MUSIC STATION 「Shaping」'03
ラック漁っててまた転がり出てきた懐かしのアルバムをご紹介。 ブルガリア産ツインG&Keyを擁する6人組メロディアス・プログレッシヴHMバンドによる'03年リリースのデビュー・アルバムにして唯一作だ。 ブルガリア共和国はバルカン半島に位置し、北にルーマニア、西にセルビア、マケドニア共和国、南にギリシャ、トルコと隣接し、東は黒海に面している文化の交差点とも言える国で、その首都ソフィアでバンドは02年に結成されている。 一聴して分かるのが、彼等は夢劇場のフォロワー・サウンドがバンドの出発点だと言うこと。 ただ、既に夢劇場の影響から大方は脱しており、剛柔様々な声色を使い分け艶やかで見事な歌唱を披露する Pavilin Manevのヴォーカルスタイルに James LaBrieの影響が窺えるものの、バックのサウンドは所謂定番の夢劇場フォロワーではなく、特にキーボーディスト Boris Zashevの古典的ユーロ・プログレやクラッシックの影響を窺わせる軽やかでテクニカルな鍵盤捌きや、リズム隊のエスニックな香り漂わす音色やプレイ、そして一風変わったリズムパターンやJAZZっぽいプレイは本家夢劇場で聞けぬテイストで十分にオリジナリティを感じさせ、メロハーとプログHMをMIXさせたような上品さとキャッチーさのある爽快なサウンドは独特で、これ一作でバンドが終わってしまったのが実に残念でならない。 逆にリーダーでギタリストの Ventzy Velev(G)と Jordan Donov(G)のテクニカルなプレイやヘヴイなフージングが幾分か類型的プログレHM的と言え、一番夢劇場的な要素を臭わせているように思う。 ただ、彼等がデビューしたのが03年と、夢劇場症候群バンド達が触発された92年作の『Images & Words』との時間的距離が幸運にも空いている事もあってか、本家もサウンドを変化させていた事もあるし、92年以降世界中で雨後のタケノコの如く出現した露骨な夢劇場フォロワー群と同じ亜流サウンドへは成りにくかったとも予想出来る。 ブルガリアのシングルレーベルUBPからのリリースだった事や、予算の都合上で約1週間でレコーディングを終了させ、約一ヶ月でミックスダウンとマスターリングを完了させたアルバムにも関わらず、インディ・レーベルもののプログHM作品としてはかなりの上物、隠れた名作と言えるだろう。 実際、当時ディストリビュートされた日本やアメリカのローカルラジオ番組等でかなり好意的にアルバムは迎えられ、勢いバンドはプロモーションLIVEを首都ソフィアで計画したものの、残念ながら Boris Zashev(Key)と Radoslav Haralampiev(Ds)がLIVE活動を拒否した為、バンドはアルバム1枚をリリースしたのみで空中分解してしまったらしい…(つд`) まぁ、バンドサウンドのイニシアチブを握り独特なカラーを創りだしていたその二人が居なくなっては、アルバムのサウンドの再現も難しかったでしょうから、活動継続を断念したのもむべなるかな、ですかね… 今となっては入手困難かもしれませんが、フランスのMuseaがディストリビューションに関わっていたので意外に輸入盤取り扱い店で未だにストックしていたり、中古盤で転がってる事もありますので、もしご興味あるなら一度チェックしてみて下さい。 そう言えば東京で営業中のブルガリア・レストランの音楽好きな日本人オーナーがバンドのデモを聞いてコンタクトを取り、本作の制作に尽力(プロデューサーのクレジットに注目!)したと言うのも、本作を一層に特色づけているトピックでもありますね。 以降、ブルガリアからのプログHMやプログレ系バンドのニュースは聞かないんですが、もしかしてまだ見ぬ未完の大器や、期待の新鋭インディ・バンドなんかがここ日本に全く知られる事なく精力的に活動しているのかもしれませんし、多文化が入り交じる地域的にプログレ系に有利なんじゃないかと思うので、またその日本人オーナーさんが有力バンドなんぞをガンガン紹介してくれると嬉しいなぁ(*´ω` *)
by malilion
| 2018-08-15 02:24
| 音楽
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