい歌声(分かりにくい例えで申し訳ない!)に似て(良く聞くとそんなに似てないけど…)聞こえました。

Adam Payneの声の方が音域は幅広いし、パワフルでハスキーな濁り声なんですけどね(汗 まぁ、どうでもいいか(w

これだけインターバルが開いたにも関わらずバンドの音楽性にほぼ変化はなく、以前と変わらず産業ロック寄りの耳障りのいいメロディアスHR&AORハード作なサウンドで、UK独特のちょっと湿り気のある脳天気に成りきれぬメロディや、爽やかなフックありまくりの艶やか且つソウルフルなVoメロと分厚いヴォーカルハーモニー、今回は煌びやかさは幾分控え目なキーボードサウンド、そしてツボを心得た印象的なGリフと、派手さは無いもののポップでキャッチーでありつつ叙情感や哀愁を感じさせる美旋律満載な、正にベテランの技が随所に活かされた隙無い完成度も相変わらずで、ファンなら確実に満足する安全牌作なのは間違いなしな出来で嬉しくなってしまいました(*´ω` *)

フロントマンの声質が変化したからなのか、幾分これまでよりブルージーなテイストが強く感じられる楽曲や、ムーディな雰囲気を持つ楽曲が多く収録されているように感じられるものの、デビュー当時とは時代も違うし既にメンツも全員違うんだし当然っちゃあ当然な訳で、むしろ洗練され過ぎた産業ロック&AORサウンドに、今まで余り感じさせなかった若干ワイルドでダーティーなHRテイストが新しくバンドサウンドに加えられた事によって、アルバム全体がパワフルでナチュラルなトーンの印象を持ち、新たなイメージの音像を得る事に成功しているように思う。

FOREIGNERをはじめお馴染み産業ロック系全般や、LIONHEART、FM、SHY、GRAND PRIX等のUKメロハーバンド群、そして新たに加わったテイストとしてWHITESNAKEやLED ZEPPELIN風味も実に興味深く、メロディアス系愛好家な方はきっと耳を惹くメロディがある良作ですので迷わず購入して間違いはありませんよ、って半年も経って何を今更な話ですな(w

願わくば今度こそ精力的な活動を維持して欲しいものであります。




# by malilion | 2019-01-28 07:14 | 音楽 | Trackback

オセアニアン・シンフォの新星ANUBIS、活動15年の節目にユーロ・ツアーの模様を伝えるLIVE作をリリース!

c0072376_16210105.jpgANUBIS 「Lights Of Change (Live In Europe 2018)」'19

オーストラリアというプログレ&シンフォ不毛の地からデビューした期待の新星で、key入りトリプルG編成6人組の、前作の再録アルバムより1年ぶりとなる新譜は、15年リリースの十周年記念LIVE盤に続くLIVE盤が早くもリリースされ驚かされた!

なんだかんだで既に活動15年目を迎える彼等も中堅的存在になりつつある訳だが、後続でめぼしいバンドが続かないので未だに期待の新星扱いなのが、ちょっと悲しい…

さて、本作は故郷に錦を飾った十周年記念LIVE盤とは違い、18年のユーロ・サマーツアーの模様から抜粋された2枚組LIVE盤で、Disc1にはドイツでの野外フェス(7/15、Loreley Amphitheatreで開催されたProg Festivalでのほぼ全セットを収録)での熱演を、Disc2にはソールドアウトとなったオランダの有名クラブt Blok(7/8、Nieuwerkerkで開催されたProgfrog公演の後半を収録)での模様を収録した、ある種彼等にとっての海外遠征記念盤と言えよう。

メンツは前作と変わらず不動の6ピース(現体制になって5年目)で、バンド一丸となってロマンチックな情感を織り成すアンサンブル、売りの分厚く華麗なコーラスやトリプルギターの利を活かした分厚いバッキング、そしてLIVEだと二割増しで大活躍する David Eatonのリリカルで優美、そしてシンフォニックで柔和なキーボードの音色が、アルバムより一層にハードタッチな色合いが強くなるLIVEサウンドに潤いと艶やかさ、さらに透明感を与え、スタジオアルバムとまた趣を変えた一味違うスリリングでラフな魅力あるサウンドを奏でる様子が伝わってくる好盤だ。

MARILLIONっぽいロングトーンの透明感ある繊細なギターの音色の裏で邪悪に蠢くHR的なベースの存在感や、頑張ってアルバムの再現を保っている Robert James Mouldingのハイトーン・ヴォーカル、そして手数よりタイトさやグルーヴに重きを置いたシンフォ&プログレ系的には異端なHR的ドラムス(なのに音が軽ぅいのは…MIX具合のせい?)と、いい意味でLIVEならではの味やノリが変拍子やテクニカルなプレイを巧みに交差させ複雑な展開をみせるサウンドに勢いを与えていて、近作でのシンフォ度が増してマッタリ感ばかりを強く感じるサウンドに少々残念な思いもあった彼等でしたが、初期からの持ち味であったHR的スピードや攻撃性が本LIVE作ではチラリチラリと垣間見えて個人的には大変嬉しかったですね(*´ω` *)

また、本LIVE作の最大の売りは、デビュー作の映画サントラみたいなイマイチなサウンドに一気にHRタッチが加わってパワフルなハード・シンフォサウンドを奏でるバンドへ生まれ変わり彼等の人気に火がついた、個人的にも大好きな2nd『A Tower Of Silence』'11 をアルバム順通りプレイする丸ごと再現というバンド史上初のフルパフォーマンスを収録しており、スタジオ作以上にロマンチックでセンチメンタル、そしてLIVEを経て磨き抜かれ、より神秘的で完成度の高まった美しくもシャープなシンフォサウンドを奏でる見事な様は、正にファンならずとも感無量といったところでしょう。

シンフォ系のLIVE作なんだから当然なんですが、LIVE作と言うには余りにお行儀が良く、ついHRバンドのワイルドで熱くアグレッシヴなLIVE作と比べてしまう自分が間違っていると重々承知(けどメンバーの風貌はハードロッカー臭いんだよなぁw)しておりますが、もうちょいLIVEならではの原曲の崩しやアレンジをガラリと変えたLIVEバージョンの楽曲なんかの熱演も聞きたかったなぁ、なんて無い物ネダリをしてしまうくらいしか文句のつけようがない本作ですので、ファンなら勿論のこと、透明感ある壮大なオセアニアン・シンフォ好きな方や、ユーロ・シンフォ程暗くシリアスでなく、USAシンフォ程パワフルでヘヴィでもない一風変わった彼等の生の音を、是非ともシンフォ好きな方に一度チェックして貰いたいですね。



# by malilion | 2019-01-27 16:15 | 音楽 | Trackback

John ElefanteのKANSAS好きにお薦め! 元ANGELICAの Jerome Mazz率いる新プロジェクトPINNACLE POINTがデビュー!

c0072376_17404430.jpgPINNACLE POINT 「Winds of Change」'17

以前ここでも紹介したCCM系USHMプロジェクトANGELICAの2ndに参加していた二代目ヴォーカリスト Jerome Mazzが新プロジェクトを立ち上げ、KASNASファンをはじめ80年代USAプログ・ハード好きな諸兄なら気に入る事間違いないなアルバムをリリースしていたとの情報を今頃(汗)小耳に挟み、1年遅れで購入してみた。

最近のJerome Mazzのトピックは、Steve Walshの久しぶりのソロ作にゲスト参加した事だと思っていたら、新プロジェクトを立ち上げてちゃんと自身のキャリアも追求していたんですね。

しかも、つい最近アノ北欧オタスケマンTommy Denanderのバックアップの元にソロアルバムもリリースしてるし…アンテナ低すぎだろ…自分…orz

本作は、ANGELICA以降セッションシンガーとして大手会社のCMソングなどで美声を披露していたもののロックシーンからは遠ざかっていた Jerome Mazz(Vocals、Keyboards)が、ACACIA AVENUE、SECTION A、FATE等の様々なバンドやプロジェクトで精力的に活動を続けているギターリスト Torben Enevoldsen(Guitars、Keyboards、Bass)と意気投合して2015年に二人を中心に結成されたニュー・プロジェクトのデビュー作で、気になる参加メンツは、ドラムに Torben Enevoldsenのバンドやプロジェクト等でお馴染みな Dennis Hansenが迎えられ、この三人がコアメンバーとなり、楽曲により複数のキーボーディストや Cara-C嬢なるヴァイオリニストを迎えて収録曲は録音されている。

基本的にほぼ全ての作曲をベテラン Torben Enevoldsenが手がけている事もあって、Jerome Mazzの John Elefanteによく似たクリアーで甘口なハイトーン・ヴォーカルの魅力を十二分に活かした、ポップでキャッチーでありながらAOR風な軟弱なサウンドへ傾ききらぬようしっかりハードなエッジで楽曲がピリリと引き締められた極上のメロディック・ロックサウンドによってアルバムは埋め尽くされていて、KANSAS、STYX、JOURNEY、TOTO、YES、ASIA、EL&P、さらにDEEP PURPLEやRAINBOW等の影響まで窺える、産業ロック&プログレ・ハード好きが小躍りするだろう、良く練り上げられたベテランの技とキャリアがしっかり封入された、爽快感抜群なコーラスやスリリリングでテクニカルなプレイや、薫り立つような叙情感豊かでフック満載な楽曲群には、本当に素晴らしいという手放しの賞賛の言葉しか思い浮かばないのであります(*´ω` *)

CCM系と言う事でかイマイチ知名度が低く、ANGELICAがマイナーな存在だった事や、プロモーションも精力的でないせいもあってか余りにも注目度が低すぎる新プロジェクトではありますが、上記の影響を感じさせるバンド達の名前や、John ElefanteのKANSAS好き(もうKANSASチックなヴァイオリンが最高!)な80年代中期USAプログレ・ハード愛好家に是非ともお薦めしたい、そんな一枚なのです♪('(゚∀゚∩

ユーロ圏ロックよりリリカルさが少々足りないとか、ドライでレンジが狭いサウンドが好みじゃない、とか色々とKANSAS臭過ぎるとか、多々難癖つける事は出来るでしょうけど、個人的にはこのアルバムには大満足しております(*´ω` *)

しかし、本作のヒットポテンシャルの高い爽快サウンドと艶やかで情感深い Jerome Mazzのクリアーな歌声を聞くにつけ、KANSASは Steve Walshの後釜に、元SHOOTING STARの Ronnie Plattじゃなくて彼を迎え入れれば良かったのに…とか、勝手な事を宣ってしまいたくなってしまいます…

まぁ、余りにも Steve Walshや John Elefanteっぽい歌声だから、あえて避けたとも考えられるけど…(汗



# by malilion | 2018-12-31 17:34 | 音楽 | Trackback

John Payneの別名義ASIA? いいえ、新バンドDUKES OF THE ORIENTのデビュー作です。

c0072376_15453563.jpgDUKES OF THE ORIENT 「Same」'18

後期ASIA、GPSのヴォーカリスト兼マルチ・プレイヤーである John PayneとLANA LANEや90年代に数多くのプログレ・プロジェクトやプロデュース業で名を馳せたキーボーディスト Errik Norlanderによる双頭プロジェクトのデビュー作(メンバー・フォトではツインギター&キーボード入り5人組)がリリースされたのを、かなぁーり遅れてGET!

本作がリリースされるまでのゴタゴタやバンド名についての一連の騒動、そして新譜情報だけは John Payneの口から伝えられるのに一向にリリースされる気配もなく、内容と全く関係ない権利関係やメンバーの入れ替わり問題ばかりが話題になっていたアルバムがやっとリリースされ John Payneファンな方々は今頃は胸を撫で下ろしている事でしょう。

一時期 John PayneのASIAとオリジナルメンツが再集結したASIAが存在してファンが困惑したり、後期ASIA在籍メンツによる新バンドGPS(キーボードはSPOCK'S BEARDの奥本亮)が結成され新譜がリリースされたり、GPSとは別にASIA featuring John Payne(キーボードは Errik Norlander)なる別名義で新譜『Americana』をリリースする、という情報やらが錯綜し、結局ASIA featuring John Payneはカヴァー・アルバムしかリリース出来ず、オリジナルASIAは順調に新譜をリリース(Geoff Downesの裏切りっぷりが、また…)する、というなんともドロついた政治力が蠢いているのが透け見える状況やらに、不遇な90年代のASIAを支えてきた John Payneに対して余りな仕打ちじゃ無いか、と憤慨していたファンは少なくないはず。

結果から言って John Wettonを中心に再集結したオリジナルASIAは期待に反して碌なモンじゃないアルバムしかリリース出来ず、そうこうする内にJohn Wettonが鬼籍になってオリジナルASIAは終わり、という皮肉めいた結末(Carl PalmerはEL&Pの方を取った訳だ。そりゃボスになれるんだし、当然か)を迎えた事を考えると、一連の騒動に足を引っ張られて思うような活動が出来無かった John Payneには、今度こそ頑張って活動してもらいたいと願わずにはおれないのです…

さて、本作はASIA featuring John PayneからDUKES OF THE ORIENT(東洋の公爵達)に改名したかのような作品で、これまでに後期ASIA、GPSに関わったメンバーばかり(ギタリストがズラリ、勢揃い)がアルバムにはクレジットされている。

音楽性もAOR風味の増した後期ASIAから、そのまま音楽性を引き継いでHMテイストを加味したGPSのサウンド要素を多分に含んでいて、実際本作を耳にした方なら『コレなら改名する必要があったの?』と、素朴な疑問を誰でも抱く事だろう。

まぁ、ASIAの名前は権利的に面倒だし、さっさと新バンドとして活動を開始した方がいい、と踏んでの名義変更だろうが、GPSがイマイチ受けなかったからとは言え、見切りが早いなぁ、とビジネスライクな行動にちょっと感心してしまう…(汗

で、そういった内容以外の話題に事欠かない本作だが、その内容の方はと言うと、後期ASIAからお馴染みな John Payneの持ち味であるAORテイストを多分に含み、ハスキーな声で力強く歌い上げるディープ・ヴォイスの魅力が活かされたメロディックでキャッチーなUKプログレッシヴ・ポップロック的音像に、Errik Norlanderらしい壮大でシンフォニックなキーボード・オーケストレーションを加えた音楽性で、コンパクトでありながら叙情的な美旋律を全面に押し出した初期ASIAテイストも幾分か感じさせる(確実に Errik Norlanderは確信犯だ)ドラマティックでハードなスケールの大きいサウンドは、劇的な展開とベテランならではの構築美で隙無く纏め上げられており、もしASIAがオリジナルメンツでの再結成などという愚行を行わなかったならば、きっと『Silent Nation』'04 に続く新譜はこんなサウンドになったんじゃないか、と想像させるに十分なクオリティと完成度だ。

良く言えば後期ASIAを受け継いだ、悪く言えば後期ASIAの焼き直し、とも言えるが、最早 John Payneと Geoff Downesの和解は無いだろうし、必要も無いだろうし、John Payneファンとしては、彼がAORテイストあるウェットでメロディアスな良質のロック・アルバムをリリースさえしてくれさえすればもうメンツに拘らないので、願わくばどうかこの十数年の空白を埋めるような精力的な活動を John Payneには続けて欲しいものであります…



# by malilion | 2018-12-24 15:38 | 音楽 | Trackback

米国産モダン・シンフォIZZの女性シンガー LAURA MEADEの11年ぶり初のフル・アルバム!

c0072376_20464495.jpgLAURA MEADE 「Remedium」'18

米国産ハイブリッド・モダンシンフォ・ロックバンドIZZ(ツイン・女性ヴォーカルの片割れ)や、RENAISSANCEのキーボーディスト Jason Hart率いるシンフォ・バンドI AND THOUのメンバーとして活動する、ミュージカル系バックグラウンドを持つ女性シンガー&シンガーソングライターの1stソロ・アルバムがリリースされたのを、ちょい遅れてGET!

フィメール・ヴォーカルものが得意でない自分ではありますが、07年に5曲入りEP『LAURA MEADE』をリリースして以来11年ぶりとなる初のフル・アルバムである本作、前作に続きIZZの J.Garando(Bass、Guitars、Keyboards、Drums、Programming、Backing Vocals、Ukulele) が作詞作曲、演奏等で全面的にバックアップするだけでなく、THE FRIDGEの Rabdy Mcstine(Guitars)やRENAISSANCEの Jason Hart(Keyboards、String Arrangement)も制作に参加しているとあっては購入せぬ訳にはいかないでしょう。

女性ヴォーカルのソロ作と言う事で当然、演奏パートがメインではない歌モノ・アルバムで、IZZでも味わえる清楚さと透明感がありつつ、どこかコケティッシュさも漂わす可憐な歌声を活かした、ピアノ独奏での弾き語りや、アコギバックに切々と情感タップリに歌い上げるオペラティックな歌唱も楽しめる、シンプル且つメロディアス、そしてリリカルで華麗な楽曲が詰め込まれたポピュラー寄りなサウンドのアルバムだ。

勿論、J.Garandoが制作に関わっているので、YES、GENESIS等のプログレ系や Kate Bush等の歌姫系な影響も窺えるサウンド・アプローチだったり、音色の断片だったりが全編に渡って散りばめられていて、プログレ&シンフォ好きは、きっとニヤリとする事でしょう。

深いエコーのかかったドリーミィで、けれどその実ダークな情感も露わなゾクリとするような楽曲や、シットリとした優しげな歌声や朗らかな歌声が活かされたカラフルな楽曲が楽しめたりと幅広くバラエティに富んだ内容な上に、ソロ作と言う事もあってかIZZでは余り聞く事のない Laura Meade嬢の表情豊かで軽やかなポップス寄りな歌唱もフィーチャーされた米国産アーティスト作と思えぬウェットなメロディ満載なアルバムなので、シンフォ&プログレ抜きにしてもユーロ圏のメロディアスな作品がお好みな方なら文句無しに楽しめる良作だ。

プログレ&シンフォ系バンドに所属してるヴォーカリストのソロ作って、地味にバンドメイトが参加していて良作が多かったりするんだけど、余り知名度ないからか即廃盤になったりするので、ご興味ある方はお早めにね(*´ω` *)





# by malilion | 2018-12-12 20:39 | 音楽 | Trackback

まさかの23年ぶりの復活! オランダ産ポンプメタル・バンドDILEMMAが強力布陣で再結成し、新譜をリリース!

c0072376_16024294.jpgDILEMMA 「Random Acts Of Liberation」'18

まさかの復活! オランダ産ポンプメタル・バンドの23年振り(!)となる3rdアルバムがリリースされたのを、ちょい遅れてGET!

アンダーグラウンド・シーンはシンフォ・サウンドという新風の奥にポンプの残り香がまだ幾分か漂い、メジャーシーンではプログレMHが一大シーンを形成していた95年当時、SI MUSIC(後にRoadrunner Recordsがディストリビュート)から『Imbroccata』にてアルバムリリースを果たすものの、その後音源を残せず02年に解散していたバンドが、オリジナルメンバーのキーボーディスト Robin Zuiderveldを中心に再結成され新作をリリースした。

オランダのアムステルダムで93年に結成され、同年カセットオンリーのデビュー・アルバム(現物未確認)『Trapped』をリリースし、その後95年に2nd『Imbroccata』にてCDデビューを果たすが、その時点で既にアルバム2枚分のマテリアルが存在するという事で、続く新作はすぐにも届けられるものと誰もが思っていた(ポンプ系やHM系のインディバンドでこの手の話は定番ですね)ものの一向に音沙汰は無く、いつの間にやらバンド名をUNDERNEATHへと変え、そのまま忘却の彼方へ消え去っていた彼等がまさかメンツを殆ど入れ替えて蘇るとは…

なぁ~んて、バンドHP覗いて偉そうな事今頃宣っちゃってる完全に知ったかぶりです。ハイ。

実際は2nd(当時、何故か日本盤もリリースされていた…)聞いて『なーんかSHADOWLANDのヘッコポ版みてぇでイケてないなぁ…』と思い、完全に記憶の彼方へ消し飛んで行って、ついぞ思い出す事の無かったバンドでした(汗

全く関係ないけど、DALI'S DILEMMAって、いう夢劇場フォロワー系なUSカリフォルニア産プログHMバンドと似た名前なので混同しがちで、コッチの方も同じく1作のみで解散しており、DILEMMAって名前はツキに見放されるよろしくないバンド名なん? と、以前思った事がありましたねぇ…

後に英国のIONAへ加入(00年アルバムから)し活躍する Frank Van Essen(Drums&Violin)が元在籍していた、との知名度のみが僅かに残るマイナー・バンドであった訳だが、まさか Robin Zuiderveld(Key)を中心に、DILEMMA末期メンバーとして活動し、今はKAYAK、AFFECTOR、Neal Morse BAND等で活躍するCollin Leijenaar(Ds&Vo)、Paul"Cray-Z"Crezee(G)等により10年に再結成されていたとは、本作リリース・インフォを見るまで全く知りませんでした。

しかも、本作ではヴォーカル&ギターに Dec Burke(元DARWIN'S RADIO、元FROST*、AUDIOPLASTIK)、ベースに Erik Van Der Vlis(元SINISTER STREET)を迎える強力布陣に加え、オリジナルメンバーであるIONAの Frank Van Essenもヴァイオリンで2曲に参加し、変わらぬその艶やかで美しい美旋律で再結成作に華を添えております。

2nd『Imbroccata』は、フロントマンの Danny Butlerの声質や歌い方、そしてHM要素とポンプ要素をMIXしたような、当時の時流で言う“普通にメロディアスなユーロ・ロックサウンド”でイマイチバンドサウンドの特徴が弱く、そのせいでか Karl Groom& Clive Nolan率いるSHADOWLANDの劣化版バンドのように聞こえていた彼等の音楽だが、本作に置いてはオリジナルメンツは Robin Zuiderveld(Key)残すのみだし、時代も変わったし、で殆ど別バンドとも言える、ミステリアスな雰囲気と妖しい気配を漂わすサウンドを新基軸に、プログレHM的なギターとキーボードのド派手な高速ユニゾンや手数の多い弾けるドラミングの上で熱いインタープレイを交差させつつ、しっかりポップなフィーリングを失うこと無くテクニカルに複雑に大展開するモダン・ユーロ・シンフォ・ロックサウンドを新たに披露している。

23年という決して短くない時間を経てのバンド創作物なので、方向性やサウンドの質等々、当然以前とは全く違うと言っても過言ではなく、フロントマンが Danny Butlerから Dec Burkeへチェンジしている事で楽曲の情感の幅や、表現力の深み、繊細な歌メロ、そして、センチメンタルなサウンドのタッチや、単純に歌唱力や演奏技術が大幅にアップしているのも大きな新作の話題点だが、それ以上に見逃せないのが、タイトでソリッド、そしてテクニカルなリズムを刻むドラムを始め、Loops、Percussion、Additional Keyboards、Sound Design、Urban Sampling(SEの事?)、Programming、Backing Vocals、と以前と違って全編からモダンでデジタリーさを漂わす彼等のニューサウンドへ多岐に渡って貢献し、さらに本作のプロデュースまで担っている Collin Leijenaarの八面六臂(さすが電子音楽の本場オランダで活躍してるだけありますね)の活躍が本作に置いては最も大きな創作面でのプラス要素であったと言わざる終えないだろう。

実際、唯一のオリジナルメンバーである Robin Zuiderveld(Keyboards、Grand Piano、GEO Synthesizer)の印象は、以前のポンプ的ハッタリプレイばかりを聴かせていたプレイと比べ、バランス重視でバンドサウンドに絶妙にキーボードプレイやキーボードサウンドが溶け込んでいる事もあってか総じて薄く、寧ろポップな歌メロとトリッキーなギタープレイを聴かせる Dec Burkeと変拍子をはじめテクニカルな技を見せつけつつしっかりと楽曲に即したセンスある小気味よいドラムプレイを聴かせる Collin Leijenaarが結成した新バンドへ Robin Zuiderveldの方が後から加入した、くらいのサウンドバランスに聞こえるのだから、どうしてDILEMMAの名前に拘ったのか、その理由の方が気になるくらいだ(汗

また、無名ながら Paul"Cray-Z"Crezeeのギタープレイも実にそつなく、泣きのフィーリングや哀愁漂うアコギ、ハードタッチでエッジある攻撃的リフや、しっかりと音の厚みを出す為のバッキングや、モダンなタッチの透明感あるメロディを紡ぐクリアートーンの流暢な演奏等、悪目立ちする事なくしっかりとバンドサウンドを支え多様な彩りをもたらしている点も見逃せない点だろう。

キャリアを重ねたのが無駄でなかったのと、強力なメンバーを迎えられた事が予想以上に素晴らしい化学反応を引き起こしたのか、テクニカルなプレイを織り交ぜつつ、メロディアスでキャッチーな面も垣間見せる、以前と比べものにならないくらいリリカルでハイレベルな、実にオランダらしいモダンでクリアー、それでいて時折垣間見せるダークなメロディや楽曲展開を隠し味に、貪欲に実験的なデジタリー・サウンドも導入して古色蒼然とした70年代プログレの巨人達のサウンド・エミュレートから脱却して見せたセンスは、まさにポンプメタルから新世代ユーロ・シンフォ・ロックバンドへ彼等が生まれ変わった証と言えよう。

勿論、全く斬新なサウンドと言う訳ではなく、所謂80年代ネオプログレや90年代以降のプログレHM、さらにFLOWER KINGS、SPOCK'S BEARD、Neal Morse BAND等からの影響が聞き取れるものの露骨なフォロワー臭は無く、即効性のある強烈に個性的なシンフォ・サウンドと言えないけれども、アコギの爪弾きや艶やかなヴァイオリン、センチメンタルで軽やかなピアノ等々のサウンドで如何にも叙情的ユーロ・サウンドといったウェットな感触も保ちつつ、SEやプログラミング等の如何にもデジタリーで冷ややかなサウンドを交差させ、誰かに似ているようで誰にも似ていない独特な寂寞感の漂う世界観と隙間があるようで実際はジックリと造り込まれたサウンドが漣のように紡がれゆくのに耳が惹きつけらっぱなしだ(*´ω` *)

スタンダードでオールドスタイルのシンフォ・サウンドではないし、幾分かHMチックなサウンドや、ポップでキャッチーな点も多々あって説明するのが難しく、さして知識がある訳でないので分かり易い例えバンドが思いつかず申し訳ないが、是非このカラフルで軽やか、それでいてミステリアスで不可思議なサウンドにユーロ・シンフォ・ファンな方ならば一度触れてみて欲しい、そう願わずにおれません。

メンツがメンツだし、このま安定して活動出来るのか定かではありません(汗)が、是非とも次なる新作を今度こそ早めに届けて欲しいものであります。






# by malilion | 2018-12-09 15:55 | 音楽 | Trackback

若き日の Dan Swanoが挑んだ北欧プログレ・ポップバンドUNICORNの幻の音源がリリース!

c0072376_12235284.jpgUNICORN 「A Collection Of Worlds ~Resurrectio~」'18

90年代にMELLOW RECORDSへ2枚のアルバムを残している、若き日の Dan Swano(Lead Vocals、Drums)が率いていた、Peter Edwinzon(Piano、Synthesizers、Vocals)、Anders Mareby(Guitars、Flute、Vocals)、Per Runesson(Bass)の4名からなる北欧スウェーデン産プログレ・ポップバンドのフルアルバムデビュー前に残していたデモテープがリミックス&リマスターを施されリリースされたので即GET!

メロディアス・デスHMバンドEDGE OF SANITYやゴシック・ロックバンドNIGHTINGALEのリーダーにしてマルチプレイヤー、音楽プロデューサーとして著名な北欧メロデス界の重鎮、スウェーデン人ミュージシャン Dan Swanoが10代の頃に結成し、活動していたHRバンドから発展した、EDGE OF SANITYの活動と並行し断続的に2枚のフルアルバム(イタリアのMELLOW RECORDS盤、マニア泣かせ…)、2枚組コンピ(『A Collection of Worlds PartⅡ』と3rdデモテープ『The Weirdest of Tales』'91を収録)、4枚組CDのBOXセット・コンピレーション音源集、そして4本のカセット・デモテープを、90年代後期に活動停止するまでに残した北欧プログレ・ポップバンドの、最初期のデモテープ『A Collection of Worlds PartⅠ』'88と『A Collection of Worlds PartⅡ』'89の音源をまとめた、まさに幻の音源のリリースだ。

今や北欧メロデスのみならず多岐に渡って精力的に活動している Dan Swanoのブレイク前のプレイ(ヴォーカルとドラム)が聞ける幻の音源とあってか、インディ・レーベルからながら初期のデモテープ音源はこれまで幾度かCD化されて来たが、本作は単なる発掘音源CD化ではなく、『A Collection of Worlds PartⅡ』の音源の曲順を変化させ、17年リミックス&リマスター、さらにヴォーカル・パートのみ11年再録音源に差し替えてのリイシュー作となっている。

本作のサウンドは、後にMELLOW RECORDSよりリリースされる2作のサウンドと比べるまでもなく特異で、若さ故に才気走るのが抑えきれぬのかハッタリ連続のテクニカル押しな上、スピィーディでパワフルなHR的要素が強く、さらに80年代初期に英国で唸りを上げたポンプ・ムーブメントの影響(間違いなくIQとMARILLION)が垣間見え、如何にもプログレ、という複雑な構成の楽曲(Dan Swanoは70年代プログレッシヴ・ロック愛好家)が実に個性的で、そこへ Dan Swanoの中域メインなヴォーカルを活かしたASIA的キャッチーな歌メロ要素やメンバー全員からなる分厚く爽やかなコーラスを加え、さらに後の活動が予見出来る Dan Swanoの自己主張が強くテクニカルで頑張り過ぎ(汗)なドラムスが目まぐるしい変拍子をそこかしこに叩きつけながら強引に楽曲を推し進める、破綻スレスレながら怒濤の勢いで駆け抜けていく、一種爽快感さえある手に汗握る展開に継ぐ展開な楽曲に、燃え上がるような創作意欲が迸る、ティーンエイジャーのアマチュア・ミュージシャン達の剥き出しな情熱と渇望が漲るサウンドだ。

80年代後期USAインディ・シーンに大量に居たテクニカル・スラッシュメタルバンド達に通じる複雑怪奇で強引な楽曲展開なのだけれど、途中で聞く気が失せてしまうUSA勢と違って彼等は爽快なコーラスやポップでキャッチーな歌メロと一丸となったメンバー達のアンサンブルでなんとか楽曲が破綻しないように力業で纏め上げていて、そんな所は如何にも清涼感あるメロディ創りが得意な北欧ミュージシャン達のプレイだと感心してしまうが、如何せん全体的なサウンドの完成度は低く、勢いとキャチーさで聞き通せるもののプログレ的な艶やかさや構築美、さらにオリジナリティといった点でまだまだ至らず未完成なバンドサウンドなのは否めないだろう。

しかし、10代でこれだけ強力なサウンドと次に何が飛び出してくるか分からぬ怒濤の楽曲展開、そしてタイトでソリッドなプレイを自主制作のデモテープに残している時点で、やはり Dan Swanoは只者じゃなかったと、改めて感心させられますね。

後にデビュー・フルアルバム『EVER SINCE』'93 に再録収録(この時点でベーシストは不在でゲストのプレイ)される楽曲のオリジナル・ヴァージョンを収録している点や、本デモではフルートを効果的に使ってプログレ的なサウンドの彩りと艶やかさをバンドにもたらしていた Anders Marebyが以降はフルートをプレイしなくなり、代わってCelloをプレイ(何故かゲストでフルート奏者を招く…)するようになるという変化や、よりスタイリッシュなバンドサウンドへ変化し、Peter Edwinzonのテクニカルで情熱迸るHR的プレイは影を潜め、代わってセンスあるシャレオツでモダンなキーボードプレイや華やかな音色のシンセでサウンドの整合感を上げていくようになる変化が分かったり、一番の大きな違いは Dan Swanoのド派手で騒々しいドラムプレイが大人しくなってタイトさに重きを置いたシンプルなプレイへと変化した点(w)等の、軽めなサウンドなMELLOW RECORDSのアルバムとの差異を楽しめるのでファンは勿論、ポンプからシンフォへ向かう過渡期のHR風味あるハードシンフォ好きな方にもマストアイテムと言えるだろう。

後にさらにモダンさとポップでキャッチーさが上がって、テクニカルさを抑えて整合感と北欧ならではの透明感が増していく彼等のサウンドですが、その変化は英米問わずこの時期のメジャーへの展望を画策するポンプ系バンド全般に言える事なので苦言を呈する気も無いし、軽やかなポップ度が上がって聞きやすくなった方が個人的には好みなので大歓迎だったのですが、本作で聞ける北欧バンドらしいHR要素を含みつつ変拍子を巧みに活かした、爽快なコーラスとフックある歌メロが心地よい、パワフルな疾走感を備えたテクニカルな初期シンフォ・サウンドが、もしそのまま発展したのなら一体どういったユニークで面白いサウンドへ進化したのだろうか、とか、間違いなく後のプログレHMバンドの先駆となりえたのに…惜しい! などなどと、妄想せずにはおけません(*´ω` *)

しかし、気になるのはアルバムタイトルに“Resurrectio(復活)”って入っている事で、これはUNICORNとして再び活動してくれるって事なんですかね?

今までの再発は旧音源のCD化でしかなかったけれど、本作はちゃんと新たに再録しているパートもある訳だし、きっと Dan Swano的にも若き日に成功を夢見て活動していたバンドに愛着はあるでしょうから、是非このまま本格的に活動再開して欲しいものです。

因みに、ジャケットのデザインは4枚組BOXセット『A Recollection Of Worlds』'01 の目を惹く人物(メチャ、目立つww)をピックアップしてトリミングしたリデザインされたものとなっている。



# by malilion | 2018-12-06 12:12 | 音楽 | Trackback

英国ハードポンプの雄、TWELFTH NIGHTが久しぶりに新録音源をリリース!

c0072376_13291953.jpgTWELFTH NIGHT 「Sequences ~Limited Edition~」'18

パンク色の強いシアトリカルでユニークなヴォーカルとニューウェーヴとNWOBHMの影響大なハード・シンフォサウンドが特徴だった、同時期デビューのポンプ勢の多くがエミュレートしようと試みていた70年代プログレの巨人達のサウンドから最も離れた位置に存在する特異点であり80年代UKポンプ・ロックの代表的グループの一つ TWELFTH NIGHTの、1994年以来初めてとなるスタジオレコーディング作が久しぶりにリリースされたので即GET!

07年再結成前の05年に、出るわ出るわの蔵出しLIVE音源の嵐と、続くボートラ追加再発既発リマスター盤攻勢、そして再結成という流れに嬉しいは嬉しいけど、今は亡きカリスマフロントマン Geoff Mannを出汁にした集金目的がアリアリで些か引いていた古参ファンも多かった事(かく言う、私もデス)でしょうが、本作の制作メンツは再結成に合わせてのLIVEに都合良く呼ばれたり呼ばれなかったりな元メンバー Andy Sears(Vo)に代わって、LIVE盤『MMX』'10 にてギタリストとしてプレイしていた、かってネオプログレ・バンドLAHOSTのフロントマンであり、現在はサウンドエンジニア、プログラマー、アレンジャー、もこなす裏方作業メインでマルチパート・セッションミュージシャン Mark Spencer(Vocals、Rhythm Guitar、Keyboards)が7代目フロントマンに迎えられており、後はオリジナルメンバーの Brian Devoil(Dr)と Andy Revell(G)の三人のみがバンドメンバーで、残りはサポートの Andy Faulkner(B ex:WALKING ON ICE、ex:JUMP)、そして同郷シンフォ・バンドGALAHADの Dean Baker(Key)の五名での制作となっている。

『Sequences』は、約40年前に最初に演奏されたインストゥルメンタル・トラックで、『Live at the Target』'81 にも収録されているバンド初期レパートリーの重要曲であり、LIVEでは Geoff Mannが軍服に着替えて勇敢な兵士のパフォーマンスを行う、ギグのクライマックス曲として幾度も演奏されてきた Geoff Mannの印象がとみに強い彼等の代表曲の一つでありました。

殆どバンド結成当初から存在していたと言える『Sequences』ですが、デモテープにその歌声を残すのみなアメリカ人女性ヴォーカリスト Electra Mcleod嬢をはじめ、このバンドを通り過ぎていった幾人ものヴォーカリスト達がその時々に歌詞の断片を残してきたが一向に完成する事はなく、けれど Geoff Mannがフロントマンの座につくと、彼の妻の祖父 Jack Parhamの従軍経験を元にした、イギリスのイングランド、チェシャーの町ウォリントンの若い男が軍隊のボランティアを経て、地元の南ランカシャー連隊(1881年から1958年にかけて存在した英国軍歩兵連隊)の入隊にサインし、第一次世界大戦の戦場へ出奔、そして変わり果てて故郷へ戻ってくる、という兵士の苦悩や栄光を描いたドラマチックな歌詞と物語を書き上げて遂に楽曲が完成するものの、Geoff Mannがバンド脱退を決意した為スタジオ録音される機会を逃し、The Marqueeでの Geoffのお別れLIVEでのプレイが録音され、84年リリースのLIVEアルバム『Live and Let Live』にその一部(約17分の有名なヴァージョン)が収録されるのみとなっていた、バンドメンバーにとってもファンにとっても馴染み深い、曰く尽きの古い古い楽曲であります。

本作はそんな『Sequences』の、2018年ヴァージョン(23分を越えるヴォーカル入り)、インストゥルメンタル・ヴァージョン、主要3セクションから成る組曲ピアノ・ヴァージョンという、同一曲3バージョンを初めてスタジオ録音にて再録したEPで、たった一曲『Sequences』だけ収録した作品ながら、収録時間は計57分とアルバムに匹敵するヴォリュームとなっており、如何に彼等がこの曲を大事に思っているかが伝わってくる入魂の仕上がりだ。

注目の Mark Spencerのヴォーカルについては、歌詞を完成させた作者に敬意を現す為か、それともかってのLIVEプレイに即した歌メロをなぞると必然的に似るのか、はたまたバンドの方向性的にそう求められたのか定かではありませんが、恐らくかなり意識して Geoff Mannっぽいパンク風でシアトリカルな歌い方をしているものの、声質が全く違うので Geoff Mannのコピーというネガティヴな感情は全くわかず、普通に下から上まで幅広い音域を持ち、その上さらに器用にどんな楽器もこなすミドルレンジ主体な歌の上手いフロントマンがTWELFTH NIGHTに迎えられて良かったなぁ、という印象しか持ちませんでした。

Mark Spencerのエモーショナルなヴォーカルが大活躍する2018年ヴァージョンは、当時のアレンジやフィーリングに全く囚われぬ、独創的で響きが強く、鮮明で印象的な楽曲へ見事にリビルドされた、まさに今風な英国シンフォニック・ロックへと仕上げられており、ヴァイオリンをフィーチャーしたスケールの大きいオーケストレーションや分厚く雄々しい合唱隊のコーラスを駆使したド迫力のサウンドで、死臭漂う激しい戦場の情景描写や兵士の悲痛な心情の吐露を訴えかけ、これまで発表されてきた『Sequences』に馴染んでいる旧来のファンにこそ、特に新鮮な感覚と新たな息吹を予感させる事でしょう。

新たに録音されたインストゥルメンタル・ヴァージョンは、映画サントラよろしく銃声や雄たけび、隊列の足音、囁くような無線の声、遠くで唸るように鳴る空襲警報、吹き荒ぶ風の音、高まる鼓動、雨音と雷鳴、そして兵士の叫び等の効果音や、悲壮な戦場を思わせるダークで重厚なコーラスなどが追加されており、『Live at the Target』'81 に収録された楽曲からさらに拡張したセクションが耳を惹き、いくつかのパートやフレーズは明らかにこれまで発表さて来たアレンジより素晴らしく、爪弾かれる哀愁漂うアコースティック・ギターをはじめ、不穏なシンセパートや荘厳なオーケストレーションを奏でるキーボードプレイの全てが、ほろ苦く感傷的なメロディで訴えかけ、セピアカラーのインナーの写真が思い起こさせるノスタルジックで歪な第一次世界大戦の兵士の苦悩や栄光、そして戦場という狂気の世界を圧巻のスケールで描き出していく。

Dean Bakerの華やかで繊細、そして物憂げで悲壮感漂うピアノが大活躍する主要3セクションから成る組曲ピアノ・ヴァージョンは、インストゥルメンタル・ヴァージョンをベースに、よりコンパクトでピアノ独奏曲風なタッチを加えたアレンジが楽曲に成されており、全てヴォーカルレスな楽曲だが、最初の希望あふれる軽やかな雰囲気から一転、汽車の音のSEが挿入され、兵士が故郷へ戻ってきた、けれど以前とは違う状況なのをピアノが同じ主旋律を弱々しく呟くように気怠げに響かせる事で暗示させる、エピローグ的な扱いの楽曲となっている。

なお、真っ赤なヒナゲシが美しく咲き乱れる草原を、亡霊のようなモノクロの兵士達(第一次大戦当時の兵士達の姿)が背を向けて進むジャケが実に印象的な本作は、1918年11月11日の停戦協定をもって終決した第一次世界大戦の終戦100周年を記念してリリースされており、本作の売り上げは、ロイヤル・ブリティッシュ・レギオン(英国軍の退役軍人の生涯サポートを提供する慈善団体)へ全て寄付される模様だ。

因みに、CD盤面には赤いヒナゲシの花輪(追悼の意と新たな人生の開始を表わしている)が印刷されており、CDを取り外すと、19世紀の英国詩人 Laurence Binyonの代表的な作品『Fall the Foren』から抜粋した“思い出の抒情詩”の、戦争のあらゆる犠牲者への賛辞を述べた有名な一節がサークル状に印刷されており、その中心には押し花の赤いヒナゲシが印刷されているのが目に飛び込んでくる仕掛けが施されており、この赤いヒナゲシ(scarlet corn poppy)は欧州では戦死者追悼の象徴で、対ナポレオン戦争で荒廃した欧州各国の戦場では、戦死者の遺体の周囲に赤いヒナゲシが生え、荒れた土地がヒナゲシの野原に変貌した事に由来している。

ニューメンバーを迎えたTWELFTH NIGHTの新録音源リリースが今回の終戦100周年記念の為だけのものなのか、それとも今後さらにメンツを補充、もしくは旧メンバーを呼び戻して(オリジナルベーシストで再結成にも参加してた Clive Mittenにも本作に参加して欲しかった…)再び精力的な活動を再開させるのか不明ではありますが、本作の極上の仕上がりを聞くに、まだまだ彼等は第一線で活躍出来るポテンシャルを持っているバンドなのは明らかなので、旧譜再発やLIVE音源メインのリリースをここらで一端休止させて、本格的に新しい楽曲を満たした新譜を届けて欲しいものであります。




# by malilion | 2018-11-24 13:24 | 音楽 | Trackback

東欧ポーランドのKING CRIMSONこと、LIZARDが新譜をリリース!

c0072376_13080535.jpgLIZARD 「Half-Live」'18

後期CRIMSONからの影響大な硬派サウンドを経て、東欧特有のモダン・ダークネス風味を加味したメタリックなシンフォHRサウンドを前作で披露したツインギター&キーボード入り5人組の彼等だが、2年ぶりとなる本作7thではヴァイオリンをフィーチャーした正に“ポーランドのCRIMSON”を地で行く、モダンでメロディアスなダーク・シンフォ・サウンドを披露している。

常にバンドメンツが流動的であった彼等だが、なんと本作はバンド結成25周年を記念した前作と同一メンツでの制作だ。

そんなバンド状態の安定が呼び水となったのか、これまでもアルバム全てを使った複数小曲より成る一大組曲や数曲の大曲のみで構成された実にプログレ・バンドらしいアルバムをリリースして来た彼等だが、本作に置いては遂に43分超えな一大曲、アルバムにたった1曲(CDではトラックが区切られてはいる)のみ収録の作品となっており、前作で多数招かれたゲストプレイヤー陣の名は無く、唯一美貌のJAZZ系ヴァイオリニスト Dominika Rusinowska嬢のみが招かれ(17年リリースの先行シングル『Single Omen』では元メンバーのヴァイオリニスト Krzysztof Maciejowskiがプレイしていたが本作には不参加。なので一部音源を Dominika嬢の演奏に差し替えている?)プレイしている他は、バンドが一丸となってクリエイティビティを高め、プログレ・バンドらしく持てるテクニックと発想力の全てを出し切って挑んだ、意欲的な野心作と言えよう。

しっとりたおやかなピアノの調べに導かれ、透き通るようなヴァイオリンの美旋律が柔らかに重なり合う導入から、一転して緊張感高まるJAZZロック張りのテクニカルなサウンドへ雪崩れ込む様は、前作と趣は違えど同一な作風に思え、けれどそこからウネる野太い邪悪なベースと妖しげなメロディを刻む冷ややかなシンセ、さらに暴れ回る手数の多くタイトなドラムスが不協和音を思わせる不気味なヴァイオリンやノイジーなギターの音色と絡みあって予想外の怒濤の展開を見せ、そんなサウンドの上にデジタル処理されたシアトリカルなヴォーカルのシャウトと語りが波状攻撃で突き刺さり、これまでに培ってきた東欧風モダン・ダークネス・サウンドと『Red』期KING CRIMSON張りなヘヴィで硬質なサウンドを、時に艶やかに、時に妖しく、その弦を震わせ旋律を奏でるヴァイオリン主導でスリリングに交差させながらストーリーを語る様は、正に“21世紀風にアップデートされたKING CRIMSON”と呼べる圧巻のサウンドだ。

これまでにも幾度か方向性が変化し、一時期などは鈍色モダン・ダークネスで塗りつぶされた陰鬱サウンドを披露して辟易させられたが、ソリッドな演奏とメロディアスな叙情性が抜群のアレンジで溶け合う東欧らしい構築美あるサウンドを、艶やかなヴァイオリン入りで奏でる彼等の“スタンダード”とも言える本作のような作風は大好きなので、アルバム一枚で一曲という如何にもプログレな作風で長尺曲なものの、万華鏡のように刻一刻と変化するサウンドを文句無しに楽しめ大満足です(*´ω` *)

某輸入盤店の“もし『Red』に Eddie Jobsonが参加していたなら、と想像させるようなサウンド”という宣伝文句が言い得て妙な、東欧ならではのエキゾチックさも漂わすファンタジー・サウンドとダークでモダンなシンフォ・サウンドをタップリ詰め込んだ、他のユーロ圏バンド達とハッキリ毛色の違う独特な魅力溢れる一品で、それに加えて以前の清涼感も合わせ持ったエキセントリックで奇妙な歌メロをもう一歩モダン化させた、オペラチックな歌い上げや、囁くような語り、そしてパワフルなシャウトと、正に七変化の活躍を見せるリーダー Damian Bydlinskiの歌声とテクニカルなギタープレイが、さらに本作を特異な存在にしているように思う。

まぁ、デジパック内に『ハードで難解、そして不快な音楽』『人々に今、自分で考えさせる』とか明記してるだけあって複雑怪奇な物語をコネくり回しているのは自身も理解しているのでしょうが、それでも今の本家KING CRIMSONのように、プログレとどこか違う地平へ旅立ってしまっていないし、あくまでヴォーカルメインな作風(リーダーがフロントマンだし、ネ)な彼等のサウンドの方がとっつき易いし、聞いていて心地よい(やっぱ、ヴァイオリンの活躍がデカイよなぁ~)と言えるのではないでしょうか?(汗

所謂、一般的に言う“シンフォ・サウンド”ではないけれど、ハードにメロゥにダークな叙情を発散させつつ、緊張感を高めるノイジーなツイン・ギターが縦横無尽に交錯し、CRIMSON張りに硬質で技巧あふれるクールなポリ・リズムを刻むリズム隊と、冷ややかでエキゾチックなファンタジー・サウンドを刻むキーボードの音色が重厚でダークネスな楽曲の裡で不規則に煌めいて輝きを一層に増し、それらが渾然一体となって生み出す華麗な東欧風モダン・シンフォサウンドを、艶やかに舞うヴァイオリンの美旋律が仄かな甘味と繊細な感触で薄っすら包み込んで、なんとも言えぬ不思議な感覚を呼び覚ますアルバムで、ユーロ圏のプログレやシンフォ・サウンドにマンネリを感じているダイハードなプログレ者な諸兄や、辺境サウンド好きな方に是非にお薦めしたい一作だ。

緻密に計算され描かれた物語に思える本作だが、注意深く耳を傾けると、前作『Troche Zolci Troche Wiecej Bieli』'16 のフレーズが楽曲に織り込まれていたりと、意外に彼等の遊び心が窺えたりするのも実に興味深い。

YESのジャケでお馴染みな Roger Deanっぽいイラストにニヤリとさせられる、SFチックな物語を思わせるデザインのジャケットに包まれた3面開きデジパックな本作、何時もの如く東欧盤はプレス数少なめでしょうからご興味ある方は早めに入手しましょう。




# by malilion | 2018-11-23 12:59 | 音楽 | Trackback

英国産プログレ・ポップバンドIT BITESの未発LIVE音源BOXがリリース!

c0072376_14013619.jpgIT BITES 「Live In London ~Deluxe 5CD BOX~」'18

英国産プログレ・ポップバンドの1st~3rd期にあたる、1986年、1988年、1990年のロンドンでの3公演を収録した、彼等の全盛期の様子を伝える初出LIVE音源が5枚組BOXセットにて自主盤(500セット限定!)ながらオフィシャルリリースされたので、遅ればせながらGET!

まぁ、音源自体は今はDLで労せず入手可能ですが、やはりプログレ好き者としては現物を入手せねばネ!('(゚∀゚∩

◆◆◆ 閑話休題 ◆◆◆

その昔、80年代の中頃にそのバンドは英国の4人の若きミュージシャン達によって結成され、シーンに姿を現した。

70年代に英国を中心に開花し全世界で全盛を誇ったプログレシヴ・ロックの勢いは、けれどニューウェーブとパンクの荒波によって瞬く前に消え失せ、メジャーレーベルはプログレを過去の遺物として見捨て、数々のビッグバンド達が姿を消していった後の事だ。

プログレは時代遅れ、と嘲られるテクニカル・ロック不毛の時代、それでもプログレ・ファンはまだ全世界に存在していて、大衆やメディアは『紛い物(ポンプ)のサウンド』と揶揄したが、80年代初期から短期間だけ勃興したネオ・プログレッシヴロック・ブームに乗って、インディ・シーンから次々現れるYESフォロワーやGENESISフォロワー達が奏でる古式ゆかしいサウンドに彼等は心慰められておりました。

何故なら、往年のプログレ・バンド群が80年代に入って再始動し新作を発表したものの、サウンドをガラリとポップに変えて蘇りビッグヒットを掌中にしたYES、強かにサウンドを変えたPINK FLOYD、メンバーをチェンジしHMへ接近したEL&P、別バンドへ変わり果てていたKING CRIMSON、なんの迷いも無くポップロックを披露しヒットチャートを賑わすGENESIS等々、かってのプログレ・ファンを熱狂させたサウンドは最早そこに無かったからです。

そんな最中、メジャーレーベルと契約し颯爽と登場したこの風変わりな名前の英国バンドは、プログレ・ファンがシーン復興を信じるに足る、耳を惹きつけ離さぬ楽曲の数々や素晴らしい演奏技術は、来たるべきプログレサウンドの未来を予感させる期待の新鋭でありました。

もっとも彼等の奏でるサウンドは、どこか根暗で、やたら長尺な演奏をひけらかす難解な、所謂古き良きロック・クラシックなプログレ・サウンドではなく、モダンでコンパクトが持て囃される華やかな80年代という時代にマッチし、ニューウェーブやUKポップスといった当時のメジャーシーンを賑わすメインストリームサウンドを十分に意識した、独特なポップセンスと高度なテクニックに裏打ちされたプログレ感覚とヒネリの効いたアレンジや曲展開で聴衆を魅了する、若者らしいフレッシュでモダンなセンスが活きる明るく軽やかなロックサウンドが身上の、全く過去に囚われぬ『新世代のプログレ』を提示していたのですが━━

本BOXは、Francis Dunnery(Vo&G)、John Beck(Key)、Dick Nolan(B)、Bob Dalton(Ds)のオリジナルメンバーによる、MARQUEE、ASTORIA、HAMMERSMITH ODEONのロンドンで行われた3つのギグの様子を約4時間タップリと収録した、紙ジャケ5枚組からなる貴重なLIVE音源だ。

既発アルバム3枚に加え、この時点で未発売で結局完成に至らなかったオリジナルメンバーによる4thの為に用意されていた楽曲(後に Francis Dunneryのソロに収録されたり)を、3曲収録している点はファンならずとも見逃せないだろう。

マネージメントはASIA、元YESの敏腕マネージャーとして知られる Brian Laneが行い、当初は『第2のASIA』としての売り込みが考えられていただけあって、スタジオ盤ではキャッチーでポップなサウンドで、コンパクトな楽曲を演奏していた印象が強い彼等だが、本作以外にも複数リリースされているLIVEアルバムを耳にした諸兄ならご存じの通り、LIVEではよりハードなタッチのロックサウンドを押し出したLIVEならではのラフさも魅力なスリリングでダイナミックな演奏を聞かせ、同時代のHRバンドに負けず劣らずの勢いと、プログレファンを魅了したコーラス、プレイ、全てが渾然一体となった一糸乱れぬアンサンブルで聴衆を掌握していた、当時の空気感と会場の熱気が伝わってくる良盤だ。

LIVE LIST

CD1:The Marquee:21st July 1986
CD2:The Astoria:13th May 1988 - Part 1
CD3:The Astoria:13th May 1988 - Part 2
CD4:The Hammersmith Odeon:7th April 1990 - Part 1
CD5:The Hammersmith Odeon:7th April 1990 - Part 2

また、90年4月の音源は Francis Dunnery脱退前の最後のUKミニツアー(4th制作の為ロサンジェルスでレコーディングに入るが、音楽性の相違から脱退するのは7月)からとなっている。

03年発掘LIVE盤『LIVE IN MONTREUX』にボーナス収録された『Once Around The World』を除き音源は全て初出となっており、マスターはメンバーの Bob Dalton監修に加え、当時バンドのLIVE Mixerを担当していた Tom Oliverの手による、自身所有のマスター・テープを元にしたリマスタリング音源を使用と最上音質(時代柄プチパチなノイズは聞こえるけど)なクオリティに加え、カラー12ページのブックレット封入と自主制作故の貧弱な装丁なんて事は無いので、Bootで同じ会場の音源を既に入手済み、というハードコアなファンにもお薦めな一品と言えよう。

ファーストアルバムからして既に新人離れした完成度と、ポップでコンパクトなモダンサウンドのその裡に、シーンから失われて久しいブリティッシュ・ロック感覚がしっかりと息づくハイクオリティなアルバムを引っさげてデビューした彼等が、82年結成90年解散と10年にも満たぬ短い活動期間ながら3枚の素晴らしいプログレシヴ・ポップ・アルバムを“あのプログレ冬の時代”にメジャーシーンに遺してくれたのを本当に本当に感謝したい(*´ω` *)




結局シーンは蘇ることなく、無数に現れたインディバンド達は軒並み自主制作というアンダーグラウンドな活動へ移行し、サウンドの方もポンプからシンフォへと移り変わっていく事になるのだが…orz

バンドは06年に Francis Dunneryに代わって John Mitchellをフロントマンに据えて再結成し、今も活動を続けている。

もっとも、15年に John Beckが事故で右手と右腕を骨折して以来、活動休止中なのが残念だけど……

再び素晴らしい新作をひっさげて彼等がシーンへ戻ってくるのを期待したい。




# by malilion | 2018-11-17 13:53 | 音楽 | Trackback

USプログバンドGLASS HAMMERが、新基軸サウンドを引っさげて新譜をリリース!

c0072376_20191280.jpgGLASS HAMMER 「Chronomonaut」'18

現YESのヴォーカリスト、Jon Davisonが在籍していた元バンド、としてインディながら世界中から注目を浴びる事となったUSシンフォ・バンド6人組が、25周年レアトラックス集アルバム、LIVE作を挟んで、スタジオ作としては前作『Valkyrie』'16 以来2年ぶりとなる17thをリリースしたので、ちょい遅れてGET。

前作が散々な出来だっただけに、本作に手を出すのは少々及び腰でありましたが、事前情報で彼等の作品の中でも、最も技巧的でキーボード・オリエンティドな作風とインディ・プログバンド丸出しなバランス無視のフォロワー感剥き出しで弾き倒し展開(この当時はオリジナリティは薄かったけど勢いハンパなかったなぁ…)を見せた初期の代表作4th『Chronometree』'00 の続編的コンセプト・アルバムとの事で、意を決して購入してみました。

デビュー以来メンバーの出入りが激しい彼等だが、本作制作メンツは Steve Babb(Bass、Keyboards、Lead & Backing Vocals)と Fred Schendel(Keyboards、Guitars、Backing Vocals)のバンド創設メンツはいつもの如く在籍し、14年『Ode To Echo』から加入した Aaron Raulston(Drums)と Susie Bogdanowicz(Lead vocals)も顔を揃えて本作にも引き続き参加しており、ここ数年のコアメンバーとしての地位を固めつつあるようだ。

で、現YESのヴォーカリスト Jon Davisonと長らく参加していたSALEM HILLの Carl Grovesに代わって本作から参加の男性ヴォーカル二人は、同郷USプログ・バンドで以前からバンドと交流があり、17年に新譜をリリースしたばかりなDISCIPLINEのリーダー Matthew Parmenter(Lead Vocals)とPatton Locke(Lead Vocals)なる新人ヴォーカリストによる男女3人のヴォーカリスト体制が構成されており、Matthew ParmenterはDISCIPLINEでキーボードやヴァイオリンをはじめ多種多様な楽器もプレイするマルチプレイヤーなのだが、本作に置いてはあくまでヴォーカリストという立ち位置で参加している模様だ。

まぁ、LIVEでは楽器をプレイするかもしれないが、本隊バンドDISCIPLINEとの兼ね合いもあるし、アルバムでのプレイは Steve Babbと Fred Schendelに任せているのだろう。

そして、長らくギタリストであった Alan Shikohの名は無く、本作にはパーマネントなギタリストは在籍せず、ゲスト・ギタリストがそれぞれの楽曲でプレイしているなどバンドメンツが常から流動的な彼等だが、その彼等がこれだけ拘ってヴォーカリストを3人揃え続けると言う事は、トリプル・ヴォーカルはGLASS HAMMERの定番バンド・フォーマットであり、オリジナリティある編成と Steve Babbと Fred Schendelが考えていると見て間違いない。

今となってはゴス系のみならず、ロックオペラ系のプロジェクトをはじめメロデス・バンドでさえ男女3人ヴォーカルな構成が多々見られるので、ズバ抜けて個性的な編成とも言えないのだが、確かにプログレ系に限っては3人もフロントマンがいるバンドは少ないでしょうね…なにせ、元からヴォーカルの活躍する場が少ない音楽形態だし…(汗

さて、本作の内容についてだが、00年リリースのSFチックで冗談めいたコンセプト作『Chronometree』の続編作らしく、エイリアンとコンタクトしていた若いプログレ・ファンだったトムが大人になった想定で、自身が率いるプログレ・バンドThe Elf Kingでの1980年代の成功に苦しみ、70年代のプログレ黄金期へ戻り、そして姿を消す…という、70年代のプログレシッヴ・ロックをリスペクトしつつ織り成す『究極のプログレ・ファン』のファンタジックな物語が綴られたコンセプト作だ。

続編と言っても『Chronometree』は殆どキーボードメインのインスト作のような造りで、ヴォーカルは完全に脇役だったのでアルバムを聴く前からアルバム構成や印象は全く違っているだろうと予想していたが、予想通り男女三声の分厚いヴォーカルをメインに、バンド初となるトランペットやトロンボーンなどホーン・セクション、リード管楽器を大々的にフィーチャーした『なんか初期CHICAGOっぽくね!?』という分厚いサウンドがある意味で新鮮な音像で、従来作と比べると大幅に控え目になったオーケストレーション、そして派手目なブラス・パート、そこへブルース、プログレッシヴロック、デジタルサウンド、アンビエント等の多様な音楽要素を組み合わせ、YESを筆頭に、GENESIS、VDGG、KING CRIMSON、PINK FLOYD、GENTLE GIANT、TANGERINE DREAM等の70年代プログレッシヴ・ロックバンドへのトリビュートを感じさせる、壮大で重厚、旋律的で叙情的な“これぞプログレ”と言わんばかりに複雑なアレンジと構成から成る楽曲が詰め込まれた野心的な冒険心剥き出しの意欲的アルバムとなっている。

『Chronometree』の続編作ながら、時間的間隔も開いたし、バンド自体もその間に進化したり、今やメンツも方向性も全く違っているので当然ながら、GLASS HAMMERお得意のYES+EL&Pというような派手でスピーデイ、そして畳みかける疾走感ある、如何にもUSAプログレと言わんばかりなパワー・サウンドを叩きつける豪快な勢いは最早どこにも感じられず、幾分マッタリ気味なテンポとサウンドが、初期作に比べ本当に聞き易くなったモダンなアレンジを施された、70年代プログレッシヴ・ロックバンド群を思わすサウンド(プログレファンならニヤリとしちゃう)ピースを組み込んだ楽曲が、シットリと、そして艶やかに展開していく。

注意深く耳を傾けると実際はかなりのキーボードパートが聞こえるのだが、ちょっと聞きでは今までで一番キーボードの活躍する場面が少ないように聞こえ、本作はGLASS HAMMER始まって以来となる非常に独特な作風のアルバムと言えるだろう。

前作のとっ散らかった纏まりない作風を思えば、本作は余程マシで良い出来なアルバムと言えるけれども、GLASS HAMMERファンが期待していたUSAプログ作かと言うと、ちょっと疑問は残りますね……なんかJAZZロックっぽく聞こえるんで、そこをどう捉えるかで評価が別れるかも…

また Susie Bogdanowicz嬢の可憐な歌声、そして注目の Matthew Parmenterのリード・ヴォーカルパート全てに言えるのだが、やはり歌メロのアレンジや質はイマサンな上に、 折角の三声ヴォーカルの分厚いハーモニーのハモり具合も今一つというガッカリな仕上がりにゲンナリな気持ちを隠せず、 Steve Babbと Fred Schendel両氏は余程ヴォーカルパートに馴染みがないのか、フックある耳に残る歌メロを考えられないのか、バックのサウンドの質が上がってモダンなアレンジのポピュラー音楽に近い音像へ接近すればする程に、大きなマイナスポイント(USプログレハード・バンドはコーラス綺麗で上手いバンド昔から多いので余計に…)として浮き上がってアルバムの完成度を著しく貶めているので、今後よりメジャーな展開をバンドは目指しているのだろうし、そうであるならば早急にその点は改善すべきだろう。

複数ゲスト参加しているギタリストの中でも注目なのは、カナダのRUSHフォロワーなプログHMバンドTILESの中心人物で、DISCIPLINEへは17年作から参加した Chris Herinが2曲でその見事なプレイを披露しており、間違いなくバンドメイトの Matthew Parmenterの紹介によるものだろう。


# by malilion | 2018-11-14 20:11 | 音楽 | Trackback

北欧のSKID ROWなDAYNAZTYが、一気にモダン・デジタリー・ポップサウンドへ急接近な新譜をリリース!

c0072376_18090751.jpgDAYNAZTY 「Firesign」'18

北欧スウェーデン産ツインギターの5人組ツインギターHMバンドが約2年半ぶりに6thをリリースしたので、おっかなビックリしつつ即GET!

北欧のSKID ROWとでも言うような、LAメタル的華やかなアメリカンHMと北欧HM要素をMIXしたキャッチーでメロディアスなサウンドが身上の音楽性でデビューした彼等だったが、前々作で昨今の新人バンドが陥り易いモダン・ダークネス病とでも言うような鈍色USサウンドへ急接近し、持ち前の華やかだったサウンドをスポイルさせガッカリさせ、前作でいくぶん初期風なメロディアスさが戻って安心させてくれ、続く本作でどういった変化が見えるのかと興味津々だった訳ですが、今度はヘヴィな方向と真逆な方向へ進んだ模様でこれには少々驚かれました。

より北欧HM的な爽快感あるサウンド要素が強まり、さらに一時期ザクザクした疾走するソリッドでメタリックなギターリフがモダンヘヴィネスを強力に主張するサウンドへ傾倒していたにも関わらず、本作では一気にベーシスト Jonathan Olssonが奏でるキーボードサウンドの比重がググッと増え、華やかさが増すのと同時にサウンドが全体的に軽やかになって、メロハー的サウンドと言うよりもさらにポピュラリティが高い普遍的ロックサウンドへ接近するとは完全に予想外。

この方向性の急激な変化は、恐らくフロントマンの Nils Molinが17年に同郷のメロディック・デスメタル・バンド、男女3人のスクリーム・ヴォーカリスト、クリーン・ヴォーカリストを擁するモダンなエレクトロコア・スタイルが特徴的なAMARANTHEへ電撃加入した事が大きく影響しただろう事は想像に難くありません。

DAYNAZTYでは刺身のツマ状態だったキーボードのみならず、他にもSEや電子楽器やコンピューター処理したサウンドを積極的にバンドサウンドに取り込んでいるAMARANTHEでの活動を経験し、そしてDAYNAZTYより知名度がありHMファンから支持されているのを間近で見て、それらの要素をDAYNAZTYへ Nils Molinが逆に持ち込み、DAYNAZTYをよりメジャーな存在へ近づけんと画策したのは間違いないだろうし、それに加えて14年リリースの4thアルバム『Renatus』より加入した Jonathan Olssonがバンドに馴染んで作曲への貢献度が上がったか、発言力が増したかでキーボードサウンド増加へ繋がった(クレジットを見る限り、Jonathan Olsson主導の作曲ではないけど…)一因、という事もあるのかも?

ともかく昔から北欧HMはキラキラしたキーボードをフィーチャーしたサウンドが大の得意なバンドが多かったわけだし、DAYNAZTYの面々も恐らくそうした身近なサウンドを耳にして育ちミュージシャンになった訳だろうから、本作のようにキーボードがフィーチャーされた北欧HM的テイストが多々感じられるサウンドへ接近してもなんら不思議もなく、元々華やかなLAメタル的なサウンドをバンドサウンドの基軸にしていた彼等のサウンドにマッチするのも当然と言えば当然なのだろう。

さらにAMARANTHEでの活動の影響なのか、今まであまり聴かれなかったミステリアスでファンタジックな感触の歌メロや楽曲メロディ、ゴス系なダークで分厚いコーラスを多用するなど新要素の数々が本作で垣間見え、思いの外に Nils Molinは色々なモノをDAYNAZTYへ持ち込んできたのだなぁ、という印象が楽曲の端々で感じられました。

本作に至っては、初期のSKID ROW的なアメリカンHM的感触は薄れ、元々ユーロ圏のバンドなので当然だが、よりウェットでメロディアスなサウンドへバンドサウンドが傾倒しているのがハッキリ分かる楽曲で本作は構成されていて、そうなると必然的に派手でトリッキーなリフやテクを見せつけていた Love Magnussonと Mikael Laverの奏でるアメリカン寄りなソリッドなギタープレイも、より北欧HM的でメロディアスなフィーリングに特化し、さらにデジタリーでモダンなキーボード・サウンドにもマッチした、流暢な早弾きや憂いを湛えた泣きのフレージングなんぞも顔をだす美旋律プレイとサウンドへ変化し、北欧HM大好物な自分的には嬉しい変化ではありますが、初期のカラっとしたサウンドとザクザクギターを刻んで弾けんばかりに突っ走る80年代風アメリカンHMテイストを好んでいたファンにはちょっとガッカリな方向への進化と言えるかもしれない。

現代的モダンサウンドの感触が強まっている本作のサウンドは、所謂マイナー臭が強く繊細で美旋律の質は高いけれどパワーとモダン性が著しく劣る日本で根強い人気を誇る80年代風北欧HM的な感触は薄く、先に述べたようによりポピュラリティの高い普遍的なロックサウンドに近づいていて、特にデジタリーなキーボードサウンドが好みでないメタルヘッドな諸兄には、キーボード主導による売れ線的なアプローチの所々が気に触るだろう事は簡単に予想でき、より幅広いリスナーをファンに獲得出来る代わりにダイハードなメタルファンからの支持を失う危険性の高いリスクある勝負作で挑んできた、短期間でかなりサウンドの幅を拡げ貪欲に多種多用な音楽性を恐れることなく取り込んで自らの血肉にし続ける北欧期待の新鋭である彼等が、次作で一体どういう方向へ発展するのか今から目が離せません。

なんだかんだで同時期にデビューした同じ新人バンド達とは一味違う、バッドボーイズ系でも80年代アメリカンHMリバイバラーでもない独自の道を模索し、唯一無二のサウンドを確立しつつあるような彼等の、この先の活動に期待大なのであります(*´ω` *)

しかし、最近は複数のバンドをフロントマンが掛け持ちするのが当たり前になったりしてて驚かされますねぇ…ヴォーカリストって言ったら、バンドの顔とも言える存在なのに、どちらもインディ・レーベル所属ながらメジャー・シーンで精力的に活動するバンドを掛け持ちとは…時代が変わったんですねぇ…(シミジミ

と言うか、同時期にAMARANTHEも新譜をリリースとか、DAYNAZTYの活動との兼ね合いはどうするつもりなんだろうか?(汗

体力的にもかなりタフな状況(AMARANTHEのヴォーカルは分担だから負担は軽い、と踏んだのかも?)になるでしょうし、Nils Molin脱退なんていう最悪の事態が起こらなければいいんですけど…




# by malilion | 2018-11-12 18:02 | 音楽 | Trackback

往年の名曲に迫る良曲満載な新譜を英国HR老舗バンドURIAH HEEPが新譜リリース!

c0072376_12492218.jpgURIAH HEEP 「Living The Dream」'18

LED ZEPPELIN、BLACK SABBATH、DEEP PURPLEと並び称される70年代英国クラシックロックのアイコンが、14年の『Outsider』以来4年ぶり通算25作目となる新譜をリリースしたのを、ちょい遅れてGET!

もはや説明不要なブリティッシュHRのパイオニア、リーダーにして唯一のオリジナルメンバー Mick Box(G:なんと71歳!)率いるURIAH HEEPは、来年19年には結成50周年を迎える、正にブリティッシュHRの生き字引と言っても過言ではない存在だ。

70年代に全盛期だった同期のバンド達が解散を迎えたり、活動を停滞させたり、当初の路線とは別方向へ進んで別バンド化してしまったりしている中、80年代初期に短期間だけ彼等も活動休止状態であったが、それ以降は絶えず世界中を巡って幅広い年齢層のファンの前で変わらぬ癖の強い独特なヘヴィサウンドを披露し続けている、未だ現役バリバリのHRバンドなのが実に素晴らしい('(゚∀゚∩

計らずも前作でリズム隊が若返る事になり、以前にも増してパワフルでソリッド、そしてフレッシュにリビルドされたHRサウンドを披露した訳だが、本作では THE WINERY DOGS、STONE SOUR、ANTHRAX、STEEL PANTHER、Paul Gilbert、そしてEUROPE等の話題のバンドを近年手がけている著名なカナダ人エンジニア Jay Rustonをミックス&プロデューサーに迎え、アルバムリリースに先駆け公開されたリーダートラック"Grazed By Heaven"は、前作から新加入したベーシスト Dave Rimmerと TALISMANやW.E.T.、そして Yngwie J,Malmsteen等の仕事でメロハー・ファンにお馴染みな Jeff Scott Sotoとのコラボレーションによる新曲(Dave Rimmerの曲、これ1曲なのが悲しい…)で、それらの情報だけでもアルバムの音を耳にする前からいつになく"攻め"な印象で期待させてくれたが、本作の素晴らしいサウンドを耳にした方ならばその期待は決して裏切られなかったと分かってもらえるだろう。

過去50年間、バンドは幾度となくメンバーを変えて新しい血を導入し、さまざまな流行の波と時代の変化を乗り越え、決して順風満帆と言えぬ活動歴の中で幾度となくサウンドのカラーや方向性を微修正しつつ強かに生き残って来た彼等の楽曲に、ワウ・ペダルを使った Mick Boxのメロディアスで粘っこい独特なギターと重厚なサウンドを刻みまくる Ken Hensleyのワイルドなハモンド・オルガン、そこへ絡む裏声の分厚いバッキング・コーラスという、70年代に確立した唯一無二のHEEPサウンドは未だにバッチリとトレードマークとして息づき、一聴しただけでURIAH HEEPと分かる典型的な特性として、昨今デビューした新人バンドのモダンでスピィーディーでテクニカルなHRサウンドを寄せ付けぬ孤高を保っているのが実に頼もしいのです(*´ω` *)

ブリティッシュHR黎明期に生み出された70年代クラシック・トラックが素晴らしければ素晴らしい程に懐メロ・バンドに成り下がるリスクが高まるのがベテランバンドの避けられぬ性ですが、往年の名曲と比べても遜色ないスリリングでキャッチーな新曲と、LIVEに継ぐLIVEで鍛え磨き上げられたタイトでソリッドな演奏能力と“今”を感じさせるベテラン英国バンドらしい気品あるモダン・サウンド、さらにリズム隊が若返って手に入れたパワフルさを十二分に活かした疾走感が前作以上に全曲に渡って漲っており、いつの間にやら歴代最長となり名実共にHEEPの"顔"と成った現ヴォーカリスト Bernie Shawの衰える事ない伸びやか且つパワフルな歌声もフレッシュ感あふれるサウンドの中で一層に輝きを増して実に素晴らしく、そんな懐メロ・バンド定説がHEEPに通用せぬのは前作を上回る傑作HRアルバムな本作を聴いた誰もが納得するに違い無い。

全編に渡って往年の名曲の雰囲気を持ったヴィンテージ感がありつつモダンなヘヴィ・サウンドとトレードマークの重厚なコーラスがフィーチャーされ、今まで以上に"HEEPらしいHEEPサウンド"なのに新しい感触を伴った極上の品質に仕上げれているのは、Mick Box曰く『HEEPに新鮮なアプローチをもたらした』と絶賛される Jay Rustonのプロデュース能力と手腕なのは間違いないだろう。

また、新人メンバーを迎えた事で『HEEPサウンドというものはこういう特徴だ』という客観的な視点を得て、そのインプットを受け入れた楽曲創作を経た事で、旧来のメンバーの意識から薄れがちな感覚をより強くHEEPサウンドへと向けさせた結果の、本作における往年の70年代を強く意識した、初期のプログレッシヴ・ロックのテイストも貪欲に取り入れていた頃の幻想的で、そしてフォーク・アコースティックな雰囲気もあるエレガントさも漂う、強烈で濃厚なブリティッシュ・ヘヴィサウンドではないだろうか?

HEEPファンなら当然迷わず即買い、70年代HRファンも勿論見逃せぬ一作であり、メロディアス・ロック好きな方も必ずチェックせねば後悔する注目作でありますので騙されたと思って宜しく御購入下さい。

なお、本作はCD(日本先行発売は紙ジャケ・ヴァージョンでボーナストラックは2曲追加)以外の発売形態で、CD+DVD・ヴァージョン、Deluxe Edition(ボーナストラック1曲追加のCD、DVD、LP)、Limited Box Set Edition(Deluxe Edition+オリジナルTシャツ)、スタンダード・ブラックワックス(アナログLP)盤、米国独占販売のブルー・ワックス盤、Frontiers EU Shop販売版のクリスタル・ワックス盤など数種リリースされる予定となっており、各種のフォーマットのみの音源が挿入されているのかは現時点で不明でありまして、正にコレクターズ泣かせな一品であります(つд`)


# by malilion | 2018-11-10 12:41 | 音楽 | Trackback

USポップメタルDANGER DANGERの Ted Poleyと北欧ハイブリッドHRバンドDEGREEDがドッキングして新バンドMODERN ART作をリリース!

c0072376_18085364.jpgMODERN ART featuring TED POLEY 「Same」'18

DANGER DANGERへ04年に出戻ったフロントマンの Ted Poleyが、北欧スウェーデン新世代ハイブリッドHRバンドDEGREEDと組んだ新プロジェクト・バンドによるデビュー作がリリースされたので即GET!

そもそもが Ted Poleyがソロアルバムを制作しようとした所が本作の出発点(アルバムジャケが全てを物語ってる)なので、本来ならDEGREEDのメンツはソロアルバム制作時のバックバンドという地味な裏方的扱いであるべきなのだが、DEGREEDの創作貢献に対する敬意とそのミュージシャンシップや演奏スキルに惚れ込んだ Ted Poleyが本作をバンド作として捉え、改めて対外的にアナウンスした結果の新バンドとしてのタイトルと言う事だ。

DANGER DANGER脱退の後、ソロ・キャリアやTRIXTERのギタリスト Steve BrownとのプロジェクトバンドTOKYO MOTOR FISTなどで精力的な活動を行っていた訳だが、そんな中でテクニカルでモダンなプレイが身上の新世代北欧HRバンドの有望株DEGREEDのハイセンスなプレイを気に入り、挙げ句にバンドにまでしてしまったのは、Ted PoleyがDANGER DANGER加入前はUSプログレHMバンドPROPHETでドラマー(有名な話だけど、今の若いリスナーは知らないかも…)だったのも大いに関係しているのだろう。

大抵、ヴォーカリストって奴はインストパートを延々と演奏するプログレ系のバンドサウンドや、そういった本来バンドの顔であり主役であるヴォーカリストの立場を蔑ろにしかねない音楽形態を当然と言えば当然ですけど好まぬ傾向にありますからね。

逆にプログレ系は、定番の変拍子だったりでドラマーのテクニカルなプレイが重要視されますし腕前の見せ所なので、そういった Ted Poleyのミュージシャンとしてのバックグラウンドも大いに関係して、優秀なバックミュージシャン達(そして、恐らく無名で制作コスト的にも割安な)の手によるソロ制作という Ted Poleyの望む環境と、17年に待望の4thをリリースし、プレイヤースキル的にもアルバムの出来的にも問題なく、あと1つ足りないのはメジャーな知名度だけ、というDEGREED側の要求を満たすWINーWINな関係が築かれたのだろう。

で、内容の方ですが、Ted Poleyのソロ作が出発点なので当然ですが、ヴォーカルがメインでクローズアップされたサウンド形態で、DEGREEDの派手なインタープレイやテクニカルなプレイは控え目で目立たない、彼等の持つモダンなセンスやそつないプレイスキル、またコンポーズ能力の方がクロースアップされた造りになっているアルバムと言えましょう。

キャッチーでフック満載な溌剌ポップサウンドが売りのDANGER DANGERフロントマン Ted Poleyのソロ作に求められる“売れ線要素”は当然満たしつつ、DANGER DANGERでは聞けぬモダンでAORにも通じるコンパクトに纏め上げられたハイソで洒落た楽曲の数々は基本的にアメリカンポップス路線なのですが、そこへDEGREEDからのインプットであろう北欧的なウェットなメロディや、楽曲の根底に流れる優美さ、終始艶やかで繊細さを感じるモダン・サウンドなど聞き所は満載で、もしアメリカ人ミュージシャンの有名所を集めて制作されていたならば、恐らくさらにキャッチーでもっと明るくカラっとした爽快感ばかり耳につくドライサウンドになっていただろうアルバムにユーロ圏独特のシットリした質感と北欧HR特有の清涼感を与え、Ted Poleyの関わった作品カタログの中でも大きく趣の異なる、その他のソロ作とも差別化されたサウンドのアルバムを残した点は大いに注目されるべきポイントと言えるのではないでしょうか?

DANGER DANGERのフロントマン Ted Poley、という点に惹かれて本作を購入したファンにとっては、イマイチUSメタル的な溌剌さやドポップな感触が足りない大人びたサウンドと捉えられ不満に思われてしまうかもしれませんが、さすがに彼もデビュー当時のバブリーなご時世の若者って訳でも歳でももうありませんので、こういった落ち着いてリラックスした音楽を演る歳に相応しいミュージシャンに成ったんだと納得して戴く他ありませんね…

私のような Ted Poleyのソロ作というだけなら決して本作は購入検討にならなかっただろうDEGREEDファンにとっては、DEGREEDの新たな魅力やスキルを確認出来る、彼等のこれまでリリースしてきたオリジナルアルバムとは一味違った大人向けなサウンドの、高品質なハードポップ&AOR作と捉え楽しめる一作と言えましょう。

幾分、整合感やAOR的な完成度に重きを置いたからなのか Ted PoleyがDANGER DANGER等やこれまでとは違った魅力を見せようと意識したからなのか、楽曲のセンスの良さやエレガンドな上品さ、そしてコンパクトさとは裏腹に、分かりやすいキャッチーさやUSAロック的なフックに欠けるきらいのあるサウンドに思え、DANGER DANGERのようなサウンドを求める向きには少々厳しいサウンドといった印象なのが本作への偽らざる感想ですね。

Ted Poleyには本体バンドのDANGER DANGERや Steve BrownとのTOKYO MOTOR FIST、そして自身のソロ活動もあるわけで、実際本作の完成までに3年を費やしたと言う事だし、続くMODERN ARTの新作が果たしてリリースされるのか甚だ疑問ではありますが、もし次作があるならばもっとDEGREEDに楽曲制作のイニシアチブを譲った純然たるバンド作としてのサウンドを聴かせて欲しいものであります。



# by malilion | 2018-11-08 18:03 | 音楽 | Trackback

活動半世紀! 遂に訪れた看板ヴォーカリスト交代後、初となるアルバムをNAZARETHがリリース!

c0072376_19363703.jpgNAZARETH 「Tatooed On My Brain」'18

前作『Rock‘N'Roll Telephone』から4年ぶりの新作であり、NAZARETHを唯一無二の存在たらしめているバンドの顔であり声であるオリジナル・シンガーで看板ヴォーカリストだった Dan McCaffertyから新ヴォーカリストへチェンジして初のアルバムをGETしたのでご紹介。

1968年結成から今年で活動50年(!)という長い長いキャリアを誇る70年代英国HRバンドの生き残りである彼等、既にオリジナルメンツはベーシスト Pete Agnewのみで、現在はドラマーも息子 Lee Agnewが務めており数年前からバンドは実質Agnew一家が仕切っていた状況だったが、遂に前作をもって看板ヴォーカリスト Dan McCaffertyが健康上の問題の為に正式に13年に脱退となり、新フロントマンに Linton Osbomeを迎え活動を継続させていた彼らだが、15年からフロントマンがチェンジするという早々に暗雲が立ち込めるような出来事があったものの、現在は Carl Sentanceが三代目ヴォーカリストとして迎えられ、その新体制4人組によって本作は制作されている。

音楽性は基本的にデビュー当時からAC/DC張りに殆ど変わりなく、ブギー中心のロックンロール・サウンドが身上の彼等だから、半世紀を超えた活動故に今さらさしたる変化(途中、産業ロックやAORへ色気見せたり、華やかでバブリーな80年代HMへ色気も見せたけど…)もないだろうと予想はしつつも、どうしたってフロントマンの交代というこれまでで最大のサウンド変革が訪れるであろう本作には、ファンならずとも興味がある音楽ファンは多いのではないだろうか?

かく言う私も、果たしてあのイブシ銀なNAZARETHのサウンドがどう変化したのか、はたまた変化しなかったのか、を楽しむ為に、先行公開されていた音源を一切耳にせず本作を購入した次第であります。

Dan McCafferty在籍時は、彼の決して耳障り良いとは言い難い独特なシャガレ声と音域の問題もあって、そうそう幅広い音楽性へバンドサウンドが変化する事が出来無かった故の不変のサウンドでもあっただけに、その看板と表裏一体で足枷ともなっていた“声”が変わる訳だから、もしかしたら今までしたくても出来無かった冒険を挑んでくるかも、とか想像してワクワクしてたんですよね(w

一聴して感じたのは、ああ、やっぱり音域が広いヴォーカルをチョイスしたんだな、と言う事。

当然、今まで楽曲の展開や幅が狭められていた弱点を、新フロントマンを得るチャンスで補おうと、 AC/DCも同様のフロントマン交代があったけれど、それとは正反対な Dan McCafferty系等のシャガレ声ではなく比較的ハイトーンを聴かせるヴォーカリストを選択した訳ね、と。

まぁ、Dan McCafferty系のヴォーカルを選んだらどうしたって比べられるし、それでなくてもどうせ比べられるんだから、だったらハナから別系等の歌声を持つフロントマンにしよう、という考えは理解出来ますし、建設的で前向きですよね。

で、内容の方ですが、定番のブリティッシュ・ブルーズHRをはじめ、シャッフル調ブギーだったり、活きのいいロックンロールだったり、枯れた味わいのあるブルーズ調バラードだったりと、おおよその予想通りなシンプルで渋いストレートなロックサウンドという方向性なものの、甲高いハイトーンを聴かせるヴォーカリストへの変化と、比較的甘めな声質の特徴を活かしてか、近年希に見る程にポップフィーリングが強く、総じてアルバム全体が明るく朗らかで若々しいイメージで染め上げられており、前作までのイブシ銀な枯れた味わいと、お爺ちゃんバンドならではの哀愁と翳りみたいなものが滲み出ていた渋い渋いサウンドがお好みであったファンは少々面食らうかもしれません。

まぁ、バンドメンツの平均年齢もググンと下がって、殆ど別バンド状態になった訳だし、さすがに70年代UKロッカーの生き残り Dan McCaffertyと同じ渋さを要求されても叶えられるはずもない、って事で、一気にサウンドを若返らせたんでしょうけどね。

それにポップな変化についても、一度80年代にバンドメンツを大幅に増やしてキーボードやコーラス等を補強し、産業ロックへ大幅に傾いたドポップでシャレオツなアルバムをリリースして初期音楽性を捨て去る暴挙に出た事もある彼等なので、古参ファンほどダメージはそれ程ないかも…(汗

とは言え、ユニットが若返った見返りにバンド最大の武器を失い、他バンドとの差別化はアルバムの音だけからはしにくくなったのは確かで、こうなると現状NAZARETHなんだけどNAZARETHじゃない、というような微妙な気分にファンはならざるおえない訳で、こればっかりは時間しか解決してくれぬとは言え、やはり新フロントマンを迎えた今の編成で一刻も早くヒット曲なり新たなバンドの顔となる代表曲が出てこないと、懐メロを歌う良く似たカヴァーバンド状態なのを払拭出来無いだろうと思いますね、個人的には。やっぱり。

心機一転作であり、重要な勝負作である事はバンドも重々承知しているだろうに、無駄な気負いが一切感じられぬこれまで通りなリラックスしきった飄々とした作風が如何にもベテランの貫禄を感じさせ、彼等らしいと言えば彼等らしいのがファンには嬉しいんですけどね(w

今しばらくは Dan McCaffertyのガサついてベシャっとツブれたあの独特の声がチラつくでしょうが、総じてポテンシャルも高くしっかりキャッチーに纏めつつコンパクトな仕上がりの、これまでのオリジナリティであるイブシ銀なNAZARETH流ブルーズHRサウンドもしっかり感じさせるこの新機軸サウンドで、どこまでも邁進して欲しいですね。



# by malilion | 2018-11-07 19:30 | 音楽 | Trackback

80年代風USAプログハード・サウンドが絶品だったEVERSHIPが、メンツも新たに新譜をリリース!!

c0072376_15274731.jpgEVERSHIP 「Evership II」'18

ヴァイオリン入りUSA産デュオ・プロジェクトバンドが5人組ツインギター体制になって、2年ぶりに2ndをリリースしたのを即GET!

デビュー作はヴァイオリンが導入された如何にも80年代風USAプログハードなサウンドが絶品だったデュオ・プロジェクトだったが、本作では作曲家、マルチミュージシャンでありプロデューサー&エンジニアでもある Shane Atkinsonの操るシンセ、オルガン、メロトロン系等のヴィンテージ感ある多彩なキーボードサウンドを前作同様に主軸にしつつ、ツインギターでサウンドにハードエッジを生み、時にアコギ、スライド、クラッシックギターと、繊細で艶やか、土埃舞う乾いた感触といった演出を様々に加え、TRIUMPHの Rik Emmettっぽい透明感ある歌声で抜群の歌唱力なヴォーカリスト Beau Westがキャッチーな歌メロを歌い上げる、という隙無いバンドサウンドへ進化している。

前作にも参加していたギタリストの James Atkinson(Shane Atkinsonの弟)を除き他のメンバーを一新し、新たに John Roseなるギタリストをもう一人追加した新体制になって初のアルバムだが、前作同様にドラマーはおらずリーダーの Shane Atkinsonがドラムスを担当(セッションドラマーも制作には参加)しての制作となっており、恐らくLIVE時のみ助っ人ドラマーを呼んで活動を行うスタンスなのだろう。

また、ツインギター体制になった為か、前作で美しく艶やかな音色を聴かせアルバムの魅力を増す貢献をしていたヴァイオリン奏者 Nicelle Priebeの名がアルバムに無いのが個人的に非常に残念ではあるが、本作では各曲のバックにナッシュビル交響楽団の団員らによるオーケストラ・ストリングスパートが前作以上にタップリとフィーチャーされ、重厚で艶やか、幻想的で壮大、そして哀愁漂うスペイシーでメロディアスなシンフォニック・サウンドの様々な場面をドラマチックにこれでもか、と前作以上に盛り上げているので、デビュー作の艶やかなサウンドが気に入っていた方の期待を決して裏切る事ない渾身の力作なので安心して欲しい。

前作同様に、YES、GENESIS、QUEEN、KANSAS、Jimmy Hotzの影響を前面に押し出した、USA産バンドのサウンドと思えぬリリカルさとウェット感あるメロディに加え、壮大なスケールを演出する80年代初期USAプログレ風スペイシーな感触(堪らん!)と、ツインギターによるHRらしいハードエッジな感触、さらにUSA産バンドらしい爽快感とパワフルさが徹頭徹尾アルバムを貫いている点も見事の一言。

長らく音楽業界の裏方として仕事をこなし、遂に意を決して活動を始めた、本人曰く“心からプレイしたい音楽”と言うだけあって、KANSAS張りな繊細なメロディの絡みと美旋律、そして圧巻の展開を見せる凝ったアレンジの施されたドラマチックで叙情感ある楽曲の完成度に Shane Atkinsonの並々ならぬ情熱と、夢を追いかける男の純粋さと一途なロマンチックさを感じますねぇ~(*´ω` *)

勿論、狙っての事なのだろうが、Shane Atkinsonの操るヴィンテージ感満載なキーボードの音色といい、古典的なスペイシー・フレーズといい、ファンタジックな楽曲展開といい、プログレチックなのにしっかりポップでキャッチーという、どうにもノスタルジックな心をくすぐりまくる80年代USAプログレ・ハード愛好家には堪らんサウンドなんですよねぇ、ホント♪

この手のキーボーディスト主導なバンドにありがちなキーボードで音の壁を構築して壮大なスケール感を演出するのではなく、しっとりとしたアコースティックな感触や繊細にギターを爪弾く音色、そして各パートの紡ぐ音と音の隙間も活かされた、商業的なポップなキャッチーさと芸術的な美しさや独創性との折衷案と言える、所謂80年代中期風USAプログハードな柔和なオーケストレーション・サウンドが実に素晴らしく、時代が時代なら間違いなくメジャー級な扱いだったろうバンドサウンドなだけに、自主制作に甘んじている今の状況が不憫でならない…

意外にキーボードの鳴っていないパートも長尺で多く、楽曲によってはギターメインなパートばかり聞こえ、加えて Beau Westがキャッチーでフックある歌メロを歌い上げるパートなどはポップスそのもので、それが本作の重厚なサウンドにおける“押し引き”のメリハリを一層に強め、叙事詩に印象的な陰影を産みだす効果をもたらしているのは確実だろう。

いやー、それにしてもホントに Beau Westは抜群に歌が上手いですねぇ♪

少しも物マネやリバイバルというサウンドではないのだけれど、イメージはまんま、80年代中期USAインディ・プログバンドに Rik Emmettが飛び入りしてKANSAS風プログ・ハードを奏ってる風ですわぁ~(*´ω` *)

本作は方向性の変化故か前作よりコンパクトさという点では少々劣るものの、代わりに前作では聞けなかった28分越えとなる一大組曲が収録されるなど、荘厳なシンフォニックサウンド、壮大なサウンドの奥行きという点では断然上回っている一作で、USAプログハード作はユーロモノと比べて重厚さや艶やかさが足りない、騒々しくて軽薄なポップさやバカっぽさが気に入らない、というインテリジェンスなユーロ・シンフォ好きな方にも訴求する一作だと思う。

まぁ、と言ってもどう聞いてもユーロ・シンフォのような仄暗い情念のような後ろ向きな感情は感じられぬ本作に対して、USAプログ・ハードのパワー圧しな所や、ポップさや爽快感に傾いてる、秘めやかさや仄暗い美しさの漂う芸術性の香るサウンドが聞けない、等々のユーロ・シンフォ好きな方の不満な気持ちも分かりますけどね…

話は変わって、なんでも既にアルバム4枚分の楽曲ストックがあるそうで、もうこれは次なる新作が楽しみでしょうがないですね!('(゚∀゚∩

80年代アメリカン・プログレ好きは勿論のこと、メロトロン、シンセにオルガンが唸りを上げるシンフォニックにしてHR的なパワーも十分感じさせるプログレHMにも通じるサウンドは、その筋を好む方には間違いなくドストライクな一枚なのは確実ですので、何はともあれチェックしてみて下さい!



# by malilion | 2018-11-06 15:18 | 音楽 | Trackback