ST.ELMO'S FIRE 「Splitting Ions In The Ether」'98
いきなり冷え込んで季節感が狂ってしまう今日この頃、秋の長雨が鬱陶しい夜はダークでヘヴィなサウンドが馴染みます…('A`) 70年代末期に登場し、短期間活動して休止状態になり、再び近年断続的に活動し、現在は再び休止してしまっているツインギター&ツインキーボードの五人組USA産ヘヴィ・プログレッシヴ・ロックバンドの2ndLIVE作をご紹介。 本作は80年リリースの米国クリーブランドのアゴラでのLIVEを納めたデビュー作「Live At The Cleveland Agora」(オリジナルは800枚しかプレスされていない激レア盤!)に未発表分の30分の素材等の5曲を追加して再発したLIVEアルバムだ。 彼等は正式なスタジオ・アルバムは2001年リリースの「Artifacts Of Passion」のみしかリリースしておらず、79年バンド結成なのにも関わらずLIVE作やアーカイヴ作を併せてアルバムはたった4枚しかリリースしていない。 そもそもデビュー作が80年リリースの4曲入り自主製作LIVE盤「Live At The Cleveland Agora」な(いきなりLIVEとは、自身の演奏技術と即興プレイに余程自信があったんでしょうね)為、彼等のディスコグラフィの説明はややこしいんですわ… バンドはリーダーの Paul M.Kollar(B、6&12 string G、B pedals、Key、Tape Loops、Prepared tapes)と Erich Feldman(G synthesizer、Effects)の二人によって1979年に結成された。 しばらくメンバーが入れ替わり立ち替わりしたが18ヶ月後にメンツは固まり、Mark Helm(Ds、Guns、Sandwiches)、Elliot Weintraub(G、Effects、Vo)、Stephen John Stavnicky(Key、Percussion、Flute、Vo)の五人組バンドとなる。 満を持して1980年にデビューLIVE盤「Live at The Cleveland Agora」をリリースし、ツアーを続けるものの音楽業界の時流はコンパクトでキャッチーなサウンドを求めていた為に彼等に活動の場は多くはなく、敢えなくバンドは活動休止してしまう。 十七年の後、突如活動を再開した彼等は、2ndLIVE作である「Splitting Ions In The Ether」を1998年にリリースする。 活動期に入ったからなのか、Paul M.Kollarは99年に「SUBTLE MATTER」なるソロアルバムもリリースした。 このソロアルバムはST.ELMO'S FIREのLIVE中、79年~81年の間に即興でテープループで演奏されたサウンドが元になっているTANGERINE DREAM風サウンドなLIVE作だ。 その後の2001年、バンド初となるスタジオ・アルバム「Artifacts Of Passion」をリリースする。 2ndLIVE作は純然たる新録作ではなかったので「Artifacts Of Passion」は、なんと二十年ぶりのニュー・アルバムであった。 残念ながら初スタジオ作ではメンツに変動があり、Erich Feldman、Paul M.Kollar、Mark Helm、Elliot Weintraubの四名は残留しつつ新たに Miner Gleason(Violin)と Philip Wylie(Tabla、Djembe)の二名の新メンバーを迎えた六人編成で製作されている。 2004年には、「Antiquities」と題された未発表曲の珍しいデモと既発曲の未完成版を集めたコレクターズアイテムの限定盤レコードがリリースされ、以降音源のリリースは無い。 Paul M.Kollarは、02年に「Brain Forest Wood Of Thought」、03年に「P3 Just Made It Up」、04年に「P3 Live at the FlipSide」「Brain Forest The Thought Horizon Sessions」とコンスタンスにソロ音源を発表している。 2020年(!?)リリース予定のソロ作が既に告知されているので、もしかしたらソロ活動に併せてST.ELMO'S FIREも20年に活動再開するのかもしれない… 本作「Splitting Ions In The Ether」を聞けばすぐ分かるが、モロにKING CRIMSONの影響、特にギターは Robert Frippのプレイを、ドラムスは Bill Brufordのプレイの影響が顕著だ。 まぁ、元々 Robert Frippが行っていたテープループと同じ事をし出してハマり Paul M.KollarはST.ELMO'S FIREを結成した訳ですから、似てるのは当然か(汗 とまれ鼻息荒くLIVE盤でデビューした当初の彼等が目指していた方向性は、間違いなく70年代UKヘヴィ・プログレ・サウンドだったのでしょう。 特に「Larks Tongues In Aspic」と「Red」の影響が色濃く感じられ、甘味の無い鈍色で硬派なプログレ・サウンドを、ポップさも脳天気さも捨ててUSAバンドとは思えぬ真摯な姿勢で再構築を試み、ダークな雰囲気はそのままに浮遊感あるサイケ色を加えてより暴力的にヘヴィにした重厚かつ叙情性を漂わすサウンドは見事だと思います。 後はまんまCRIMSONにならなかったのは、GENESIS的なメロディアスな要素も幾分かあったのとヴォーカルパートが殆どなく、歌入り(野太いオッサン声が下手クソな歌で唸ってる…)曲はわずか二曲だけで、しかもヴォーカルは弱々しい歌声の為にバックのド迫力でパワフルな演奏に埋没してしまい殆ど印象に残らなかったのも、しっかりと歌メロも優れていたCRIMSONとは違った印象を与えるのに役だったのかもしれません。 ただ、続く2001年のスタジオ・アルバム「Artifacts Of Passion」ではサウンドが大きく変化し、新メンバーの奏でるヴァイオリンやタブラの音色のせいか妙に民族音楽的なテイストが色濃く感じられ、以前のような張り詰めた緊張感のようなものも失せ、メロディにも今まで感じられなかった軽やかさと甘味のようなものがあって、サウンドのアンビエントな浮遊感も相まって既に70年代KING CRIMSONの影響から大方は抜け出した、似たサウンドが見当たらないCRIMSON+民族音楽+サイケ×ポップという癖の強い独自色あるサウンドをバンドが築き上げているのが分かる。 まぁ、コレは意図してと言うより、アルバム毎のインターバルが長過ぎたのと彼等自身が特に変化しようと画策せずとも時代の方が勝手に激しく変化したせいで、70年代ヘヴィ・プログレの残り香を纏った古臭い、でも今の耳には新鮮に聞こえる70年代直系プログ・サウンドを確立出来たのじゃないかと思うのだけれど…(汗 シャープさやテクニカルさでは劣るけれど、同じくCRIMSONフォロワーの一派なサウンドなのでANGLAGARDやANEKDOTENがお好きな方やメロトロン大活躍なバンドがお好みの方なら、彼等のダークで暴力的な鈍色サウンドが御気に召すのじゃないでしょうか? お試しあれ。
by malilion
| 2017-10-20 01:48
| 音楽
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