人気ブログランキング | 話題のタグを見る

不遇な90年代に80年代風メロハー・バンドVALENTINEを率いていた Hugo Valentiが新たなAOR&メロハー・バンドHUGO'S VOYAGEを結成しデヴュー!!

不遇な90年代に80年代風メロハー・バンドVALENTINEを率いていた Hugo Valentiが新たなAOR&メロハー・バンドHUGO\'S VOYAGEを結成しデヴュー!!_c0072376_16590531.jpg
HUGO'S VOYAGE 「Inception」'23

近年は再結成VALENTINE、ソロ活動、JOURNEYトリビュート・バンド等で活動し、そのJOURNEYの元シンガー Steve Perryを思わせる(ルックスも似てるw)クリアなハイトーンで多くのメロディック・ロック・ファンを魅了してきた米国人シンガー Hugo Valenti (ex:OPEN SKYZ)が中心になって立ち上げた、去年11月にデヴュー・アルバムがリリースされた新プロジェクト作を今頃に遅れてやっとこ入手出来たのでご紹介。

1991年にVALENTINEのデヴュー作リリース後、契約したメジャー・レーベルRCAの意向に従ってバンド名をOPEN SKYZへ改め、音楽性もコンテンポラリー・ミュージック路線へ変えてまでアルバムを制作し1993年にリリースしたのに碌なバックアップが無かった事から未だにメジャー・レーベルに対して不信感を持ち続けているのか、それともメロディアスな音楽のニーズが現在も米国メジャー・シーンに乏しいからなのか、本作はイタリアのナポリを拠点とするFrontiers Musicリリース作となっており、今の所国内盤リリースは見送られている為か輸入盤を取り扱うお店で話題の人気作となっている。

OPEN SKYZ解散後、英国メロハー・バンドTENのメンバーのバックアップを受けてソロアルバムを英国のNow And Then レーベルから2枚リリースした後、Hugo Valentiは母親の病の看護で思うような活動が出来ず、最愛の母を失った痛手からかシーンの時流が己の望む嗜好でなかった為か以降表舞台での活動から一歩退いてしまい、地元New York のミュージシャン達とJOURNEYのトリビュート・バンドEVOLUTIONを2002年頃に結成しNY界隈のクラブで気軽に演奏するに留まっていた訳だが、2004年に3枚目のソロアルバム『Fire In The Night』をEVOLUTIONのメンツを迎えて制作し、さらにVALENTINEをドラムスを除くオリジナル・メンバーで再結成すると2008年に2nd『Soul Salvation』をリリース、2021年にもシングルやVALENTINEの未発音源集をリリースと順調に活動中であった Hugo Valentiだが、オリジナル曲も演奏し始めたのを契機に2005年にEVOLUTIONの名をHUGO'S VOYAGEへ改め、JOURNEYトリビュート・バンドながらそのパフォーマンスのクオリティの高さから多くのファンを獲得し全米ツアーを行うなど積極的な活動を行って来た彼等が遂にオリジナル・アルバムを制作し本作をリリースするに至ったのでありました。

さて、そんな Hugo Valentiをバックアップするバンド・メンバーは、元ミュージシャンで現在はEXTREMEの敏腕マネージャーでもある Robby Hoffman (G)、Ted Nugent、Alice Cooper、RED DAWN、そしてRAINBOWでもプレイしてきた名手 Greg Smith (B)、EXTREMEの Gary Cherone率いるHURTSMILEのメンバーだった Dana Spellman (Ds)、80年代からFionaやANGELと仕事をし、Hugoの3枚目のソロアルバム『Fire In The Night』の制作にも参加するなどトリビュート・バンド名がEVOLUTION時代から活動を共にして来た一番の古株 Lance Millard (Key)というなかなかに興味深い顔触れとなっている。

で、トリビュート・バンドEVOLUTIONが前身である事や、フロントマンがルックスやヴォーカル・スタイルを含めて常に Steve Perryと比較される Hugo Valentiな事、それらの情報に合わせ彼がこれまでどんな作品を創作して来たかご存知なメロハー系ファンならば本作の内容を説明する必要も無い(笑)だろう『本当にJOURNEYが好きで好きで仕方がないんだなぁ…』と、しみじみ思えるくらいヒットチャートの常連であった頃の中期JOURNEY風な音色をそこかしこから顕著に感じ取れる、キャッチーでフックあるコンパクトな80年代USロック風のノスタルジックな楽曲の上をハイトーン・シーンガーの滑らかで伸びやかな美声が活き活きと鳴り響く作風であります。

一応、Hugo Valentiの為にフォローすると近年リリースされたVALENTINE未発音源集では Steve Perryから距離を置くヴォーカル・スタイルの歌唱を聴かせていたり、3rdソロ・アルバムなどでもJOURNEYでは聴く事が出来ぬ音楽要素のある楽曲等を提示と、彼がガチガチのJOURNEY& Steve Perryフォロワーと言う訳ではないのはこれまでリリースされて来た音源がお手元にある方なら理解し易いと思うのですが、如何せん本作は元々トリビュート・バンドが発展したバンド作である事や、レーベル・サイドからの要求か自身も売れると分かって狙ってかは判断つかないが恐らく意図的にJOURNEYを思わすオクトジェニックなノスタルジック・サウンドと Steve Perryかを彷彿させるヴォーカル・スタイルな歌声が確信犯的に収録されているように思え…そう考えないとちょっとあからさま過ぎて(汗

どこまでがオマージュでどこからがパクリなのか昔から意見の分かれる難しい問題ではありますが、少なくとも現行のJOURNEYがリリースしている音源よりも忠実に80年代JOURNEYサウンドをトレースしているし、さすがにAOR風味を増し小気味よく洗練されたモダンなメロディアス・サウンドに仕上がってはいますが Steve Perry在籍時のJOURNEYが好きだったオールド・ファン層に間違いなく訴求する一枚であると言えましょう。

ちょっとモロパク過ぎるキーボード・フレーズやリズム・パート、そして歌メロやコーラス等色々あってジェネリックJOURNEYとか薄味JOURNEYっていう批判に対してなかなかフォローし切れない感があるけどさ…(´~`)

モダンな鍵盤サウンドの音色やアーバンテイスト香るシャレオツなアレンジ、所々で耳を惹くベースライン等にオリジナリティが感じられるし、何もかもJOURNEY一色って訳じゃないんですけど、どうにもあの独特のトーンとテクニカルな速弾きも交えた Neal Schonのギター・サウンドを耳が探してしまうのが… Robby Hoffmanが頑張ってソレっぽいギター・プレイをしてはいるのですがやはり遠く及ばず…まぁ、洗練されたお洒落でバランス重視な本作のサウンドに Neal Schonの自己主張強いギター・サウンドはそもそもマッチしないでしょうけども…

そういう内容な為、間違いなくオリジナリティやアイデンティティに大きな問題を抱えていますし、当然の様に本作リリースと同時に一部のコアなJOURNEYファンからは“人の褌で相撲を取ってる!”とか〝売れる為に往年のJOURNEYを利用している!”と揶揄され厳しい批判を浴びているのも致し方ない方向性と作風なアルバムなのは間違いだろう。

その辺りの問題もあって今の所は国内盤リリースが見送られているのかもしれませんが、80年代の Yngwie MalmsteenやHELLOWEENが飛ぶ鳥を落とす勢いだった時にモロ・パクなサウンドなアーティストや低レベルなC級フォロワー・バンドの作品でさえホイホイと国内盤リリースされて来た顛末を知っていると『売れるんならそんな御大層な見栄も外聞も関係無くリリースするのがレコード会社だよなぁ』とも思うので、実際の所は何が理由かは分かりませんけどね(汗

とまれ、もう本家本元のJOURNEYは80年代サウンドと決別している訳だし、Steve Perryの歌声も流石に経年で往年の艶や伸びやかさが失われているので、当時の驚異的な音域、魅惑的なトーン、比類なきディープなエモーショナルさとどこまでも伸びるハイト-ン・ヴォーカルをエミュレートする Hugo Valentiの瑞々しい歌声を楽しめ、往年のJOURNEYを彷彿とさせるノスタルジックな美旋律の数々を疑似的に味わえる上に、今風のモダンな感触もしっかり加味されているメロディアスなロック・アルバムな一枚なのは間違いありませんので、オマージュ作にも寛容なJOURNEYファンな方やAOR寄りの心地よいUSメロディアス・ロックをお好みな方なんかにもお薦めなアルバムであります。

Track listing:
01. Inception (instrumental)
02. Crazy What Love Can Do
03. Don't Wanna Live Without Your Love
04. Sound Of A Broken Heart
05. Goin' Away
06. A Friend Like You
07. How Many Times
08. I'll Be Around
09. In My Heart
10. September Love
11. The Voyage
12. When Heaven Makes An Angel

HUGO'S VOYAGE Line-up:
Hugo Valenti   (Vocals)
Robby Hoffman  (Guitars)
Lance Millard   (Keyboards)
Greg Smith    (Bass)
Dana Spellman  (Drums)

Additional Musicians:
Steve Ferlazzo    (Keyboards)
Ray Herrmann   (Saxophone)


# by malilion | 2024-01-25 17:02 | Trackback

ベルギー人マルチ・ミュージシャン Kurt Vereecke率いる多国籍AOR&メロハー・プロジェクトが11年ぶりに3rdアルバムをリリース!

ベルギー人マルチ・ミュージシャン Kurt Vereecke率いる多国籍AOR&メロハー・プロジェクトが11年ぶりに3rdアルバムをリリース!_c0072376_07114455.jpg
FROZEN RAIN 「One Mile From Heartsville」'23

ベルギー出身のソングライターでマルチ・ミュージシャン&ンポーザー Kurt Vereeckeが率いる多国籍ユーロピアン・AOR&メロハー・プロジェクトFROZEN RAINが復活し前2ndアルバム『Ahead Of Time』'12 以来11年振りとなる待望の3rdアルバムをリリースしたのをちょい遅れてGET!

2ndまで在籍していたドイツのAvenue Of Allies Musicからデンマークのメロハー専科レーベル Lions Pride Musicへレーベル移籍しての初アルバムでもあり久しぶりの新譜なのでそれまでの流れを簡単に。

中心人物の Kurt Vereeckeは学生時代に友人にJOURNEYの『Escape』を聴かされたのを契機にメロディアス・ロックに魅了され、最初のバンドNO PROBLEMSでシンガー兼ギタリストとして活動を開始し、クラブ・バンドの常としてカヴァーに加えオリジナル・ソングも演奏し始めるのに時間はそう掛からなかった。

時が経ち1990年代初期に自身のバンドRHYANA(ライアナ)を率いていた頃、6曲のデモ曲をレコーディング(2ndアルバムの日本盤ボーナス・トラックとして収録済。デモ音源の一部は1stで正式に録音され収録されている)したが、結局大きな成功は望めずバンドは解散。

音楽教師でもあった Kurt Vereeckeは、1996年から2001年にかけて子供向けの童謡を収録した2枚組CDを3枚リリースし、教師向けのマニュアルも3冊執筆するがメロディアス・ロックに対する情熱は少しも衰えておらず、一連の童謡作業が終ると即AORレコードの制作に乗り出す事に。

Kurt Vereeckeはアルバムを何枚も作れるとは思ってもいなかったし、希望もしていなかった為、出来る限り多くの友人を招き、自身のアイドルであるミュージシャン達もゲストに招いたアルバムの制作を画策する。

Tommy Denander (G:RADIOACTIVE、PRISONER、RAINMAKER、IMPERA、etc...)や Steve Newman (G:NEWMAN、ACACIA AVENUE、COMPASS、etc...)、Daniel Flores (Ds:MIN'S EYE、THE MURDER OF MY SWEET、etc...)、Ollie Oldenburg (Vo:ex:ZINATRA)、Willem Verwoert (Vo:SILENT EDGE)、Jim Santos (G:NORWAY)といったメロハー系ミュージシャン22名とのコラボレーションが活かされたAOR&メロハー・プロジェクト作であるFROZEN RAINのデヴュー作が5年以上の制作期間を経て2008年に遂にリリース。

豪華なゲスト陣が反響を呼び、HEARTLANDやANGEL、そしてSKAGARACKに通じる華やかなキーボード・サウンドがフィーチャーされた、北欧メロハーも思わす透明感あるキャッチーで80年代風味ある洗練されたAOR寄りユーロ・メロディアス・サウンドが世界中で好評を博した事から、TOTO、JOURNEY、SURVIVOR等の80年代USメロディアス・バンド等に強く影響を受けたベルギー人ミュージシャン Kurt Vereeckeの一枚限りのアルバムをリリースする為のソロ・プロジェクトであったFROZEN RAINは本格的なベルジャン・AOR&メロハー・バンドとして始動。

デヴュー作リリースに先駆けて2007年にバンドの中核を成す事になるベルギー人ギタリストの Rik Priemと出会い、バンドに彼を迎えると直ぐ新曲を書き始める。

その間、この後に長きに渡って Kurt Vereeckeと創作活動の相棒となる1stアルバムで2曲にゲスト参加していたベルギー人キーボーディスト Jurgen Vitrierもバンドの一員に。

Avenue Of Allies Musicのレーベル・メイトであるSHINING LINEのイタリア人ドラマー Pierpaolo“Zorroll”Monti の紹介で、90年代末期から数多のバンドに参加し、その歌声をHM/HRシーンで轟かせているドイツ人HRシンガー Carsten“Lizard”Schultz (ex:DOMAIN、EVIDENCE ONE、EVIDENCE ONE、etc...)を2009年に新たなヴォーカルに迎え、前作ゲスト参加のベルギー人ベーシスト Vincent De Laat (後にベルジャンHMバンドSCAVENGERへ)を正式メンバ-に加え、ドラムスに実弟の Hans Vereeckeを据えると、2012年に2ndアルバム『Ahead Of Time 』がリリースされる。

この2ndは国内盤が6曲ものボーナストラックを追加されリリースされた事もあって彼等のメロハー・サウンドを耳にした方も多いと思われるが、80年代ハードポップを思わせるキラキラしたキーボード・サウンドと清涼感溢れる美旋律が止めどなく紡がれるAOR&産業ロック寄りのUS風味も感じる軽めで灰汁の少ない爽快なユーロ・メロディアス・サウンドが特徴だったデヴュー作から、打って変わってヘヴィで攻撃的なギターがフィーチャーされたハード寄りの所謂10年代メロハー・サウンド作となっていた。

古い創作曲の録音を念頭としたAOR&ハードポップ・プロジェクトからしっかりとメンツを固め現在活動するバンド作として2ndアルバムが制作されたのが良く分かり、なかでもリーダーの Kurt Vereeckeと共に楽曲創作の中核を成すギタリスト Rik Priemの存在感は絶大で、心に残るフックある弾むリフに随所で耳を惹くハモリを駆使したメロディアスなフレーズ、ピリリと楽曲を引き締めるハードでスリリングなチョーキングやここ一番で爽快に駆け抜けるテクニカルで華やかなソロ等、前作に欠けていたハードエッヂなメロハー要素を完全に一人で構築してさえいる大活躍であった。

ただ、キャッチーでコンパクトな楽曲の完成度や哀愁香るメロディアスさ、洗練されたアレンジ具合共にデヴュー作を大きく上回っていたのだが、デヴュー作で招かれていたヴォーカリスト達の多くが甘い声質のハイトーン系な典型的北欧ポップシンガー風の爽快な歌声に対して、Carsten“Lizard”Schultzは正反対のハスキーな濁り声でパワフルに熱唱する典型的HRシンガー・スタイルだった事もあってデヴュー作が気に入っていたリスナーの多くに少なからず失望をもたらしセールス的にも成功と言い難い結果になってしまう。

シンガーの歌唱がファンが求める方向性と些か違った事や、数多くのバンドやプロジェクトを掛け持ちしている Carsten“Lizard”Schultz がフロントマンだった事、そしてギタリスト Rik Priemとリーダー Kurt Vereeckeが揃って健康を害し、バンド活動は停滞、いつしか音信不通に…

Rik Priemの健康状態は深刻で、いくつかの手術を受けなければならず、更に自身のバンド Rik Priem's PRIMEのアルバム制作を優先してバンドを脱退...orz

Kurt Vereeckeの健康状態は現在も思わしくなく創作活動の大きな障害となっており、更にフルタイムのミュージシャンでない事もあって昼の仕事に時間が取られ、その上ベルギーではAOR&メロハー系に適した優れたミュージシャンを見付けるのが殆ど不可能な為にメンバー探しは困難を極め、新作の制作は遅々として進まぬ間に年月が経過していたらしい…

無論、その間になんの創作活動もしていなかった訳ではなく、ノルウェーのメロハー・バンドFAITH CIRCUSのシンガー Marc Farranoの依頼でFAITH CIRCUSの新譜(現在まで未リリース)のキーボードパートのレコーディング作業に約2年間手を貸したり、相棒の Jurgen VitrierはWAVE WALKERSなる一時期の VangelisやTANGERINE DREAMを彷彿とさせるシーケンシャルなデジタル・サウンドが特徴のアンビエント系エレクトロ・ミュージック・ベルジャンデュオ・ユニットで2021年にデヴュー・アルバム『Kronos 21』をリリースするなどバンド外活動は盛んなのに加え、現在のメンバーは三ヵ国に在住なので主にインターネットを通じて創作活動(メンバー・フォトさえ一堂に会して居ない)が行われ、各自が自宅スタジオで作業する為に制作期間が長引いたのとアルバムのミキシングも自ら手掛けた為、更に時間とエネルギーを消費してしまったと Kurt Vereeckeは語っている。

さて、待望の新作ですが Kurt Vereecke、Jurgen Vitrier、そして実弟 Hans Vereeckeは前作に引き続き参加しているのに加え、新たに2名のミュージシャンがベルギー国外から正式メンバーとして迎え入れられた新体勢で本作は制作されている。

新たにフロントマンに迎えられたのは、90年代中期から主にソングライティングやバッキング・ヴォーカルで数多くのソロ・シンガーやバンドのアルバム制作に協力していた、どちらかと言えば裏方ミュージシャンだがキャリアも能力も十分のベテランで、あのHAREM SCAREMのシンガー Harry Hessを中心としたメロハー・プロジェクトFIRST SIGNALにもソングライティングで参加しているスウェーデン人シンガー Lars Edvallと、EXTREME、Gary Moorem、Steve Lukather等の楽曲をカヴァーしたギター・プイレ動画をYou Tubeをはじめ様々な媒体のネット上にアップしている事から彼がどんな音楽に影響されギターの腕前を磨いて来たかが分る、無名の若きドイツ人ギタリスト Jens Ambroschの2名のみがFROZEN RAINの新メンバーで、残念ながら専任ベーシストは今回参加しておらず、Kurt Vereeckeと Jurgen Vitrier、そしてゲスト奏者も交えてベース・パートを補っているツイン・キーボード5人組編成バンドとなっての第一弾作だ。

惜しむらくは制作期間が長期に渡った為か新メンバー2人が加入する前に本作収録の楽曲は Kurt Vereeckeと Jurgen Vitrierの手によって殆どレコーディングは終えられており、新メンバーがバンドに持ち込んだ新要素がほぼ無い状態(僅かに一曲『One Of These Mornings』だけシンガー Lars Edvallの自作曲が収録)なのと、当初はスペインの期待の新星メロハー・バンドHACKERSのギタリスト Fran Alonsoにバンド加入を打診するもHACKERS活動を優先する為に断られ、最後の最後にネットで見つけた無名のギタリスト Jens Ambroschがほぼ完成していた楽曲に付け足す形でプレイするのみで、他はデヴュー作と同様に友人ギタリスト達をゲストに多数迎えてほぼギター・パートは録音された形になっており、ギタリスト主導で楽曲の数多くが創作されたハードエッヂなサウンドが心地よかった2ndと違って今回はキーボーディストの2人がメインとなっての体勢でアルバムが完成したのが前作との明確な違いなのは間違いない。

因みにそのHACKERSのギタリスト Fran Alonsoは本作で客演しており、3曲で彼の素晴らしいギター・プレイを楽しむ事が出来る他、Roger Ljunggren (T'BELL、NIVA、etc...)とカナダのベテランHRバンド APRIL WINEのドラマー Roy Nicholとスウェーデンのフォーク・ロックバンド FROKEN UNDERBARでドラムを務める Daniel Trobellも客演参加し、アルバムの多面的なサウンドをさらに引き立てている。

と、公私共に諸々のゴタゴタが山積し決して万全の制作体勢で望めた訳でない新作の内容についてだが、FROZEN RAINファンならずともメロハー好きな方ならば彼等の新譜で一番の注目点はニュー・シンガーがどういった質の歌声なのかという事だと思うが、ご安心下さい、新フロントマン Lars Edvallはスウェーデン人と言う事である程度予想は付いた方もいらっしゃるだろうが皆さんが望んでいた通り(笑)デヴュー作の流れを汲む所謂ハイトーン系の定番北欧シンガーな歌声で、80年代から活動を開始し、MADISONや Yngwie Malmsteen、GLORY、KARMAKANIC等々とのHMからポップス、プログレまで幅広い作品で活躍し今や北欧シーンを代表するシンガー Goran EdmanやTOTOの Joseph Williamsを思わす甘く滑らかな声質と長い音楽活動を経たベテランらしくエモーショナルな歌唱力が素晴らしい、正にキャッチーなユーロ・AOR&メロハーを歌うのにピッタリな透明感ある伸びやかな歌声と言えましょう。

また専任ギタリスト不在のキーボーティスト主導で制作された楽曲にしてはしっかりと要所で印象的なギター・プレイも聴こえており、デヴュー作の音楽性により接近した、2ndで聴かせたヘヴィなタッチは幾分影を潜めたものの決して鍵盤サウンドばかりの軟弱なイメージは無く、オーセンティックなHR要素も残しつつ産業ロックやAOR要素が強めな、所謂80年代風のクラシックなUSロック・スタイルと現在の主流となっているユーロ・メロハー・サウンドの中間に位置する様なバランスのキャッチーでメロディアスなモダン・ロック路線と言え、目新しい革新性や唯一無二の強烈な個性は無いものの彼等の紡ぐ美旋律と音楽性には殊更必要な要素ではないし、ファンも最先端の音楽性や超個性的だけど灰汁が強くて好き嫌いが分かれる、という状況を彼等には求めていないだろうから特に問題じゃ無いよね?

時折透け見えるTOTOやJOURNEYの影響を受けたフレーズや音使いにニンマリしてしまうメロハー・ファンはきっと私だけでないだろう♪ (゚∀゚)

数多くのゲスト・ギタリストが迎え入れられ制作されている為、現時点では今一つ新ギタリスト Jens Ambroschのプレイやフレージングの個性が分かり難いが、各楽曲で奏でられているギターの音色からは不思議な郷愁とリリカルなセンチメンタルさが漂っており、そこはやはりバンドの中核を成すメンバーが北欧や英国に程近く北海にも接しているベルギー人ミュージシャンだからに違いなく、続く新作でも Jens Ambroschがギタリストであり続けるなら一体どのようなケミストリーが生まれ変化がもたらされるのか今から楽しみであります。

『私は強いメロディーと良く練られたアレンジが好きだ』とリーダーの Kurt Vereeckeが語るように本作の楽曲は、メロディ、リズム・アプローチ、ソロ・パート、ヴォーカル・メロディ、バッキング・コーラス、バンド・アンサンブル、スタイリッシュなアレンジ等どれを取っても実に丁寧に考え抜かれて創作されたのが分る、ちょっと聴きハードポップ作に思えるくらい軽めで爽快なキャッチー・サウンドだが、聴き込む程に随所にハードエッヂでメタリックなタッチと哀愁漂うユーロ圏特有のウェットで叙情的な旋律が顔を覗かせ、終始耳当たりの良いそのスムースなモダン・サウンドの奥底にシッカリとロック・スピッリッツを宿している事が分かり、病やメンバー探し、そして制作費等のアゲンストな状況にもめげず長きに渡り諦める事なくコツコツと魅力的な楽曲を創作し続けた Kurt Vereeckeの不屈の精神を感じさせる、AORファンだけでなくメロハー・ファンをも惹きつけるプロデュースが光る意欲作だ。

Kurt Vereeckeも Jurgen Vitrierも出しゃばるようなキーボード・プレイを聴かせる事もなく、終始楽曲第一を心がけて細心の注意を腹ってコンポーズされた美旋律の数々は素晴らしくアレンジ共々洗練され文句の付けようも無いのですが、個人的にはちょっとドラムの音がバタついている印象だし、総じて些かレンジが狭く音の広がりに欠けるきらいがあり、Lars Edvallのヴォーカルにもう少しパワフルさとキレが有れば文句無しだったなとか、専任ギタリストが居ない為に2nd作の楽曲の様にギター・サウンドがもたらすスリリングさやメタリックなハードエッヂさ具合を物足りなく感じてしまう等々気になる箇所が有るものの、メジャー・レーベルからリリースされていないバジェットの限られたインディ・アルバムと考えれば極上までいかずとも十分にメロハー・ファンの心を掴む楽曲が余す所無く詰まった力作なのは間違いないので、出来る事ならばこのままメンツを固定して次なる新作を一刻も早くに届けて欲しいものであります(*´ω`*)

Tracklist:
01.One Mile From Heartsville
03.Fire
04.She's The One
05.How Could I Know
06.Let Me Love You
07.One Of These Mornings
08.More Than A Friend
09.What's It Gonna Be
10.Ready For Tonight
11.That’s Why I'm Loving You
12.The Waiting's Ove
13.Tell Me No Lies *
14.Ready For Tonight (Alternate Intro Version) *

* = Bonus Track for Japan

FROZEN RAIN Line-Uup:
Lars Edvall    (Lead & Backing Vocals)
Jens Ambrosch  (Lead & Rhythm Guitars)
Jurgen Vitrier  (Keyboards、Bass、Acoustic Guitar、Backing Vocals)
Kurt Vereecke   (Keyboards、Bass、Clean Guitar、Drum Editing、Backing Vocals)
Hans Vereecke  (Drums)

Guest Musicians:
Roy Nichol    (Drums)
Daniel Trobell   (Drums)
Fran Alonso    (Guitars)
Roger Ljunggren (Guitars)
Morris Adriaens  (Guitars)
Mats Nermark   (Guitars)
Don Lecompte  (Bass)
Glenn Vandorpe  (Bass)
Josefine Wassler (Backing Vocals)
Joke Vereecke  (Backing Vocals)

Produced by FROZEN RAIN



# by malilion | 2024-01-11 07:14 | 音楽 | Trackback

MAGNUMのリーダーでギタリストの Tony Clarkinが死去...


70年代から一時の解散を挟み現在まで活動を続けて来た英国が誇るブリティッシュ・メロディアスHRバンドMAGNUMの創設メンバーにしてバンド・リーダーであるギタリストの Tony Clarkinが死去した。77歳だった。

短い闘病生活の末、2024年1月7日(日)に、娘達に囲まれる中、安らかに息を引き取った。

つい最近、新譜をリリースしたばかりだったのに…もうあの絶妙なトーンコントロールのギターもキャッチーでフックある彼の楽曲を聴く事も叶わない…

バンドの頭脳であり創作面の中心でリーダーでもあった彼を失ってしまった事から、恐らくMAGNUMは解散してしまうだろう…orz

RIP Tony Clarkin


# by malilion | 2024-01-10 17:19 | 音楽 | Trackback

優美なイタリアン・フォーキー・シンフォを聴かせる ANCIENT VEILが難解な一大コンセプト作をリリース!

優美なイタリアン・フォーキー・シンフォを聴かせる ANCIENT VEILが難解な一大コンセプト作をリリース!_c0072376_13125886.jpg
ANCIENT VEIL 「Puer Aeternus」'23

叙情派イタリアン・シンフォバンドERIS PLUVIAの Alessandro Cavatori[Serri]((Vocals、Guitars)と元ERIS PLUVIAの管楽器奏者 Edmondo Romano (HOSTSONATEN、FINISTERREでも活動)を中心に1984年に立ち上げられたプロジェクトが出発点で後に5人編成バンドへ発展した彼等の5年ぶりとなる待望の4thアルバムは、ギリシャ神話に登場する永遠の子供神イアッカスをモチーフに、フォーキー・シンフォ・プログレ・バンドによる叙情的で繊細なシンフォニック・サウンドに加え、数々のゲスト・ヴォーカル陣と二十名近くのオーケストラ楽器奏者及び合唱隊を中心とする客演者達と織りなすドラマチックな演劇性がミックスされ3年の歳月を費やし制作された一大コンセプト・アルバムとなったのを、ちょい遅れてご紹介。

本作タイトルはラテン語で『永遠の少年』を指し、ユング心理学でも用いられる年齢も性別もない不老不死の神『Puer Aeternus』を題材とした、彼(彼女?)の冒険を追いながら十名以上の登場人物を交えて語られるストーリーとなっている。

主人公、創造主、自然、ソウル、カントル、クロノ、マーキュリー、トート、など様々なキャラクターを、バンドのメンバーや人間性を象徴するコーラスである聖歌隊、そしてゲスト・ヴォーカリスト達が演ずるなど登場人物がやたら多いのと主人公である彼(彼女?)が三役に性別を変えて物語に登場し演奏に乗って演劇的な語りやヴォーカル・パートを代わる代わるに交えて楽曲が展開する、イタリアン・プログレ作に有りがちな男女ヴォーカル等を用いて歌い上げるオペラチックな作風とは一線を画す、通常のコンセプチュアルな枠組みを遥かに超え、ロック・オペラというジャンルの垣根さえ越えた一癖も二癖も有るアルバム構成な為に物語を追うのが非常に困難でコンセプトを理解するのが難解極まりない(マジ無理ィ…)が、バックに流れるサウンドはANCIENT VEILお得意のERIS PLUVIAが内包していた牧歌的イメージなサウンドのみを取り出して濃縮させた、滔々と紡がれるアコースティカルで素朴な音色には繊細でリリカルな上に民族音楽的テイストやイタリア然としたファンタジックさも加え、クラシカルな旋律が軽やかな管弦楽と見事に融合し優美な歌心も交えてシンフォニックにミステリアスに穏やかに紡がれる力作だ。

Edmondo Romanoの操る軽やかなリコーダーをはじめとした管楽器をフィーチャーしつつ、ピアノ、ギター、クラリネット、サクソフォン、ファゴット、フレンチ・ホルン、オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ等の幅広い楽器を交え、加えてOSSANNAの Lino Vairettiを始め、PRESENCEの Sophya Baccini嬢やFORMULA 3の Tony Cicco、DERILIUMの Martin Grice、MANGALA VALLIS、LABYRINTHの Roberto Tirantiなど、新旧イタリアン・ロックシーンを代表する豪華ミュージシャン達がゲスト・ヴォーカルとして参加し描き出す移り変わる拍子記号と融合した華やかで流れるようなメロディは美しいの一言で、小難しいコンセプトなんぞに頭を悩ます事なく数々のお馴染みの歌声とJAZZやシンフォの香りも漂わしながらダークな緊張感とフォーキーな爽快感を積み重ねつつ紡がれる美旋律を楽しむだけでも十分に満足出来る盛り沢山な一作なのは間違いない。

ウーン、ギリシャ神話の造形が深くないと本作は本当の意味で理解出来ないだろう設定だったり構成だったりするのがイタリアン・オペラでも四苦八苦なのに日本人にはハードルが些か高過ぎます…orz

これまでANCIENT VEILの作品はバンド・リーダーの Alessandro Cavatoriの爪弾くアコースティック・ギターとクラシック・ギターに加え Edmondo Romanoの木管楽器がフォーキーで牧歌的なテクスチャーを創造するアコースティックな楽器の音色の比重が大きかったが、本作では Fabio Serriの操る多彩な鍵盤楽器、特ニハモンド・オルガンとムーグ、そしてメロトロンは、殆どの楽曲で中心的存在として数多の場面でそのヴィンテージな薫りが立ち込める音色を響かせており、常にも増して70年代風なクラシック・プログレの雰囲気を与えている。

また、マッタリした朴訥なフォーキー・サウンドばかりでなく、幾分かロック的なドライヴ感のあるドラム・パートや素早いムーグ・ソロや畳みかけるパッセージなどが場面を盛り上げ、場面展開等を示す使われ方もされており、Alessandro CavatoriもアコギだけでなくCAMEL風のエモーショナルなエレキ・ギター・ソロを轟かせたりロック的なエッヂあるディストーション・ギターのリフを刻んで見たり、Fabio Serriと Edmondo Romanoがサックスとハモンド・オルガンでドラマチックなデュエットに興じるなど、これまでのどちらかと言えばアコースティカルで静的な美旋律を紡ぐ瞑想的なイメージが強かったANCIENT VEILの作品には少ない動的な旋律やリズムアプローチがある楽曲も数多く収録されており、これまで以上に楽曲に抑揚の有る幅が生まれ、刻一刻と変化するダイナミクスや明暗の混ざり合いが美しい多彩な音のパレットで描かれた本作の旋律により深みと奥行が増した様に思えます。

聖歌隊も加えヴォーカルは盛り沢山だし数多くの楽器が織り成す音色を楽しめる本作ですが、やはりヴォーカルパートが一曲中でさえコロコロ変わるのでイマイチ没入し切れない点や、そのドラマチックでオペラティックで情熱的なイタリア人ヴォーカルは、決して繊細で艶やかな美声ばかり(なんでメンバーも歌ったの…)とは言えず、楽曲の華やかさと、アコースティカルな音色が生み出す素朴さと叙情性が共存した繊細な印象のシンフォニック・ロックとそぐわぬ瞬間があるのが少々残念な点だと思うのだが、この辺りは各自の好みによるかもしれない…

本作は構成が複雑なコンセプト作なれど所謂一般的なプログレ系作に近しい感触があるフォーキー・シンフォ・サウンドなのでそれ系統のサウンドを好む方には受け入れ易いかもしれないが、個人的にはデヴュー作のような民族音楽や中世古楽の香るフォーキーで唯一無二のアコースティカル・サウンドの方が好きでした…

とまれ Alessandro Cavatori[Serri]が3年の歳月を費やし、心血を注いで編み上げた、ドラマチックな美旋律、インテリジェンス高い音楽性、そして情熱にあふれた旅物語を、ANCIENT VEILファンは無論の事、フォーキーなイタリアン・シンフォ好きな方やナチュラルな響きと優しく心地よいアコースティカルな瑞々しい音色に満ちた、優美なアンサンブルを至上としたメロディアスでハーモニックなサウンドの美しさが際立つ作品がお好きな方などに是非一度チェックしてみて欲しい入魂作だ。

Tracks Listing:
01. L'eterno Tempo [Time Eternal]
02. Il Distacco [The Detachment]
03. La Caduta sulla Terra [The Fall To Earth]
04. La Vision della Parte Mancante [The Vision Of The Missing Part]
05. Nella stanza l'intera Storia Umana [In The Room, The Entire Human Story]
06. Il Senso dell'Insensato [A Sense Of The Senseless]
07. La miseria del Mondo [The Misery Of The World]
08. La Comprensione del Tempo [The Comprehension Of Time]
09. Amore e Potere [Love And Power]
10. L'ascesa di Hermes Nel Dio Visibile [The Rise Of Hermes As The Visible God]
11. Il Terzo Millennio [The Third Millennium]
12. La Culla Troppo Stretta [The Too Narrow Cradle]
13. Il Secondo Tradimento [The Second Betrayal]
14. Io e Ombra [I And Shadow]
15. Puer Aeternus
16. La Reviviscenza [Resurgence]
17. La Saggezza Della Natura [The Wisdom Of Nature]
18. La Nuova Aurora [The New Aurora]

ANCIENT VEIL Line-up:
Alessandro Serri   (Vocals、Classical & Acoustic Guitars、12-string & Electric Guitars、Flute、Harmonica、Keyboard Programming)
Edmondo Romano  (Alto、Soprano、Tenor & Bass Recorders、Soprano & Sopranino Saxophones、Chalumeau、Clarinets、Low Whistle、Vocals)
Fabio Serri     (Piano、Hammond Organ、Moog、Vocals)
Massimo Palermo  (Bass)
Marco Fuliano    (Drums)

With:
Martin Grice     (Alto Saxophone)
Francesco Travi    (Bassoon)
Natalino Ricciardo  (French Horn)
Marco Gnecco    (Oboe)
Roberto Piga      (First Violin)
Fabio Biale       (Second Violin)
Ilaria Bruzzone    (Viola)
Kim Schiffo      (Cello)
Olmo Arnove Manzano(Percussion)

Character Vocals:
Simona Fasano    (Nature)
Alessandro Serri    (Puer - Hermes - Kore)
Lino Vairetti      (Creator)
Elisa Marangon    (Soul)
Tony Cicco      (Cantor)
Roberto Tiranti    (Chrono)
Fabio Serri      (Mercury)
Sophya Baccini    (Thoth)
Edmondo Romano  (Humanity in choir)
Alessandro Serri   (Humanity in choir)
Simona Fasano   (Humanity in choir)


# by malilion | 2024-01-02 13:23 | 音楽 | Trackback

フランス産モダン・メロディアス・プロジェクト・バンドHEART LINEが80年代名曲の限定カヴァーEPをリリース!

フランス産モダン・メロディアス・プロジェクト・バンドHEART LINEが80年代名曲の限定カヴァーEPをリリース!_c0072376_17313984.jpg
HEART LINE 「Original Seeds」'23

フランス人ギタリスト兼プロデューサーの Yvan Guillevic (YGAS、PYG、UNITED GUITARS、EMPTY SPACES)によって2020年に結成されたメロディアス・ロックプロジェクト・バンドが、80年代メロディアス・ハードの名曲の数々をカヴァーしたEPをドイツのメロハー・レーベル Pride & Joy Musicから500枚限定リリースしたので即GET!

2023年6月に2ndアルバム『Rock 'N' Roll Queen』をリリースし、パリを含むツアーを成功させたHEART LINEが、まさかこの短期間にカヴァーEPとは言え新音源を年末にリリースするとは完全に予想外でした。

アルバム・タイトルが示す通り、バンド創設者である Yvan Guillevicが欧米で80年代に活躍した魅力的なバンド達が奏でていたキャッチーで華やかな音楽の数々の影響を受けて育ったのは自他共に認める周知の事実で、そんな彼の音楽的バックボーンと己の作品のインスピレーションの源を赤裸々に告白した一作と言えるだろう。

気になる元曲アーティストは、TOBRUK、DAKOTA、AVIATOR、VIRGINIA WOLF、ALIENとイギリス、スウェーデン、アメリカなど様々な国からチョイスされており、一般的な音楽ファンにとって超メジャー級アーティストやバンドでは無く必ずしも有名ではないが、古くからのメロディアス愛好家にとっては十分知られている、下世話に売れ過ぎておらず又アンダーグラウンドな通好み過ぎてもいない程良いラインナップなのが Yvan Guillevicのセンスと品の良さを感じさせますね。

メロディアス愛好家にとっては知られたバンドの名曲ばかりをチョイスした訳なので極上のメロディアス・ハードな楽曲に問題があろうハズもなく、そうなると後はどういった料理の仕方がされているのかが注目点になる訳ですが、基本的に原曲に忠実なアレンジでまとめられており、Yvan Guillevicの弾くギターにハードなエッジとアドリブが幾らか追加されているのと Jorris Guilbaudの奏でるキーボードの音色にモダンさが感じられ洗練度が増した仕上がり具合といった所でしょうか?

オリジナル曲を歌うシンガー達の素晴らしいヴォーカル・スキルを思うと、正直 Emmanuel Creisの歌唱力や表現力が追いついていない今一歩及ばぬイメージはあるものの、バックのサウンドは総じて素晴らしく全ての楽曲がHEART LINEカラーに見事に染まっていて彼等のソフト寄りなAOR&メロハー・サウンドがお好みな方やオリジナルを知らぬ最近メロハー・サウンドに興味を持ち始めた方などには十分満足いくカヴァー・アルバムだと思えます。

簡単に収録曲の情報をば。

“Falling”は、1985年にリリースされた英国バンドTOBRUKの1stアルバム『Wild On The Run』収録曲で、印象的なキーボードとハードでワイルドなギターが唸りを上げるパワフルなトラック。

“Runaway”は、1984年の同名アルバムに収録されている米国バンドDAKOTAの名曲で、オリジナルのモダンさを交えた美旋律と表現方法、今耳にしても新鮮さを感じさせるアレンジ力の高さ、そして何よりも Jerry Hludzikのエモーショナルな抜群のヴォーカルが楽しめる素晴らしいトラック。

“Front Line”は、1986年にリリースされた米国バンドAVIATORの同名アルバム収録曲で、惜しくも一枚のみしかアルバムを残して居ないがAOR&メロディアス愛好家なら誰でも知っているバンドの魔法のようなトラック。

“Living On A Knife Edge”は、1986年にリリースされたLED ZEPPELINの亡きドラマー John Bonhamの息子でAIRRACEや自身のバンドBONHAMでも活動した Jason Bonhamや、HEARTLANDやSNAKECHARMERの Chris Ouseyらが在籍していた事で知られる英国バンドVIRGINIA WOLFの1stアルバム収録曲で、洒落たニューウェイヴ感覚とHR風味が絶妙に交差するトラック。

“Go Easy”は、スウェーデンの北欧メロハー元祖的バンドALIENが1988年にリリースした同名デヴュー・アルバム収録曲で、オリジナル・シンガーの Jim Jidhedをフィーチャーした北欧盤と元MADISONでALIEN、SNAKECHARMER、MIDNIGHT SUN、BEWARP、SILVER SERAPH、JADE、MAD INVASION等々、この後に数多くの北欧HRバンドを渡り歩く事になる実力派シンガー Pete SandbergをフィーチャーしたUSリミックス盤ヴァージョンのヴォーカルが違うデヴュー盤が有る事でメロハー・ファンには有名で、アルバム内でも最もキャッチーでアメリカン・テイストがあるトラック。

オリジナルへの敬意を示しつつも彼等なりの解釈と現代的なプロダクションにより幾分かパワフルでモダンな仕上がりとなっているのと、改めてオリジナル楽曲の魅力も再認識できる好作でありますので、既発の二枚のスタジオアルバムが気に入っている方や80年代のキャッチーで華やかなメロディアス・ハード・サウンドにご興味ある方なら一度チェックしても決して損はしないアルバムだと言えましょう。

ファンならば間違いなく見逃せぬマストな500枚限定アイテムですので、フィジカル盤をお求めの方はお早目にね!

Track List:
01. Falling (TOBRUK Cover)
02. Runaway (DAKOTA Cover)
03. Front Line (AVIATOR Cover)
04. Living On A Knife Edge (VIRGINIA WOLF Cover)
05. Go Easy (ALIEN Cover)

HEART LINE Line-up:
Yvan Guillevic     (Guitars :YGAS、PYG、UNITED GUITARS、EMPTY SPACES)
Emmanuel Shadyon Creis (Vocals :SHADYON、EQUINOX)
Jorris Guilbaud    (Keyboards :DEVOID、SHADYON)
Dominique Braud   (Bass :YGAS、EBH)
Walter Francais    (Drums :SHADYON)



# by malilion | 2023-12-28 17:31 | 音楽 | Trackback